表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラジオ大賞  作者: ふりまじん
投げ銭大将
27/111

幸せを売る女(仮) 13

「懐かしいなぁ…CDチェンジャー」

奈津子はそう言って、娘時代に戻ったようにケラケラとこぎみ良く笑い、私の不機嫌を誘う。


「もう、馬鹿にしてるでしょ?

まあ、いいわ。

貴女だって、同年代だもの。

それに、あの時代、Jポップの黄金時代だと思うのよ。

キラキラの歌がたくさんあって…CDにハズレの曲なんてなかったもん。」

私は懐かしさに目を細めた。


ドラマがあった。

皆が見ている馴染みのドラマ。

主演のアイドルの唇に本気のキスを探した思い出…

そんな懐かしさと学生時代を詰め込んだ歌に送られて、私たちは国道を走った。


今考えると、そら恐ろしいばかりだけれど、

その時は、そんな不安すら楽しかった。


はぁぁっ(´ヘ`;)


私は、色々と込み上げる複雑な気持ちを胸に、片付けを始めた。

それに気がついた奈津子が食器を片付けるのを手伝い始める。


私たちはお盆に汚れ物を乗せて台所へと向かい、

奈津子は話の続きを聞きたがった。


「で、湘南に行けたの?」

興味津々に聞いてくる奈津子を私は苦い顔で軽くにらむ。


人の黒歴史を、そんなに聞きたがらなくても。


不満が込み上げて、

でも、次の瞬間には、中学時代の奈津子を思い出す。


湘南

派手な水着に

イケメンサーファー


思えば、変なものに憧れていたものだと、なんだか痛々しさと愛しさを感じる。

奈津子は、ハイレグ水着に憧れていた事を思い出して、つい、笑ってしまう。

「海には…行ったわよ。

すごぉーく、大変な想いをしてね。

でも、何を間違えたのか、九十九里浜だった……かな?

なんか、知らないけど、千葉についていたわ。」

私はそう言って、深いため息をつく。


そう、私たちは関越道をなんとか進み、途中で休み、昔話をしたりして、明け方辺りに首都高に突入した。


「なぜ?」

奈津子は驚いたように私を見、私は憮然と答えた。

「私のナビが悪かったのよ。」


私のナビと言っても、スマホなんてない時代、

車のナビだって高くて、まだまだ、搭載している車は少ない時代だった。


雪の降る私たちの町では、ナビの前にオートマかマニアルかを選択する事になる。


当時、まだ、マニュアル車の需要はあって、

雪の降る地域では、4WDを搭載するために、東京のひとより高い車を選ぶことになるので、

オートマ車より安いマニュアル車を選ぶひとがわりといた。


私も、そのくちである。

で、あるから、ナビなんて、全然考える余裕なんて無かったし、

そんなものに頼るなんて、車に慣れてない人間みたいに話していた時代があった(///∇///)


道案内は、助手席の人物がやるもので、

道路標識は、令和の時代より、ドライバーにとっては大切な道しるべだった。


私は早く結婚をし、軽自動車を手に入れていた。

一人で富山は勿論、新潟や金沢だって行ったことがあった。


だから、大丈夫だと……

車の運転やナビには自信があった…

首都高に突入するまでは。


そのあとは、良く分からない。

綾子の悲鳴と、複雑な道路標識とマップが頭を回りながら、気がついたらなぜか千葉にいたのだった。


千葉。

湘南より言葉的には魅力が半減するものの、

それでも、沢山の人がいて、早朝だったのに、道路が結構混んでいた。


九十九里浜…か、どうかは正直良くわからないけど、

海ほたるを断念したのだから、東京湾の方の海ではないのは確かだった。


私たちはファミレスで食事をし、

そして、日帰り温泉らしきところで仮眠をした。


綾子はそこまで、休み休みではあるが、一人で運転をし、

諸々の支払いをしてくれて、

それについて、何も言わなかった。


私は綾子が支払いをする度に、軽率についてきた自分を反省した。


「で、結局、湘南には……」

「行かなかったわよ。正確には行けなかった…かな。

海ほたるにも、ね。」

私は、コーヒーのような甘さのある苦い思い出に目を伏せて、それから、皿を洗い始める。


綾子は、湘南には行けなかったけど幸せそうで、

海を見ながら私に

『いっしょに居てくれてありがとう。』

と、ビックリするくらい素直な言葉をかけてくれた。

綾子は、帰りも自分一人で運転し、

時には、助手席で不安になりながらも楽しい冒険をしたと思った。


綾子の家につくまでは。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ