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ラジオ大賞  作者: ふりまじん
投げ銭大将
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名古屋対異世界

異世界…言ってしまって不安になる。

スマホの向こうで奈津子が笑っている……。


「異世界…って。」

「フリマの法則『その1 人の通る場所を狙うべし!』よっ。

web小説の人気ジャンルは、異世界ファンタジー。

他のジャンルとは比べものにならないアクセスがあるのよ?

本気で金儲けを考えるなら、秀逸な純文学より、異世界の駄作の方がいいのよ。」


しらんけど…大阪人でもないのに、心がそう呟く。

「は?いや、いや、確かに、雄二郎は間抜けだし、ぶっとんだエピソードもあるけどさ、

異世界って……

昭和喜劇くらいが関の山だよ?


スミレ、想像してみてよ?

雄二郎のキャラが、アニメ化に耐えられるのか?」

奈津子の言葉に、私は雄二郎を脳内二次元化をして(ひる)んだ。


確かに、二次元にするには不細工過ぎる。

いや、雄二郎だけではなく、アニメキャラを実写にするのも

実物をアニメキャラにするのも違和感が伴うものなのだ。


「た、耐えてみせるわよっ。web小説の世界を舐めてもらっちゃ困るわよ。

今のアニメなんて、何でも美化するんだから(しらんけど)。

と、言うか、我々の作品がアニメ化とか書籍化なんてしないから、

そんな夢はね、一年目の投稿者()がみる夢よ。


現実は、二万円を稼ぐのだって大変なんだからっ。

とにかく、今は無駄な夢を見ずに堅実に1円1円稼ぐことを考えるべきだわ。

人通りのある場所で店を開くべきだと思う。


それに、異世界なら個人特定が難しくなるもの。

奈津子、あなたの文章をまるまる載せたら、すぐに特定されちゃうわよ。」

私は奈津子に言った。


雄二郎の奴は、あんまり気にしてないだろうけど、それでも、二万円を作れない中年なんて言われたくないはずだ。


「もう、心配性なんだから。

アイツはすでに、秋祭りとかでローカルニュースとかに取り上げられてるよ。『酔っぱらって浮かれるオッサン』として。

でも、誰もなにも言わないわよ。まして、インターネットの小説とか…この辺のじーさん達には、それこそ異世界のお話だわ。


確かにスミレの言うように、人がいるところの方が商売はしやすいけど、

興味を持ってくれる客がいなきゃ、スクランブル交差点で喚くようなもので誰も立ち止まってはくれないわよ。」


ぐっ…奈津子の言葉の説得力に言葉がつまる。

正直、口に出しては見たけれど、私も異世界ものなんて書いたことはない。

奈津子は続けた。

「現実世界の話の方が売れると思うのよ。

だって、雄二郎の行きたいところは『名古屋』なんだもの。

京都でも

東京でもなく


『名古屋』


今はどうか知らないけど、少し前には、人口と知名度はあるけれど、観光資源が残念な都市とか言われていたわ。


そんな名古屋だからこそ、名古屋連呼で、生涯…最初で最後かもしれない友人との旅行の地を『名古屋』と決めた雄二郎のボヤキを聞いてくれる人がいると思うのよ。

主に名古屋の人とか…


確かに、はじめはバカにしてるように感じるかもしれないわ。」

「コーヒー一杯でパンがついてくるのがお得だから、名古屋のモーニングを食べてみたい…って、そんな動機だもんね(T-T)」

私は、思わず相槌(あいづち)をうった。


私も、この理論は理解不能である。

が、10年ぼやかれると、なんだか、名古屋のモーニングを食べてみたい気持ちにもなってくる。


「ふっ…あと、味噌おでん…きっと、名古屋の人も理解不能だわよ。」

「それと、名古屋ビルジング…って、なんなのかしらね(-_-;)

調べてみても、見所がよくわからないのよ…


名古屋ビルジングより、名古屋城の方が、見所がありそうなんだけどね。」

私達は楽しそうに名古屋を語る雄二郎を思い出しながら不可解な気持ちになる。

「そう、何がいいのか、よくわからない、でも、奴には夢なんでしょ?

私達だって、はじめのうちはバカにしていたけれど、ボヤき続けられてるうちに、何とかしたいと思い始めたじゃない。

ネットをしてる人の中にも、そんな気持ちになる人が現れるかもしれないでしょ?

名古屋の観光地とかの話を絡めたりしてさ、その方が長期的にはいい気がするのよ。」


奈津子の話は、とても理論的で納得出来た。


出来ては来たが、あんな文章で好き放題書かれたら、身ばれした時に恥ずかしい…


それは嫌だ。


「でも、私達のサイトですら『名古屋』のワードで235件はヒットするわ。


京都には及ばなくても、『名古屋』で記事を書いている人は山ほどいるわ。


それに、私達のサイトで、そんな地味な旅の豆知識なんて欲しがる読者は殆ど居ないと思うわ。


それに、希少と言うほど取り上げられないネタでもないわ。名古屋は。


そして、何より、我々は短期決戦で二万円を稼ぐのじゃ無かったかしら?」

私は、最後の台詞に力を込めた。

これからまた10年、だらだらと名古屋に行きたいとかボヤきたくはない。


半年くらいでサクッと儲けてしまいたいのが願望だ。


これには奈津子の方が折れた。


「分かったわ。異世界、これで書いてみてよ。

頼んだわよ。」


えっ(°∇°;)


私の血の気が引くのと同時に奈津子の電話が切れた。

耳に蛙の声が戻り、

私は、呪いの呪文と化した奈津子の私小説を複雑な気持ちで見返した。


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