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ラジオ大賞  作者: ふりまじん
投げ銭大将
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生ビール

ユーラシア大陸…それは、ヨーロッパとアジアを掛け合わせて作られた造語。

だから、私も、火星に到着したバイキングと日本を合わせて、地名をバイポンにした。

たしかに、少し不思議なネーミングだけど笑うことは無いと思う。


「バイポン…なんか、特撮ものの悪役みたいな地名ね。」

奈津子はクスクスわらう。

「いいのよっ。子供はこんな風なのが好きなんだから。」

私はすねる。そんなに変な名前かしら?


「まあ…そうだね。スミレの異世界なんだし、好きにつければいいけれど、雄二郎、いつ登場するの?」

ギクリ…


私は、奈津子の言葉に絶句する。

そう、作り出した異世界に雄二郎が上手く馴染んでいない…どうするか、まだ考えてなかったのだ。

「すぐに…登場するわよ……、キャベツメンチを買って車で寝た辺りから。」

私は、上の空でぼやく。

「キャベツメンチ…そう言えば、雄二郎、昔、ずいぶんはまってたよね?」

奈津子は懐かしそうに言う。

「そうね、夕飯食べてから、割引が始まる8時を待って行くんでしょ?」

私は、少し前に嬉しそうにメンチを語る雄二郎を思い出す。

しっかり、夕飯を食べてから、スーパーで割引のメンチを買って食べていて、雄二郎は一時期、とても太っていたことがある。

まあ、今でも太ってはいるんだけど。

「第3のビール500mlを二缶とでしょ?凄いよね…。」

奈津子はそう言って、カラカラと軽快にわらう。

その笑い声に懐かしい昔を思い出した。

「そうよね…あの人、ビールなら底無しで行けてたものね。」

私は、夏に一度だけ飲み会をしたことを思い出した。

フリマの会ノーマジーンは、基本は私と奈津子と綾子の三人だけなのだが、たまに、フリマ会場で意気投合して仲間になったりする人がいる。

ので、一度だけ、そんなメンバーと飲み会をしたことがあるのだ。


数年前…当時は、居酒屋の飲み放題のコースが流行って、人数が集まるとお得だったのだ。

ビール好きの雄二郎は、新聞講読者の奈津子から、たまにチラシのクーポンを貰っていて、飲み放題のチラシを見るたびにぼやいていた。


「うん…大ジョッキが小さく見えてたよね?」

私は、久しぶりの生ビールを前にえびす顔をしていた雄二郎を思い出した。

奈津子も何かを思い出したのか、急に笑い出す。

「でも…あの人、凄かったわよね、乾杯してから、イリュージョンのようにジョッキが空になっていたでしょ?」

奈津子は手品の話をするように雄二郎を語る。

「そうね…あの人の席のエリアだけ、ビールのピッチャーが空になったもの。

あと、枝豆。」

私は、自分の前に置いてあった枝豆とピッチャーを雄二郎に渡したことを思い出した。


「枝豆。好きだったよね。『枝豆とビールは悪い組み合わせだから、本当はやめた方がいいんだ。』とか言いながら、口に吸い込んでいたね。」

奈津子は、故人について語るようにしんみりと話す。

暑さを感じて、部屋のクーラーが慌てたように冷風を送る。

懐かしい夏に胸に込み上げるものを感じる。

私の旦那は、私が外食をするのをあまり良くは思っていない。

まして、居酒屋なんて、絶対に反対する。

あの飲み会の参加も結構、文句を言われながら行ったのだけれど、今ではいい思い出だ。

子育てが終わってから、好きなだけ行けば良いと言われたけれど、

その時がきた現在、もう、集まる仲間がいなくなっていた。

フリマももう、参加は出来ない気がする。

雄二郎にしたって、もう、当時のような生ビールの飲み方は出来ないだろう。

少しだけ胸騒ぎがする。

あと、どれくらい雄二郎は、モーニングと味噌おでんと騒いでいられるのだろうか?


「そうね、小説で小銭を稼いで、皆で名古屋、行こうね。そうして、生ビールで乾杯しよう。」

私は、明るく言った。

でも、先は全く見えない。

コロナは、きっと、春までには落ち着くだろう。

それまでに、少し無理をしてでも旅行の準備を始めよう。小説でお金が稼げなくとも!

私は今から少しずつ積立てをしようと考えた。


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