奈穂子
中学時代に書いた、痛々しい私の願望小説を…40代になった現在、姪によって解説されるのを聞く……。
地獄である。
そして、令和の現在、私の話は知らないカテゴリーに分類されていた。
TS百合
どうも、男性が記憶を持ったまま、少女に転生する物語の事らしい。
色んなバリエーションがあるらしいが、主力は20代を過ぎた大人の男性が、記憶をそのままに、少女として女の子に恋愛するものらしく…まあ、姪の引き具合から、片寄った知識の可能性は捨てきれないけれど。
男くさい文章で、少女に近づく描写が、高校生の姪を嫌がらせているようだった。
私からしたら、百合…は、女性が描くものだと信じていたので、男性も書くのか…と、時代のトレンドにビックリした。
で、私の作った話についてだけれど、
遠い昔、タイタンに文明があったとき、姫様つきの従者だった主人公が、お嫁に行く姫に恋心を持ちながら悶絶し、悩みながら、結婚の日を迎えるときに、隕石が落下してパニックに。
混乱するなか、主人公は姫を守りながら死ぬんだけど、その時、願うのよ。
二度と離れたくないから、来世では、同性として姫のそばで暮らしたいと。
で、1990年代の日本に転生し、高校生として二人はめぐりあい、
やがで、主人公は、前世を思い出して、友人の少女(お姫様ね)に恋心を抱いて悶絶する…
みたいな話である。
若い人は笑っても、同世代なら、きっと、理解してくれるはずだ。
あの頃は、そんなんが流行ってたのよ。
超古代文明と、生まれ変わる運命の男女の悲恋。
そして、めぐる世紀末。
まさか、TS転生とか、なんとかに分類されるなんて、ノストラダムスも分からなかったに違いない。
姪は、熱く語る…
ふれあうことすらままならない、じれじれの恋について。
そして、もう少し、ふれあわせた方が読者受けが言いとか、ポイントアドバイスを貰ったが、
奈津子を…モデルが実在する話に、抱きついたり、キスしたりなんて、書けるはずもない。
実際、近くで話すのすら、息が出来ない気持ちになった昔があるんだからっ(///∇///)
「ダメよ。その話は。」
私は、聞き終わってからそう言った。
文花は、不満そうに私を見る。が、私だって、恥ずかしさに悶絶していただけではない。
「これ、はっきりいって、昔、人気のあった漫画のトレースみたいなもの…パクリ?になるから、今の世の中、公に発表なんて無理よ。」
ふふっ…我ながら、いい言い訳だわ。
「えーっ。パクリ?なーんだ。」
と、残念がる文花の顔に、なんだか胸がいたくなるけど、学校とかで使われたらたまらないわ。
「パクリ…まではいかないけれど、グレーゾーンだから、怖いおじ様達に指摘されるわよ?JK好きの。」
JK…なんて、はじめて使ったわ。と、少し、浮かれる。
「マジ…。じゃあ、仕方ないかな。」
文花は、つまらなそうにコピーを折り畳んでしまう。
「待って、それ、私に貰えないかしら?」
私は、慌てて聞いた。
黒歴史は回収して置きたい。
「ダメよ。これ、先輩から預かったんだもの。」
文花の台詞に亜美ちゃんのママ…綾子の顔がよぎった。
「亜美ちゃんに借りたの?」
なんだか怪しい猫なで声が出る。
「違うよ。木曽さんが持ってきたの。」
「木曽?」
私は、どこの木曽さんか、頭のマップを検索する。
「うん、木曽 葵さんが持ってきたんだ。」
文花のクラスメートでは、特定できない。
「お母さんの名前は知らない?」
と、聞くと、文花は首をふって、コピー用紙を開いて表紙絵を指差した。
「知らないけど、この挿し絵を書いた人みたいだよ。」
奈穂子ちゃんだ!!
私は、美術部幽霊部員の眼鏡っ子、木曽 奈穂子の事を中学ぶりに思い出した。




