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ラジオ大賞  作者: ふりまじん
投げ銭大将
82/111

バイポン

バイポン…

私は、自分の異世界の初めの地域をそう名付けた。

一年は686日。火星の公転周期にあわせた。

衛星(つき)は二つあるのも……


けれど、ルナ高原は、アイルランドの妖精物語をイメージして、可憐な紫のヒースが咲き乱れ、可愛らしい妖精が、夏至の祭りに集うのだ。


小豆とぎをモデルにした小人族が登場する、この世界にタコ型の火星人は登場しない。


「私の異世界は火星じゃないから、タコ型の宇宙人なんて登場()ないわよ。」

私は少しすねるように言う。それを笑って聞きながら、奈津子は昔話を始めた。

「まあまあ…でも、タコ型…登場()せばいいじゃん。

ついでに、和風の鯛の頭のハイヒールの生足セクシー系魚人とか……はははっ。」

「はははって…(-_-#)

何よ、生足セクシー魚人って。」

私はポーター絵画のような、可愛らしい絵本のような、自分の異世界に突如、異性人が襲来したのにムッとなる。

なりながら、『生足(なまあし)』なんて言葉を久しぶりに聞いて、なんだか気持ちが若返るのも自覚する。


「そんな気持ち悪い言い方しないのっ、『素足(すあし)』と言いなさい。」

母の文句に反抗して、逆によく使ったこの言葉も、気がつけば既に死語。

死語となったからこそ、10代のキラキラを含んだまま言葉が耳元で弾けながら胸を締め付ける。


冬の雪の中、タイツとおばさんの愚痴を撥ね付けながら、ルーズソックスにミニスカートで通学し続けた綾子も今ではスリムパンツがお気に入り。時代は確実に変わって行くのを感じる。


「あら、昔はそんなシュールなキャラが好きだったでしょ?あなたたち。

なんか、人魚について真面目に語っていたじゃない?

頭が人間だと水中で呼吸できないから、頭が魚が正解だとか…」

と、奈津子は忍び笑いを漏らす。


それを聞きながら、私は、図書館で見つけた衝撃写真集の事を思い出す。


アダムスキーのUFOも

頭が魚の人魚も


ネッシーも

1メートルの体長のバッタも


ああっ、もう、ミステリーサークルすら、みんな捏造写真だったのだ。


後にそれを知る頃には、子育てをしていて、10代の記憶と結び付いてなかったけれど、今、それが混じりあうと……なんだか、騙された事に腹が立ってくる。

でも……その後に流行った、リアルな写真風味のブサカワ系妖精写真集にはまった事を思い出して、苦笑する。


「確かに、私、ああいうの好きだわ。

でもっ、私のバイポンには、タコはいないんだから。」

私は思わず叫び、奈津子はその叫びに叫び返す。

「ばっ……バイポン?な、何、それ!?」

奈津子は中学時代を思い出させるような、高く、少し人を小バカにしたような爆笑をした。


バカにされるのは嫌だ。でも、奈津子にこんな風に笑われるのが心地よく感じる自分も同時に感じる。


久しぶりに、中学時代のモヤモヤを体が思い出してムズ痒くなる。


私はMで、奈津子に恋をしている…男なんて生涯愛せない。なんて真面目に悩んだ事は、夢でも妄想でもないことを思い出した。


「正確にはバイポン州。私の異世界の住人が住む、聖地。」

私は、奈津子の笑いに負けないように、アニメのナレーションのような、大袈裟な言い方で夢の世界を紹介した。


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