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ラジオ大賞  作者: ふりまじん
投げ銭大将
20/111

幸せを売る女(仮)6

家の廊下が宵闇にすっかり染まる頃合いを見ていたように、事前に飾り付けていた太陽電池のランプが一つ、二つとほのかに辺りを照らしている。


奈津子はオレンジ色の光の花に照らされて、虫の声を聞きながら、庭を見つめていた。


私はテーブルクロスに銀のナイフとフォークを置いて、テーブルに既に置いてあったキャンドルに灯をともした。


蚊除けも兼ねて事前に炊いていたアロマポットから上品なオレンジのオイルの香りが立ち込める。


日が落ちても残る暑さを感知して、クーラーが本気を出したように風を強く送り出していた。


廊下のテーブルの世界と、その背後のクーラーの和風の部屋。

その奥の仏間が少し見えて、私の心をシュールな気持ちにする。


が、メインを前にして、そんな事を考えても仕方ない。


ここまでするのだって大変だったのだから。


次なんて、きっともう無いに違いない。


私は自分の歳と、コロナの猛威を思ってドキドキした。


飛騨牛を注文するまでは、コロナは終息すると予想されていたのに…


今日は、ご近所の目が気になってしまう。


女子高のお茶の授業で教えられても理解できなかった『一期一会』の心が現在(いま)は胸に染みる。


次は…いつ、皆で食事が出来るのかしら?


私はふと切ない気持ちになって、急いで台所へと向かう。


絹のように滑らかなマッシュポテトを乗せたセーブルの皿とカセットコンロをもって行く。


休ませた肉を付け合わせの夏野菜と共に中型のフライパンに乗せ、棚からブランデーの丸いケースを取り出した。


信州の……ホワイトブランデー。

ケースに入ったそれは、クリスマスのフルーツケーキを作ったときの残りだ。

信州のワインは、世界でも名前が通るほど有名になった。

でも、私も奈津子も一升瓶の白ワインを愛飲していた。

リーズナブルで、飾らなくて、それで旨い。


不思議と悪酔いしない気がするのは……地元の欲目なのかもしれないけれど。


ワインがあれば、ブランデーも出来る。

ブランデーとは、白ワインを醸造、熟成させたものだから。


そして、普通はブランデーの方が高い。


そして、普通、ブランデーと言うと琥珀色をしているけれど、ホワイトブランデーは、透明で、ブドウの香りが爽やかにたつ。


私はそれを取り出した。

これから、この夢のステーキを、

このホワイトブランデーでフランベするのだ。


何しているんだろう?


少しだけ、常識的な自分が問いかけるが、そんなものは無視する。


車で来た奈津子のためにも完全にアルコールを飛ばし、美しい炎の演出をする。


赤ワインを用意していたけれど、アルコールがより高いブランデーで間違いなく華やかな炎を作り、このステーキを飾るのだ。


私はポケットのマッチを確認し、そして、肉の入ったフライパンを持ってゆく。

心臓がドキドキする。


華やかで好きだけれど、普段はフランベなんてしないし、

やはり、火のつくあの瞬間の『ぼっ』と言うところはドキッとする。


上手く出来るか、不安になりながら、それでも私は先を急いだ。


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