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4.次期勇者との鍛錬

書籍版は3/4発売です! 予約開始してます!!






「それで、その女の子は何なんです?」

「あぁ、紹介するよ。ハリエット、ほら」

「うむ。儂の名はハリエットだ。光栄に思うが良い!」

「いいえ。そういうことではなくて、ですね? どうして、そのハリエットさんが、僕たちの愛の巣――ごほん。家の敷居を跨いでいるのですか?」


 家にハリエットを連れていくと、偶然にもエリオと遭遇。

 ボクとレミアの後方に立っている彼女の存在に気付くと、明らかに不機嫌な表情を浮かべてそう訊いてきた。その理由は分からないが、とりあえず紹介する。

 しかし、そうじゃないんですよ、と言わんばかりに彼はこう言った。


「噂では聞いてましたよ。その人、勇者候補のハリエットさんで――」

「候補ではない! 次期勇者だ! 間違えるな!!」


 だが、それを遮るようにハリエットが声を上げる。

 少年は疎ましそうに少女の声に眉をひそめ、一つ呼吸を置いてから……。


「……その次期勇者さんが、どうしてこの家にやってきてるんですか? 宿ならギルドからいくらでも提供されるでしょう? なんですか、どこまで優しいんですか? そんなところも大好きですけど、少しは節操というものを考えてください」

「お、おー……」


 あまりに、あまりに真っすぐに。

 早口で投げられた言葉の数々に、ボクはたじろぐしかなかった。

 するとそんな様子を察したらしく、ハリエットがずいっと前に出て答える。


「その方は、名をなんという?」

「エリオですけど」

「そうか、エリオとやら。これは儂からカイル殿にお願いしたのだ」

「……お願い?」


 何故か胸を張って、ハリエットはこう宣言した。


「儂を弟子として、短い間だけでも鍛錬つけてくれないか、とな!」――と。



◆◇◆



 ――そうして、数十分後。

 ボクは中庭でハリエットの鍛錬に付き合っていた。


「………………」

「どうしたのですか、先生!」

「……え、いや。どうにも視線が痛くて、ね」

「視線……?」


 背中にレミアとエリオ、そして何故かニナの視線を受けながら。

 彼らは各々に距離を置いて、しかし明らかに熱のこもった目でこちらを見つめていた。いいや、見つめているなどという生易しいものではない。

 それは、間違いなく監視だった。


 ――いや。二人きりになっても、ボクは何もしないよ?


「まぁ、いいか。それじゃ、とりあえず――本気で打ってきてくれる?」

「え、大丈夫なのですか? 先生に怪我でもさせたら……」

「大丈夫だよ。避けるのは得意だから」

「そう、なのですか」


 しかし、気にしていても仕方ない。

 ボクは少女に向かって、そう指示を出した。

 少しの抵抗はあるらしいが、ハリエットは一つ頷いて剣を構える。


「では――失礼します!」


 そして、一つ息を吸ってから――距離を詰めてきた。

 眼前に迫りくる彼女の青い髪。風になびいて仄かに香るのは、女の子らしい柔らかなそれ。でもそれに気を取られることはない。

 ボクはハリエットの繰り出した刺突を半身になって躱した。


 続けて横薙ぎ一閃。

 今度は身を屈めて小さくなり避けた。

 そして、そのまま前転して距離を取る。


「――――――――!」


 こうなるとボクの背中ががら空きだ。

 ハリエットも、そのことに気付いたらしい。

 後方から一歩――最低限の歩数で距離を縮める相手の様子が分かった。実に無駄のない攻撃動作。十四歳と聞いていたが、その腕はレオ以上。

 すなわちAランク以上の腕前を持っていると思われた。


 それでも、明らかな欠点がある。

 ボクは振り下ろされる剣圧を背中に感じつつ、一歩前に踏み出した。


「う、そ……!」


 カン――! 剣が地を叩いた。

 確実にボクを捉えたと、そう思っていただろう少女は驚き、目を見張る。

 無意識に出てきたのであろう声を聞き逃さない。そのことからボクは、自身の考えが憶測から確信に変化するのを感じ、そして同時に杖を振るった。


 本日二度目。

 少女の剣はこちらの攻撃で弾き飛ばされた。


「やっぱり、そうか」

「あ、うぅ……」


 どうやら、ハリエットもその言葉の意味を理解しているらしい。

 少しだけ涙目になりながら、こちらを見た。


「ハリエット、この剣って――」


 ボクは立ち上がりながら、確信をもって彼女に訊ねる。


「マジックアイテム――魔導具、だね」


 それは、かつてニールさんがボクに授けたようなそれだと。

 そう断言した。するとハリエットは――。


「……はい。そうです」




 短く、そう頭を垂れてそう口にする。

 それを確認して、その日の短い鍛錬は終わりを告げのだった。



 


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2019/3/4一迅社様より書籍版発売です。 ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=408189970&s 「万年2位が無自覚無双に無双するお話」新作です。こちらも、よろしくお願い致します。
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