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【第2回】 倉見智香

 ※


 翌年、俺は山王原さんのうはら高校に入学し、ここで倉見智香くらみ・ちかと同級生になる。

 この時、既に彼女は〈特異な存在〉として、「知らぬ者は、いない状態」であった。

 それは、彼女が中学校三年生の時に起こした〈ある事件〉が要因となっている。


 倉見とは別のクラスだった一人の女子生徒がイジメを受けていた。半面、数々の憶測は流れていたものの、イジメの詳細は伝えられていない。一方、その女子生徒が自殺を考えていたのは確かな様だ。

 ある時、倉見が、この女子生徒を見掛け、そこから発する、いわゆる「オーラ」の異常さに気付いたという。

(彼女、死ぬ気だわ!)と、直感したらしい。直ぐに職員室へと向かい、その話を教師にした。だが、誰も、それに対応しなかったと言われている。

 倉見は、その女子生徒がいるクラスへと向かい、授業中だったにも関わらず、強制的に彼女を教室から連れ出す。その際、女子生徒に対して、「あなたの苦痛を私が和らげてあげる」と、何度も言い放った話は伝わっていた。そして、彼女を倉見の家へと連れて行く。

 これが切っ掛けとなって、それまで隠されていた女子生徒へのイジメが表面化し、結果として、この問題は解決した。

 その一方、思わぬ〈副産物〉が発生する。倉見の持つ〈特異な能力〉が広く知られる様になったのだ。

 本来なら、倉見の行動は「称えられるべき」ものである。だが、それを快く思わない連中がいたのも事実だった。

 イジメを行っていた者達……、これは、その女子生徒が在籍していたクラスメイト全員だったが、「イジメの加害者」というレッテルを貼られ、イジメに対応しなかった中学校に対して、「失格中学校」という烙印が押されたのだ。もちろん、その汚名は教師にも向けられた。

 この様な事態に至った背景として、倉見の祖父である倉見和彦くらみ・かずひこという人の存在が大きい。

 イジメられていた女子生徒を自宅へと連れて来た倉見は、その対応を祖父に、お願いする。町内会の会長でもあった倉見の祖父はイジメの事実を地元警察と共に、法務省の地方法務局へも報告した。地方法務局には人権に関する相談窓口があったからだ。

 更に、その夜、町内会の各役員を招集して、臨時の役員会議まで開いてしまう。もちろん、その議題は「中学校で発生したイジメ」であった。

 このイジメ問題に対して、中学校側が何も対応しない内に「外堀を埋められた」という形で、その話が各所へと拡散して行く。そして、学校は非難の集中砲火を浴びた。

 倉見の祖父が関係した箇所の話は彼女から直接、聞いている。その時、(凄げぇ、お爺さんだな!)と、驚嘆したのは今も鮮明に覚えている程だ。

 一方、この様な事態を作り出した根本要因は、イジメを見抜けなかった中学校側にある。しかし、それを棚に上げ、「暗に」ではあったものの、倉見を「不愉快な生徒」と認識し始めたらしい。それは彼女に関して「イジメられる土壌が整った状態」だと俺は感じた。事実、倉見は、「この後、私は徐々に孤立し始めた」と話している。

 その上、「倉見には何か〈怪しげな能力〉があるらしい」という〈尾鰭おひれ〉まで付くが、彼女にしてみれば、これは〈本当の事〉であった。そこで倉見は、(これは隠しておいた方が良いわ……)と、今まで考えていた事象に関して公然と語り始めたという。

「私には〈意識体〉が憑依していて時々、話し掛けて来るんだ」や、「自分でも、よく解らないけど、〈オーラ〉見たいなものは見える……、正確には感じられるよ」と……。

 これにより、割合としては相当の偏りがあったが、「親・倉見派」と「反・倉見派」とが発生する。当然、「親・倉見派」の方が少数派であったが、スピリチュアルなものに関心を持つ生徒からは「重大な関心を寄せられる存在」となって行く。もちろん、イジメを受けていた女子生徒を救う要因となったのが、「発せられていたオーラの異常さ」だった事も、それに拍車を掛けた。

 ほとんどの教師、生徒から実質的に「無視」される一方、かなり強力な「支持者」をも作り出してしまった彼女は中学校を卒業し、山王原さんのうはら高校へと入学する。

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