勝算
次の日の朝、旦那と息子を送り出し、家の雑事を終えると10時頃に自室のパソコンの前に座った。
よくは知らないが、アガサ クリスティは、こんな風に家事の合間にあの名作を執筆していたらしい。
同じ主婦として、その姿勢に尊敬するし、あやかりたいので真似してみる。
実際にクリスティがそんな事をしていたかは知らないが、とりあえず、こちらのやる気はあがってくる。
成り行きで異世界ものを書くはめにはなったけど、勝算は…稼ぐ為の作戦が無かったわけでもない。
私達は作家になりたいのではなく、
金を稼いで慰安旅行をしたいのだ。
一人、どうしようもない奴が居て、彼の金作を待っていたら、10年を無駄にしたのだ。
で、奴が最後に売れる、思い出を売ることにしたのだった。
これは、ある意味罰ゲームのようなものだったのに、彼は呆気なく思い出を売る事に同意した。
で、奈津子が素直に思い出を文章化したわけだが、あんなものを投稿されたら、身バレして私達がピンチになる。
と、言うことで、エピソードを異世界ファンタジーに変えることを私が奈津子に提案したのだった。
このロクデナシの友人の名前は雄二郎。
自称、中年の現在まで、友達と旅行をした事の無い男である。
そんな彼の珍しい身の上を名古屋人にアピールして閲覧数を稼ごうと奈津子は考えていたようだった。
生涯で、最初で最後の友人との旅。
それを名古屋に決めたのだ。
理由はモーニングがお得な事と名古屋ビルジングを見たい。
なんとも分からない理由なのだ。
ちなみに、名古屋ビルジングは改装されたらしい。
恐ろしいのは、改装前からこんな事を雄二郎がぼやいていた事で、
果たして、新しい名古屋ビルジングでもいいのか、分からないと言うことだ
雄二郎は無事に名古屋に行き、モーニングと名古屋ビルジングに行けるのか?
こんな他人には、どうでも良い事も、名古屋の人なら気にしてくれ、アクセスが稼げると奈津子は考えたようだ。
けれど、変な所に素直な雄二郎が、モーニングを『パン小さいね』とか、名古屋ビルジングを『なんだ、普通のビルじゃない?』
なんて、ネガティブな事を言う心配もあるのだから、ここはガッチリとフィクション…異世界に設定した方が無難なのだ。
私は、今までweb小説で異世界ものを書いた事はない。
が、色々と情報をネットで知った。そして思った。
雄二郎って、異世界ものの主人公みたいだわ。と。
そう、彼は少し前まで、コロナで仕事がキャンセルになり無職。
そして、気が良いけれど、計画性のないダメ人間で、そのわりに、オバサン三人(私達の事)に慕われて、なんか、助けられて生きている。
フリマを遅刻して、仲間外れにされそうになったり、
なんだか、最近、人気らしい『追放もの』のようそだって、あると思う。
そんな雄二郎をモデルに話を作れば、とりあえず、物語にはなる気がするのだ。
なにしろ、web小説のファンタジーものには、
テンプレと呼ばれる人気の筋書きがあって、その通りに物語を作れば、素人でもなんとかなるとか、どこかで聞いた気がする。
基本、6ヶ月で二万円を稼ぐ予定として
1ヶ月、一万字の一話完結の物語を6回。
ひと月 4000円×6で、2万4千円を目指そうと思う。
これが高いか安いかは分からないけれど、
私にだって、名古屋人に負けない客層がいる。
研究家と呼ばれる人たちである。
確かに、私の文才で素晴らしい異世界ファンタジーなんて、一長一短でわいてくるハズもない。
でも、地味に一万字程度の短篇を定期的に投稿し、
平均的な底辺作家の位置に私はいるのだと思う。
作家を目指すのなら、それは残念な事かもしれないが、
とにかく、二万円を稼ぎたい私には、ファンタジー以外の面白さと客層を狙える武器になる。
つまり、web小説は、その物語の世界を読みたいと考える読者とは別に、
自分でも書いて見たい。もしくは、書いている人たちも閲覧者になる可能性があり
今まで、昔の童話のような物語を一年、地味に書いていた私が、
ファンタジーテンプレで、それっぽい話を書いた場合、読者がどう反応するのか?
と言う作者側からの興味を引く事が可能な気がするのだ。
私の投稿した作品は、基本、同じような閲覧数と、ポイントなので、
異世界テンプレを書いた場合、面白い比較になる可能性もあるのだ。
ちゃんと異世界テンプレでお話を作れさえすれば!
イマイチ自信は無いけれど、もう、やるしかない。
私は不安を胸に、テンプレを作るべくノートに知っている情報を書いて行くことにした。




