Show By?テイク
かっ…輝き…
私は奈津子の言葉に、つい、カーペンターズを聞きたくなった。
若い頃、イケメン満載の素敵なドラマの主題歌に使われていたのだ。
自分の青春とカレンの美しい声を思い出しながら爆笑し、今度は私が奈津子の不機嫌をかった。
「ごめん。ごめん…違うの…カーペンターズが頭の中で歌い出して。」
「え?」
「ほら、ドラマあったじゃない?私の叔父さんが好きな『青春の輝き』が主題歌になったやつ。」
私は慌ててフォローを始めた。
「あ、ああ、あったね!結婚式で叔父さん歌ってたね(^-^)
一人で英語の曲を歌って目立ってたわね。」
「えっ(;゜∇゜)」
今度は私が混乱する。結婚式で何故か父よりも泣きながら叔父さんが歌ったはなむけの曲だったことが胸に染みてきた。
いけない、話がおかしな方向にずれて行くわ。
「じゃなくて、テーマは『輝き』よ。
昔はともかく、少年少女が中年のダメおじさんのロクでもない話に『輝き』なんて見つけられないでしょ?
私だって、お肌も心もくすんできわよ(-_-#)」
私の不服に奈津子が笑い、「今でもチャーミングだよ。」なんて、大昔の映画の台詞をふざけて言う。
「もうっ、すぐ脱線するんだから。
定職を持たない、名古屋にも行けないオッサンの話なんて、どうにもできないでしょ?」
「そう?でも、私たちはそんな昔の映画でときめいたじゃない?
探偵は、大体、いつも開店休業だったわよ?」
奈津子の言葉に、レンタルビデオでみた昭和のアニメがよみがえる。
「でも…雄次郎は走れないわよ(-_-;)
フリマの段ボールすら、面倒くさがって運ばないじゃない。」
私は、雄次郎の怠け者な生態を思い出してなんだかイライラしてきた。
「まあ…ね。でも、そんなロクでもない、友達もいない、彼女なんてもっといない面倒くさがりが、
自分の恥ずかしい半生を晒してまで名古屋に行きたいと願うのよ?
東京でも
京都でも、
浦安のあの夢の国でもなく、
名古屋。
東京に行ったのは、生涯で二回きり、
親戚の結婚式と
なにかの試験をうけるため。
友達と旅行なんて、したことが無い、そんなダメ男が、初めて参加したサークルの友人との旅行。
本気で生涯で最初で最後の『友人との旅行。』
その旅費の二万円を稼ぐために物語を作るのよ。
その願いは、、、ある意味、純粋だと、私は、感じるわ。」
奈津子の声が切なく響いた。
『名古屋に行きたい』
雄次郎がそう叫んでから、多分、10年近くなるかもしれない。
ある意味、10年あったら、一年に二千円を貯めたら良かったのに。と、思わずにはいられない。
初めの動機は、引っ越した友人と会うことだとしても、殆ど、この10年、名古屋に行く動機は、この二つだけを雄次郎は、呟いていた。
モーニングに行く。
味噌おでんをたべる。
名古屋のモーニングは、コーヒーの料金でパンがつくらしい。
が、交通費を考えたなら、金沢で蟹でも食べた方が安上がりで、幸せな気持ちになると思うのだけど、
こんな議論になると、必ず雄次郎は、こう言うのだ。
「コーヒー一杯で、パンがつくんだよ?
お得でしょ?」




