表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/34

【第20回】 「種」を超えた魂の移動

 ※


「管理人の仕事に関する話が出たついでに……」と、チクノクサは言って、続きとなる言葉を紡ぎ始めた。


「ここでの監視作業中、時には〈珍事〉も発生する。

 死直界しちょくかいは『人間の魂』しか関係しない場所だ。人間以外の魂が、この場に現れる事はない筈なのだが、時折、それが起きてしまう。

 この説明をする前に、少し横道に逸れるが、ある話をしておこう。

 わしは君達を死直界へ案内する際、『君達が、この世界と死直界とを往復するのに二十時間程の時間が掛かる』と言った筈だ」


 その言葉に俺と倉見は黙って頷く。


「往復二十時間……、片道十時間となるが、仮現界かげんかいから死直界へ来る際、純粋に、この時間が必要な訳ではない。

 まず、一般的な話をしよう。

 人間は死ぬ事によって『肉体』から『魂』が離れるのだが、その後、魂は自然と死直界の入口へと向かい始める。その際、仮現界に未練を持たぬ魂は、ものの数分で入口まで来る場合もある半面、何日も掛けて、〈やっと〉辿り着く魂もある。

 ここまでは『各々の魂が関係する事情』だから、儂らが言及する事柄では、ないのだが、死直界の入口が近くなると魂は強制的に『睡眠状態』となり、その入口で『魂の種類』に関するチェックを受ける。端的に言えば、『本当に人間の魂か?』と検査される訳だ。

 魂自体は睡眠状態の為、本来は人間のものでは、ないにも関わらず、『人間の魂です』と自己申告する事は出来ない。これはシステムとして、上手く出来ていると儂は考えている。

 それは、ともかくとして、君達の様な『死んだ人間ではない魂』を過去に、この死直界へ連れて来ているが、その際、仮現界から死直界の中心部まで来るのに、ほぼ例外なく十時間程、掛かったのだ。はっきり言ってしまえば、その理由を儂も知らない。そして、君達の場合も約九時間が必要だった。もちろん、この『時間』とは君達が認識している仮現界での時間となるが……。

 端的に言えば、『死んだ人間ではない魂』が死直界に来る事すら『例外中の例外』なのだが、少なくとも、この件に関しては我々、死直界の管理人が関与しているのも間違いない。

 ここで話を戻すと、人間の魂しか入れない死直界に、動物……、『犬』や『猫』……、『馬』という例もあったが、その魂が死直界に現れるのだ。

 ここでの決まりとして、死直界に入った魂は〈光る岩〉による『魂の分類』を受けなければ、ならない。そして、これらの魂は無事に、その岩を通過してしまう。しかも、岩は緑色を放ち、そのまま真現界へと向かうのだ。『人間以外の魂』が『人間の魂』として生まれ変わった瞬間とも言える。

 実は以前に比べ、極端ではないものの、この様な事例が多くなったのも事実だ。その理由を儂は今回、知る。

 倉見に憑依している際、現在の仮現界を観察したが、その際、『アニマルセラピー』という言葉を何度も聞いた。その意味を正確に理解していない可能性もあるが、人間に良い影響を与える動物達の魂が本来、持てる最大重量を超えた時、魂としての『しゅ』を超える可能性を実感したのだ。これは相当な収穫だったと認識している。

 半面、我々は他の動物に関する魂について、何も知らない為、憶測の域は出ないが、この例とは反対に『人間の魂』から『他の動物の魂』へ移行している可能性もあると痛感した。

 儂は前に『魂は同じ『種』……、具体例を挙げるなら、猫の魂は『猫』としてしか輪廻転生が出来ず、他の種、例えば『犬の魂』には、なれない』と言ったが、『これに関しては例外もある』と付け加えた。その例外が間違いなく、死直界で発生している事も伝えておこう。

 それから、これは余談だが、一度だけ『蛇の魂』が死直界に現れている。これには管理人全員が『ビックリ!』。しかし、岩を通った時、何の反応も示さなかった。つまり、『人間の魂ではない』と判断されたのだ。この時は死直界の入口まで、その魂を『強制送還』したが……。この様な例は過去に一回だけ。しかも、その発生原因はいまだに不明のまま……。どうなって、いたんだか……」

 そう言って、チクノクサは首を横に傾げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ