鬱展開
鬱展開…
それは、キャラクターが不幸になり、哀しい物語が続いて行く事を言う。
これは童話や昭和の漫画では良くあるパターンだ。
昔の少女漫画の主人公は、いきなり家が倒産したり、親を殺されたり、
捨てられたりするところから始まり、
そこから、這い上がり、素敵な王子さまと結婚したりする。
シンデレラストーリーと言われるものだ。
が、web小説ユーザーは、それを嫌う人が多いらしい。
少女ものを検索するだけで直ぐに理解できるはずだ。
web小説で人気なのは、健気なヒロインではなく、
気の良い主人公が悪役令嬢に転生した話が人気なのだ。
なにしろ、悪人に主人公が転生するわけだから、意地悪する人が居ないわけで、面白いかは別として、鬱展開になりにくい。
若いもんはストレスに弱いなぁ( ̄〜 ̄;)
なんて思っていたけど、どうも、これはweb小説独特のシステムによるものらしい。
つまり、書いているのが素人で、書きはじめてはみたものの、上手く話をまとめられなかったり、飽きたりして、話が放られて、
キャラクターと一緒に不幸のどん底から出られなくなった経験のある読者が怒り、
鬱展開なんて、二度と読むもんか(*`Д´)ノ!!!
と、なったらしい。
まあ、諸説あるのだろうけど、私には、一番説得力があった。
まあ、真偽なんてどうでも良い。
とにかく、私と勇者はピンチに陥っていた。
口べらしって(-"-;)
web小説と自分の相性の悪さに泣きたくなる。
が、苦節1年、500円すら稼げない悲しさに比べたら、どうってことはない。
そうっ。
私は、書籍化作家になりたいわけではないっ。
2万円稼ぐなんて、目標だって放ったし。
今、私は、ワンコイン。
500円の為に全力をかけるんだもの。
その500円を雄二郎の名古屋旅行のはなむけに渡せさえすれば…
コーヒー1杯でパンがついてくる…お得な名古屋のモーニングを食べられる、ワンコイン。
それを稼ぐためだけに頑張るんだわ。
私の胸に激しい高揚感と劣等感のようなものが同時に押し寄せて、良くわからないが泣きたくなってきた。
が、泣いてる暇なんてない。
雄二郎が、今度こそ、名古屋に行くためのお金を用意出来た時に間に合うように、今は少しでも早く短編を作らねば!
私は、ノートに今までの話を軽くまとめてみることにした。
始まりは夏。
そう書いて、一瞬、桜の光景が再び思い浮かぶ…
爛漫の花びら舞い散る……。
春の美しい桜の光景を…私は、西洋の物語の中に、昔、見たような気がした。
街路樹の様に植えられた桜の道を1台の馬車が走って行く。
「おじさん!ああ、おじさん!!」
心の中で、お下げ髪の可愛らしい少女が叫ぶ。
爛漫の花びらを散らすのは…桜ではなく、リンゴ!
ああっ。
そうだった…。
私の胸が少しだけ、少女時代を思い出して『とくん。』と、小さく脈をうつ。
アン・シャーリー。
それは、赤毛のアンの初めの場面。
養父になるマシュー・カスバートとの初めての馬車でのドライブ。
あの美しい光景が、私に新たなインスピレーションをくれた。
「おじさん!!」
かつて、私もそう叫びながら、リンゴの花を見たことがあった。
長野のおじさんのリンゴ園で。
私は、その時、自分の異世界のイメージが急速に固まってくるのを感じた。
ヨーロピアンの私の異世界。
私は、フランス北部をモデルにした。
ノルマンディー地方はリンゴの産地だと聞いたことがある。
日本のリンゴと違って小粒で、お酒の材料になる。 カルバドスと呼ばれる酒がそうだと思う。
確か、小粒で酸っぱくて、日本のリンゴほど旨くないって聞いた気がする(信州の欲目もあるだろうけど(^-^;)
私は、そこで『さんフジ』の様な甘くて蜜のあるリンゴ園を作ろう。
ノルマンディがさんフジなら、
ワインの産地のブルゴーニュでは甲州を植えるの。
その向こうには…アルプス!
かつて、宣教師のウォルター・ウェストンが、上高地にアルプスを見たように、
私は、ブルゴーニュ風味の異世界のアルプスに飛騨山脈を見つけたのだった。
良くわからない親近感に嬉しくなりながら、私は、自分の異世界が出来上がり始めるのを感じた。




