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ラジオ大賞  作者: ふりまじん
投げ銭大将
13/111

理由

お、落ち着くのよ寿美礼(すみれ)

私は、私にエールをおくる。

私は、どうしたのだろう?今ごろ、奈津子にときめくなんて(T-T)


台所で麦茶を入れつつ頭を整理する。

体は手際よくお茶を入れ、奈津子のもとへと向かうけど、

気持ちは何故か、いったり来たりを繰り返す。


確かに、コロナが流行り始めた今年度から、旦那は別の部屋で一人寝を始めたけど、奈津子には、たまに、挨拶もしたし………。


いいえっ!

そう言えば、不要不急で半年ぶりにあったのだわ。

私は、その事実になんだか照れてしまう。


そして、奈津子の元についてしまうと、私は、娘のように板間の床を見つめながら、視線を合わせずに麦茶を差し出した。


ああっ。バカみたい(>_<。)


「何してるの?」

様子のおかしくなった私に気がついて、奈津子がからかうように声をかけてくる。

「フフっ。何してるんでしょうね。」

私は、叱られた犬のような気持ちで奈津子をみた。


夕暮れの縁側で、柔らかい夏の残り日を浴びる奈津子は、昔のように綺麗で、清潔そうで、ハチマキが似合っていた。


ハチマキ!?


私は、ハチマキと言うワードで、何かにヒットした気がして、奈津子の額をガン見した。


「な、なに、スミレ、あんた、おかしいわよ?」

奈津子が怪しむ。

「ハチマキ!そうよっ。ハチマキなんだわっ。」

私は、嫌な顔をする奈津子に構わず笑ってしまう。


そう、これだわ。


私は、奈津子の秀でた額を飾るタオルのねじり鉢巻を見た。

そして、不機嫌な友人にこの無礼の言い訳を始めた。


「ごめん。奈津子があんまり素敵だったから。」

「悪かったわね?ハチマキなんてして。」

からかわれたと思った奈津子は、不機嫌そうにハチマキをとく。


「悪くはないわ。

それどころか、昔と変わらず素敵なんだもの。

ほら、子供の頃のアイドルって、みんな、鉢巻きしてたじゃない?」

私は嬉しくなって笑う。

「悪かったわねっ。私は、時代遅れの女ですよっ。」

奈津子がふて腐れる。

「本当に、悪くなんて無いわ。そのジーンズだって、高校の時のでしょ?」

私は、奈津子の履いているスリムジーンズを指差した。

すると、奈津子は穏やかな顔になり、少し照れたように目を細めた。


「ああ…母さんがくれたものだからね。

出来るだけ長く使いたいと思うんだ。」


奈津子の母親は、彼女が高校生の時に病気で亡くなった。


それで、奈津子も京都の大学から、近くの専門学校へと進路を変更した。


奈津子のお父さんは設計士で、一人っ子だった。


お父さんは良いといったらしいが、奈津子がそれを嫌がったのだ。

まあ、この進路が間違いとは言えないのだ。


奈津子も設計士をめざしていて、専門学校も建築関係の学校だった。

学校は、確かに、一流とは言えないけれど、

家で、実践をしながらお金を稼ぎ、留年上等で勉強できるのだ。

ついでに、職人から設計士、経営者まで一流どころに会えるのだから、覚えが早い。

ついでに、年頃の娘と言う事で、嫁不足のあの時代、美人で頭もよく、同業の奈津子は、頼まなくても色んな実践と人脈を集められた…と、田舎の設計事務所では、破格の、と、言う意味くらいなんだけど…でも、奈津子はちゃんと家を守って暮らしている。


「そう言うところ、昔から好きだわ。」

私は、心からそう言った。

奈津子はちょっと驚いた顔をして、それから、中学時代から変わらない、甘いうずきを誘う照れ笑いを浮かべて

「ありがとう。」

と、言った。


私はドキドキする自分に混乱しながら、そ知らぬ顔で笑い返した。


夕暮れの、ひとときの甘い予感。


それを破ったのは、奈津子のスマホだった。


メールが来たと知った奈津子は、慣れた手つきでメールを読むと、立ち上がった。


「ごめん。雄二郎と待ち合わせしてたんだ。

私の小説は、後でメールするから、一度読んでくれるかな?」

奈津子が心配そうに私を見た。

「え?ええ。わかった…。」

私が答えるのを聞いて、奈津子は甘い笑顔と、怪しい予感を残してさってゆく。

私は、奈津子の飲み残しの麦茶を片付けながら、

今まで、こんな気持ちにならなかった理由を理解した気がした。


そう。仕事仲間の雄二郎と奈津子はいつも一緒で、私は、奈津子と二人っきりで話すことなんてなかったからだ。


そこで、雄二郎が、何となく気に入らなかった意味も分かった気がした。


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