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ラジオ大賞  作者: ふりまじん
投げ銭大将
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スミレ、テンプレる4

あぜを越えて、小山の周りを囲む砂利道の農道を右周りに進む。

そうすれば、頂上の神社に向かう入り口にたどり着く。


標高は100mもないと思う。頂上まではゆっくり歩いて15分もかからないだろう。

私は久しぶりのこの道を踏みしめながら、子供の頃を思い出していた。


ここは子供の遊び場で、私達は、ほぼ毎日この辺りで遊んでいた。

田んぼが近くにあるので、用水路や溜め池、山がのなかには昆虫がいて、飽きることはなかった。


それにしても……


私は山の林から聞こえるセミの声にうんざりとする。

昔はこんなに騒がしくなかったのに……。


私は道を歩きながら、それが子供が来なくなったからだと悟ると、なんだか少し寂しい気持ちになる。


道端の雑草が延び放題になっていて、私の子供時代、この道を人知れず整えてくれた人を思って寂しくなる。


少子化と高齢者が消えて行くのを感じたからだ。


そんな複雑な気持ちで歩くうちに気がつくと、鳥居が見え、

私は足を止めた。


成長期の夏の下草が勢力を伸ばし、杉が日の光を遮る(もり)に向かって勾配しながら道が広がって行く。


鳥居を潜り、角度のある狭い道に足を踏み入れようとした途端、私はギョッとなって固まる。


蜘蛛だ…。


道の両端から長く延びた木の枝を悠々と使いながら、五センチはありそうな、大きな女郎蜘蛛が巣をかけていた。


(-_-;)………。


私は言葉も無く、この不気味な門番を見つめた。


色々な気持ちが交差して行く。

虫を見る度に泣いていた少女時代。

助けてくれた少年。

丸々と太った蜘蛛が、道の真ん中に巣をかけられるほど、人通りの消えた山。

それはweb小説作家ごっこの夢から叩き起こされたような気持ちで、辛い現実を突きつけられている気がした。


山から、夏草の滴を含んだ涼しげな風が流れてきて、私の頬を優しくなでなから問いかける。


そこまでして名古屋に行きたいのか?と。


自分の心の声だと分かっていても腹が立つ。


そんな事言われても仕方ない。

私は一次、仕事が無くなって音信不通の雄二郎を心配していた奈津子を思い出す。

雄二郎がこのまま死んだら、きっと悔いが残る…と言っていた。


でも、お金が貯められないのは自業自得なんだから、本人が良ければそれでいいんじゃないかと、私は考えてしまう。


そう反論した私に、奈津子は「それはそうだ。」と、綺麗な憂い顔をみせたっけ…


私はその顔を思い出して、胸がつまりながら、落ちていた枝を拾って蜘蛛を見る。


少女時代、虫や蛇が藪から飛び出す度に助けてくれた隼人くんは、綾子と結婚して妻と娘の為に酒作りに忙しい。


でも、時を経て、私も熟女(まじょ)と呼ばれる年になった。


蜘蛛を見て泣くような小娘ではないわ。


私は70センチ位の枝を握りしめ、一度、空を切ると、間髪入れずに右側の枝に張り付いている蜘蛛の糸を枝で払った。


巣が壊れるのと同時に、女郎蜘蛛は左方の枝へと逃げて行き、私は微妙に暗く陰鬱で、草が生い茂る小山へと続く道を睨んだ。


久しぶりに来た山道に、不安と面倒くささを感じながらも私は蜘蛛に守られていた道の先へと一歩を踏み出した。


正直、気持ち悪いし、蛇が出たら嫌だとか、面倒しか思い浮かばなかった。

が、それと同時に、私のファンタジーの世界へ戻ってきた感覚がする。


web世界の、機械仕掛けのファンタジーに混乱した気持ちが、

狂った方位磁石が北を示すように、馴染みのストーリーが頭のなかを整然とならび出すのを感じた。


(お帰り。ニューダンジョンへようこそ。)


少女時代に遊んだ、杜の妖精が心の切り株から飛び出して挨拶をする。


私は、エコバックの中からタオルを取り出すと首に巻いて頂上を目指した。


いや、その予定だった。

しばらく歩いて回り角の立て看板に再び私は固まった。


≪注意!熊の出没情報がありました。

熊が出現する可能性があります。この先には入らないでください。≫


えっ(;゜∇゜)




勇者になるのは一筋縄ではいかないものである。


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