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ラジオ大賞  作者: ふりまじん
投げ銭大将
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勇者の条件

熊……って、レベルいくつなのかしら?


私は木の間から見える青空を見つめてバカな事を思う。

web小説のファンタジーには、敵モンスターや自分のレベルの数値が必ずと言って良いほど登場する。

ゲームをしない私には、あの謎の数値が理解出来ずに混乱する。


2000のレベルだと、何か出来るのか、さっぱり分からない。


それは高校生が、レタスの値段…200円が高いか安いかが分からないのと似たようなものだと思う。


レタスだって、天候や季節で200円の価値が変わる。

不作で300円とかするときなら安いし、

夏場に豊作なら、ぼったくりと言うかもしれない。


では、レベル2000とは、どうなのだろう?

飛んだ異世界によって価値は変わらないのだろうか?

これについて、細かい説明は、ほぼないが誰も気にしていないから、結婚式の御祝儀のように相場が決まっているのだろう。


では…熊のレベルはいくつなんだろう?


私は変なところに引っ掛かって笑ってしまう。


笑っている場合では無いが、午後の暑い時間で、辺りの蝉も騒がしく鳴いているので、よほどの事がなければ、熊との遭遇は無いと判断した。


とはいえ、怖い。


リアルな、命がけの戦いの予感を感じながら、

こんな時に限って、あの戦闘力だのレベルだのと言う数値が実感できる気がした。


熊をレベル1だとすると、その10倍は強そうなドラゴンはどうなるのだろう?

熊が一匹だけでも足がすくむのに、ドラゴンと遭遇するとしたら、その恐怖や緊張はどれ程なのか?


そんな事を考える。


ここで、CGの魂を持たないドラゴンに対しての恐怖や緊張感を掴んだ気がした。


私に熊と戦うなんて、とても出来ない。


それは、ジローも同じだろう。

異世界に飛ばされて、いきなりドラゴンと遭遇したら、豚のような悲鳴をあげて呆気なく食われてしまうに違いない。


藪に風が流れて、サワサワと音がするのを不安に感じながら、私はこの先へ行くか、戻るかを思案した。

多分、熊に会うことは無い。8割の確率でそう思う。

けれど、この立て看板を見て、なおかつ、この山へと踏みいると言うことは、万が一、熊に遭遇したと時に大人として恥ずかしい事になる。


6時台のローカルニュースに名前が載るなんて恥ずかしいし………


(○_○)!!


私はその時、ふと、思った。

もし、もしも、この無謀な登頂が、web小説のファンタジーを書くためだと知られたら……(°∇°;)


そう、私は既に数ヵ月、web小説を書き、ラジオ大賞に投稿もした、web作家なのだ。


いや、いつもは、そんな肩書きは仰々しくて嫌だし、

誰も、私レベルの投稿者を作家なんて認識していない。


でもっ、

二万円稼ぐための小説のプロットの為に、熊に襲われた…なんて知れたら、


底辺作家、熊にやられる!


なんて、面白おかしく書かれるかもしれない。


この時、私は、自分がweb作家だと自覚した。


信州の田舎のオバサンが熊に襲われても、若者にはなんの面白味もないが、

ラノベ作家(底辺)の肩書きがつくと、興味をがわくのだ。


こんなところで死ぬわけにいかないわっ!!


私は、頭の中で演歌歌手が♪祭りだぁ〜祭りだぁ♪と、楽しそうに歌い、

なにか、よくわからない、禍々しいSNSの闇に堕ちる自分を思って身震いをした。


ここから先は、私には進めない。


私は笹が山肌で不気味に揺れる薄暗い曲がり角をみつめた。


既に、赤毛のアンのかわいい世界から外れてはいたが、

ここに来て、異世界の「世」の字を落としてしまった世界を見つめていた。


異界(いかい)


風に揺れる笹と、その先の薄ら暗い空間の向こうに、ショートボブと下駄を履いた馴染みの妖怪が不気味笑っているように感じだ。


「勇者なんてのはな、自分でなるものでは無いんだ。

自分が死んだその後に、誰かが、そう語り継ぐものなのだ。」



頭の中で、立派な台詞を喋るオヤジを感じる。


それは、多分、小学生の頃、叔父さんと見た古いアニメか漫画の台詞だと思う。


勇者……。


web小説では、職業として認知されているけれど、思えば、昔は違った気がする。


引き下がることも勇気だと教わった、そんな時代もあったのだ。


勇者…

思えば、去年のローカルニュースに登場した、農作業中に熊に遭遇し、ナタで闘ったどこかのじーさんこそ、勇者と呼ぶに相応しい気がする。



私は随分昔に心の引き出しにしまったまま忘れていた、自分の勇者を解凍して、今風のファンタジーとの差に困惑する。



こんなんでテンプレなんて書けるのかしら?


いや、その前に、なんで勇者?スローライフ考えて、なんで勇者を考える?私。


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