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ラジオ大賞  作者: ふりまじん
投げ銭大将
88/111

トレンディドラマは突然に…3

次の日、私は奈津子の車の助手席にいた。

奈津子は、ラフなジーンズとYシャツでさっぱりとした印象で車を運転している。

が、カーステレオから流れる曲が昔のドラマの主題歌ばかりなので、なんとなく、良くないことが雄二郎と奈津子の間であったのを予感させた。


奈津子は、基本、車で聞くのはラジオか無音。

少なくとも、友人を助手席に乗せて、大きな音で曲をかけたりはしない。


「少し遠いけれど…あそこでランチでいいかな?」

奈津子は前に皆でランチをした少しコジャレた観光地のお店を口にする。

「いいわよ。」

私は、そっけなく答えながらも早く昨日の一件が聞きたくてそわそわしていた。

奈津子は流れる曲を口ずさみながら、軽快に車を運転する。

私は、車の窓を開けて夏の風を顔に浴びる。


懐かしい流行歌が耳をくすぐる。

都会と恋に恋した時代が胸を甘くついては飛びさってゆく。


ふと、目に入った奈津子の顔に胸が締め付けられた。


私が恋に浮かれる10代を奈津子は母親の闘病と共に過ごしたのだ。

流れるこの曲の思い出も楽しいものとは限らないのだ。


何を考えてるの?


と、聞けずに渋い忍び笑いを漏らしてしまう。

夏の透明な青空に、白く輝く積乱雲が眩しく感じた。


奈津子はそんな私の気持ちを知ってか知らずか、楽しそうに90年代の恋を歌う。

切なくて、優しい…で、今考えると、なんだかサイコパスな主人公の物語。


そして、ウインタースポーツと恋の歌に変わると、私は奈津子と一緒に歌いだした。


スキーとスノボ、ナンパされるならどっちの男が良いかとか、馬鹿な事を真剣に話し合った少女時代が胸に溢れて行く。


結局…私は、誰ともスキーに行くこともなく結婚してしまったけれど。


「なんか、へんなオッサンに声かけられたんだ、マジ、うざいよね。こっちは滑りにきただけだっちゅーのっ!!」


綾子の愚痴を思い出す。

綾子は平気で一人でも車を運転してスキーに行っていた。

まあ、信州に住んでいるのだから、スキー場は日帰り出来るところにちょこちょこあったけれど、綾子は行動的で、そして、よくナンパされていた。




「どうしたの?」

急に笑いだした私に驚いて奈津子が聞いてきた。

「別に…ちょっと、綾子のナンパの話を思い出していたの。」

私の答えに奈津子も笑った。

「あったね〜で、隼人がもんくを言いながらついて行くんだよね。」

奈津子は楽しそうに笑う。

綾子の旦那の隼人君は、私と綾子の共通の幼馴染みだ。

綾子と隼人くんが結ばれるまでも、結構、激しいドラマがあった。


「そうね、あの頃は、二人が早くくっつけば良いって思ってた。」

私は、友人たちのもどかしい恋物語に目を細めた。


そうこうしていると、森林が見えてきて、私たちは目的地についたのだった。

夏の人気スポットは、平日でも忙しく、繁盛していた。


奈津子は車を止めて、軽く伸びをした。


「さあ、うまい飯を食べに行こう!」

少年のような伸びやかな奈津子の声に、一瞬、私は少女時代に戻ったように「うん」と、可愛らしい返事をした。


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