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最弱の魔法使い、最強前衛職に覚醒する  作者: あざね
第一部 オープニング
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1.初めてのクエスト





 雲の切れ間から、光が差し込んだ。

 それはまるで、ボクの行く末を示すかのように……。


「ボクを、パーティーに? どうして……」

「うむ! 妾は今ほど山から下りてきたところでな。仲間を探しておったのだ。しかしギルドで募集をかけようにも、もうこの時間は閉まっていてな。宿もなく、途方に暮れておった」

「は、はぁ……。なる、ほど?」


 レミアと名乗った彼女は、大きく頷きながらそう語った。

 しかしあまりにも不自然な話、そして外見に不相応な語り口調に、ボクは首を傾げてしまう。山からって、この街――ギルアの裏にある山のことか?


「……して、カイルよ。お主の答えを聞かせてもらえぬか?」

「え、あぁ……」


 呆然としているボクに、レミアはぐっと前のめりになって訊いてくる。

 その綺麗な顔には小悪魔らしい笑みが浮かんでおり、思わず息を呑むのであった。……って、そうじゃない! 今は仲間になるか、否かを考えるんだ!


「うーん……」


 そんなわけで、しばし思考。

 だがしかしボクには、もう選択肢が残されていなかった。


「その、うん。よろしく……えっと、レミアさん」

「なぁに、レミアでよいぞ! 妾もカイルと呼び捨てるからな!」

「はは、は……そっか。それじゃ、よろしくレミア」

「うむ。よろしく頼む!」


 ボクたちは月下のもとで互いに手を取り合う。

 これが、ボクとレミアの出会いであり、すべての始まりであった。


「くっくく、早々に良い……を見つけたぞ」

「ん? いま、なにか言った?」

「なんでもないぞ」



◆◇◆



 ――そして、翌日である。

 ボクの住むボロ屋で一夜を明かして、早速ギルドへの登録へ向かった。


「ん、レミア? どうして雨も降ってないのに傘をさすの?」

「なに、気にするな。妾は少しばかり肌が弱いだけだからな」

「そっか。それなら仕方ない、か」


 そんな会話をしているとギルドに到着する。

 受付で簡単な検査をすると、レミアにはすぐにギルドカードが発券された。

 これはその冒険者の経歴やランクを示すものであり、誰もが最初はEランクからスタートする。薬草などの採集がメインであり、その実績によって昇格するのであった。ちなみに、ボクはBランク。一応は魔物討伐に赴けるランクだった。


「で、この掲示板にあるクエストを選ぶんだ」

「ふむ。なるほど、な……」


 背の低いレミアは、背伸びをしながらクエスト内容の書かれた紙を覗き込む。

 つま先立ちになって、時折よろけているのが可愛らしかった。


「うむ。これに決めたぞ!」

「うん。どれどれ……?」


 ボクは少女の取った紙を横から見る。

 すると、そこに書かれてあったのは……。


「って、リトルデイモン10体の討伐って、これCランクの依頼じゃないか?」


 予想だにしない、高難易度の内容であった。

 パーティーに一人でも当該ランクの者がいれば、クエストは受けることはできる。

 でも、今回は初めてのクエストだった。そのことを鑑みれば、もっと簡単な薬草採集から始めるのが良いと思ったのだけれども……。

 

「む? ダメなのか」

「い、いや。受注はできるけど、その……」

「なら問題ないな! では、早速行くことにしよう、カイル! なに、心配するな。妾の力をしっかりと、その目に焼き付けると良いぞ!!」

「え、あ! 待ってよレミア!?」



 だが、そんな感じに。

 ボクは完全に少女に流される形で、クエストに向かうのであった……。



◆◇◆



 リトルデイモンの生息する洞窟は、街の裏にある。

 ヒンヤリとした空気の漂う薄暗いそこは、その濃い魔素によって魔物を生成し続けている。階層はすべてで十三まであり、下に行くほどに魔物は強くなる。そして、今回ボクたちがやってきたのは第三階層だった。


「喰らえ――【ヴォルト】ッ!!」


 そんな薄暗い空間に、稲光が発生する。

 けたたましい雷撃音に続いて、小型魔族――リトルデイモンの断末魔が響くのであった。そして、それが途切れると目の前には換金アイテムである魔素の欠片が落ちる。レミアはそれを拾い上げると、自慢げに胸を張ってみせた。


「どーだ! 妾の魔法は!!」

「おー、凄い! ボクなんかよりも、よっぽど凄いよ!」

「ふふん! 良いぞ良いぞ、もっと褒め称えるが良い!」


 ボクが感嘆の声を上げると、少女は鼻高々になる。

 どうやら彼女、レミアは乗せられると力を発揮するタイプらしく、ボクは終始応援に回っていた。結果として、あっさりと10体のリトルデイモンを狩ったのだから大したものである。

 そして、これならと、ボクは考えた。


「よし。この調子なら、もう少し下層に潜っても大丈夫そうだね」

「…………………………なに?」

「ん? どうしたの、固まって」


 彼女と一緒なら、ボク程度が『前衛』になっても大丈夫。

 だから、力試しにもっと奥へ行こう。


 そう思ったのだけど、レミアの笑顔は一転、強張るのであった。


「おい、カイル。お主……死ぬ気なのか?」

「はい……?」


 そして、飛び出したのは震えた言葉。


「ここまでなら、妾の魔法も通用すると分かる。しかしな、これより下は危険だ。魔法使い二人だけで進むなど、命をどぶに捨てるようなものではないか!」

「いやいや。そんなことないよ、ボクは魔法使いでも近接戦も出来るし」

「程度があろう!? 魔法使いの近接戦など……」

「……っと。急がないと、帰りが遅くなるね。行こうか」

「え、ちょ、待て!!」


 そんなワケで。

 ボクとレミアはさらに下層へと潜るのであった。

 なんとなく気分的に、二つくらい降りて第5階層に到着である。


「さてさて。手頃な魔物はいないかな? デイモンあたりが、やりやすいけど……」

「デイモン、先ほどの魔物の上位存在だな……本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。それくらいの相手だったら、陽動戦でやりあってたし」

「やり、あった……?」


 キョトンとするレミア。

 ボクはそんな彼女の表情に首を傾げながら、敵を探すのであった。

 すると程なくして、巨躯の悪魔が三体ほどいるのを発見する。こちらの様子には気付いていないらしかった。これなら、先制が取れる。


「お、おい。本当に行くのか? 一対三だぞ……」

「大丈夫だよ。さっきも言ったけど、陽動で十体は同時に対応してたし」

「じゅっ……!?」

「うん? どうしたの、レミア」

「カイル、お主まさか……」


 レミアが何かを言おうとした。

 けれども、それより先にデイモンに動きがある。


「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 どうやら、こちらの存在に気付かれてしまったようだった。

 あちゃー。これじゃ、先制で隙を作るのは難しくなったかもしれないな。

 まぁ、それでもだ。今回はレミアの実力を見る、というのが目的だから、どうにかして隙を作らなければいけないのであった。


「よし、それじゃ。行ってくるよ……レミアは魔法の詠唱をしててね?」

「な、ちょ――カイル!?」


 ボクはロッドを片手に駆け出す。

 レミアは何故かまだ困惑している様子だったけど、気にする必要はないように思えた。時間さえ稼げば、彼女も落ち着くだろうし……。




 そんな感じで、ボクはデイモンとの戦闘に移るのであった……。



 


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2019/3/4一迅社様より書籍版発売です。 ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=408189970&s 「万年2位が無自覚無双に無双するお話」新作です。こちらも、よろしくお願い致します。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 実力無くてレミアのおかげでモンスター倒せてるのに忠告無視するのか…
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