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【第3回】 俺と倉見智香

 ※


 山王原さんのうはら高校は進学校であった。「県内でも一、二を争う」とは言わないが、「五本の指に入る」のは間違いない。さすがに、東京大学は難しいが、その他の国公立、及び、有名私立大学への進学率は高かった。

 その為、「真面目な生徒」が多いのも事実である。スピリチュアルな「非科学的話題」よりも、「英単語を一つでも多く覚える」方に重点を置く生徒が、ほとんどなのだ。

 倉見と会話をするクラスメイトが少ない理由は、ここにある。もちろん、学校生活に直接関わる話題なら誰もが彼女と話す。だが、「スピリチュアル」という言葉が登場する様な場面では、関係を持とうとしなかった。

 その中でも俺は早くから彼女に近付く。祖父の死に関して、(何か聞き出せるかも知れない)と考えたからだ。

 倉見は「例のイジメ問題」があった為、かなり有名な存在だったのも確かである。しかも、「スピリチュアルな特異な能力を持っているらしい」という「事実の尾鰭おひれ」を伴いながら……。

 彼女に付いて回る「特異な能力」に対して俺は興味を持ったのだ。半面、「スピリチュアルな」という言葉に対しては懐疑的であったが……。

 俺と倉見は一年生、二年生と同じクラスになる。この間、二人は、かなりの頻度で話しをした。

 ところが、彼女自身、「私に〈意識体〉が憑依しているのは、間違いないんだけど……」と、常に語尾を濁した発言に終始する。

「正直に言うと、私も、よく解ってないの!」

 そう投げりに言い放った事もあった。

 教室内で倉見と話す機会は多くないが、校舎内にあるラウンジで会話をする姿は目撃されている。しかも、頻繁に……。

 進学校に通う生徒でも、そこは思春期、〈真っ只中〉の高校生。「不思議な存在」と見なされている倉見に対して、積極的に近寄る俺を「好奇の眼差し」で見てしまうのも当然だろう。その為、クラスメイトから……、しかも、男子、女子を問わず、「入谷いりやは倉見の事が好きなのか?」という旨の質問をよく受ける。

 俺は「理屈っぽいが、明るい性格」だと自らを認識していた。その上、他人の話は〈しっかり〉と聞く方でもある。その様な理由もあり、俺は、いつの間にかクラス内の「相談役」になっていた。結果として、男子も女子も気さくに声を掛けて来る。それが高じて無理矢理、クラス委員長にさせられて、しまったのだが……。

 そんな俺が普段、会話の相手として選ばれない倉見と話しているのだ。「もしかして、恋愛対象?」という疑念を持たれても当然だろう。

 半面、俺の祖父が「不思議な終焉」を迎えた話もクラスメイト全員が知っている。

「入谷と倉見は『超常現象』で繋がっているのか、『男女の仲』を意識している関係なのか、よく解らん!」と言われつつも、その視線には「恋愛」という言葉を伴う好奇の感情が含まれていた。

 実は俺自身も倉見の事を、(どの様に捉えたら良いのか?)と迷っていたのも事実である。

 性格的な面もあるのだろうが、俺は女子との会話が〈ごく普通〉に出来た。時には「相手が女子である」という意識を〈持たない〉……、いや、〈持てない〉場合もあるのだ。

 さすがに「男子が好む〈エロ話〉」を女子の前では、しないが、「女子でも喰い付きそうな〈エロい話〉」なら、わざと口にしたりもする。自分で言うのも変だが俺は、この辺の〈見極め〉が上手い。だからこそ、「相手が女子」という緊張感を持たずに話が出来るのだろう。

 この点に関しては倉見も同様であった。特に彼女の場合、その〈特異な能力〉が関係する話題が中心だ。だから余計に「相手が女子」という意識が希薄なのも確かである。

 その一方、倉見と話す際に感じる「会話のスムーズさ」には驚かされていた。

 諺に「一を聞いて十を知る」というのがある。この様な状態にまでは至らないが、彼女が話そうとする内容の一端が〈先読み〉出来る場合があるのだ。しかも、その〈読み〉は、ほとんど外れない。

 この件に関して倉見に話した処、「私も入谷君に対して、そう感じているんだ」と言われてしまった。

 少なくとも俺と倉見との間では「会話」という点で「相性が良い」のは間違いないだろう。だが、俺自身、彼女に恋愛感情は持っていない。

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