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ラジオ大賞  作者: ふりまじん
投げ銭大将
24/111

幸せを売る女(仮) 10

「綾子…昔は黒かったなぁ。」

奈津子がそう言って軽快に笑った。

私は注意したかったが、やはり、あまりの変わりように笑いを止めることは出来なかった。


90年代。私たちの学生時代は、小麦色の肌が人気だった…いや、黒ければ黒い方が素敵だとされた…

小麦色の…ではなく、ガングロとか呼んでいた(*ノ▽ノ)


制服の丈が短いものが流行り、皆、競うように短くしていた。


私は近くの女子高に入学したので、茶色のジャンパースカートで、短くすると不格好になるし、

足も細いとは言えなかったので、校則通りの丈だったが、綾子は少し大きな田舎の街の普通校に入学したので、可愛いブレザーとチェックのスカートの制服だった。


当時、今では考えられないほど、綾子は痩せていた。

テニス部に所属し、適度な筋肉があり、身長は高くなくてもすらりとしたバランスのよい足の綾子を羨ましいと思っていた事を久しぶりに思い出した。


日焼けして、こじんまりとした身長の綾子は、当時の流行りの制服コーデが似合っていた。


「アイツ、ルーズソックスばっか履いていたな。」

奈津子が懐かしそうに唇を引いて目を閉じる。


一瞬、その上品な姿に、私は笑うのをやめて見いってしまう。


奈津子は街中のお嬢様高校へ入学した。

お母さんの憧れた学校で、中学の終わり頃から、あまり調子の良くなかった母親を喜ばせたくて入学したと噂で聞いた。


だから、奈津子もまた、流行りの制服アレンジをすることは無かった。


母親が入院するようになると、まるで、母親の夢を体現するように、昭和の女学生を演じて見せた。


普通なら…それは野暮ったくなるものだけれど、

身長があって、顔も綺麗な彼女がすると、まるで何かのドラマから抜け出てきたように見えた。


長いストレートの髪をポニーテールにして、リンと立つ奈津子は、近寄りがたいような、美しさがあった。

が、男子からの告白も、痴漢に遭遇(あう)ことも無く学生時代を過ごしていった。


女子高に彼女の親衛隊が出来上がっていたから。

男前な奈津子は、電車内で彼女たちを守っているつもりのようだったが、

実際は、彼女たちが奈津子を守っていたのだと思う。少なくとも、他校の我々に流れてくる噂を考えると、そんな感じがした。


「どうしたの?」

奈津子が私に声をかける。

「なんでもないわ。ちょっと、昔を思い出しただけ。

それにしても…綾子は変わったわよね…。」

私は奈津子の思い出を振り払い、小麦色の肌で嬉しそうに手を振る女子高生の綾子を思い出した。


当時は、部活前にオイルを塗って日焼けを増していた綾子におばさん達が不気味な予言をしていた。


そんな日焼けをしていたら、年を取ったときに怖いわよ…。


そんな言葉を、私も信じて心配していたが、

綾子は、全然気にしていなかった。

そして、高校を卒業してからも、海に山にと遊び回って元気に日焼けしていた。


話を戻すと、私が家出をしたあの事件のときは、綾子は大学に通っていた。

相変わらず日に焼けて、女子高時代のように自由人の風情だったが、

あれでいて、綾子は頭が良くて勉強は出来た方だった。


学生なので綾子は自分の車は持ってなかったが、

お兄ちゃんが親の援助も受けて大きなバンを買ったので、必要なときは借りているようだった。


綾子は私の一大事に、お兄さんの車を借りてやって来たのだ。


そう考えると、綾子の友情を深く感謝もしたくなるし、

それと同時に、ファミレスに行くのに車が必要な町だと言うことを思い出す。

あの頃も田舎を嘆いていたが、あの頃以上にファミレスが県庁所在地に後退して行く現在、消えた店を思い出して、昔は良かったとも考えたりもする。


あれはまだ、正午にもなってなかったと思う。

車高の高い車のフロントガラスのほぼ全面に広がる美しい青空を見つめて、何も聞かない綾子の優しさを感じながら、宇多田ヒカルの曲を大音量で聞いていた。

あの時代、車の内装にお金をかけるのが流行っていて、お兄さんの車にはウーハーとか言う、重低音に響くスピーカーが搭載されていた。


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