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ラジオ大賞  作者: ふりまじん
投げ銭大将
84/111

俺はジロー

今日は本当に暑い。

私は、朝早く洗濯などを片付けて、さっさと奥の仏間にパソコンを持ち込みクーラーをかけた。


外は地獄の暑さだ。

日の当たらない仏間が、最近の夏の避難場所になっていた。

コロナで経済が停滞し多分、温暖化は少しは緩和されたのだろうか?


そんな事をボンヤリと考えながら、パソコンを開いた。

少しくらい、良いこと作りたいと思う。

500円でも稼げたら、雄二郎の出稼ぎのはなむけになるはずだ。


私は決意もあたらに、雄二郎について出だしを書いてみる。



2020年現在、ファンタジーで人気なのは『追放もの』

つまり、主人公が言われなくパーティと呼ばれる仲間に追い出されるところから始まる。


が、どう頑張ってもその設定は上手くない。

私の世代と言うより、昭和の作品は、仲間から外れるのは自分からが主流だ。

どんなに鈍感でも、雄二郎だって、皆に嫌われていたら追放される前に察してブチキレる。


そんな事もあったわね( ̄〜 ̄;)


私は、懐かしく昔を思い出していた。


雄二郎の『やめてやる』は、色んなバージョンがあるが、大概はフリマに遅刻するのが原因だったりする。

大概は、前の日に喫茶店でお茶をしながらフリマの予定をたてるのだけれど、あまり品物を持ってない雄二郎は、いつも他人事のようだった。

それでも、毎回参加していたのは、年を取って人寂しく感じていたのかもしれない。

それとも…奈津子に誘われるからなのか…。

奴はよく、奈津子にジュースを奢られて嬉しそうにしていたっけ。


時間にルーズで好き放題甘えていた雄二郎。

それを許していたのは奈津子だった。

が、あの時は、奈津子が急な仕事で参加できず、雄二郎に場所とりをたのんだのだ。


フリーマーケットの出品場所や参加費は、イベント先で違いがある。

311の前は、わりと無料でやらせてくれるところがあり、場所は早い者勝ちで決まった。

私と綾子は、子供がいたからあまり早くは参加できず、奈津子が率先して場所とりをしてくれていた。

私と綾子は、代わりにお弁当を作ってきて、それなりに平和に終わっていた。

子供は毎週、どこかのイベントに参加できたし、

旦那は休日を一人で楽しめたので、我が家ではフリマは公認のレジャーではあった。


が、(くだん)のフリマは雄二郎が場所とりをすると言うことで違っていた。

心配そうな奈津子に雄二郎は自慢げにこう慰めた。

「大丈夫だよ〜。あの公園に8時でしょ?目覚ましかけなくても起きられるから。」


雄二郎のどや顔を思い出す。なぜだろう?人は、絶対失敗してはいけない時に失敗する前は、こんな予言めいた台詞を残す。

今風に言うなら…破滅フラグ…と、でも言うのだろうか?


「目覚まし、かけてよね?」

奈津子が嫌な予感を隠そうともせずに雄二郎をガンみする。

「大丈夫、いつも、俺、5時には目が自然に覚めるんだ。朝型なのかな?」


そして、昭和の喜劇の見本のように、見事なくらい地雷を踏んで遅刻してきた。


昼頃に悠々とやって来た雄二郎は、そこに奈津子がいたのに少しぎょっとしながらも、いつも、彼が座る場所にどっかりと座り、私と綾子がドン引きしているのも気にせずに

「俺もお茶、もらっていいかな?」

と、聞いてきた。


呆れながらも私がお茶をいれると、奈津子が能面みたいな顔の奥に怒りを隠して雄二郎に挨拶をした。


「おはよう、雄二郎。今、何時かな?」

奈津子の低い声に怯えたのは私だった。

雄二郎は、悠々とお茶をのみ、不思議そうに奈津子にきいた。

「あれ?仕事じゃないの?なーんだ、じゃあ慌てて来なくてもよかったね。」

と、無邪気に笑う雄二郎の言葉に、一同が固まった。

「慌てるって、8時間にここに来る予定だったでしょ?いま、12時だよっ。」

奈津子の問いかけを雄二郎は面倒くさそうに受ける。

「え?でも、ちゃんといい場所とれたじゃん。俺、いらなかったでしょ?」


それは、私が早くきたから。

と、喉元まで出てきた言葉を私が、飲み込んだ代わりに奈津子が怒りを爆発させる。


「いらなかったって!スミレが心配して早く来てくれたからでしょ?

何、自分の無能さを武器にしてるのよっ。約束したんだから、早くきなさいよ。」

奈津子の怒りは、雄二郎には逆効果だった。

「仕事じゃないからいいじゃない。別に、遊びでしょ?こんなの。」

意固地になった雄二郎が高飛車にそんな台詞を吐き、奈津子を余計に怒らせた。

が、叫びあげたり、怒鳴ったりはしなかった。

子供たちが出店から戻り、奈津子も昼休みが終わって仕事に戻らなければいけなかったからだ。


奈津子が帰ってから、雄二郎は、少し反省していた。

小学生だった亜美ちゃんに『お約束はまもらなければいけないよ。』と、さとされ、奈津子のいない場所では、雄二郎はとても素直に謝り、これからは目覚まし時計をかける事を私達に誓った。




とりとめなく、昔の事を書き出して、過ぎた年月を実感した。

あの事件から、もう、10年以上たったことに、

小さかった亜美ちゃんが、清楚で可愛らしい娘に育っていたことが、ほろ苦く胸をしびれさせる。

雄二郎は、相変わらず遅刻はするし、目覚まし時計をかけてもダメだったり、相変わらずではあるが、黒々とした固い感じの髪は、時代にごま塩風味に変わって行き、顔にはシワが増えていた。


コロナ、終息したら、少し無理をしても、皆で旅行へ行こう。


私は、あてもなく文字を重ねた。

ここから、どうやってファンタジーにするかを悩みながら。


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