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【第13回】 死直界での注意点

 

(倉見と裸で抱き合えたのは役得だったかも知れない……)

 そう考えた一方、俺の中で死直界しちょくかいに対する興味が急速に広がったのも確かだ。

 チクノクサの話が続いていた。

わしは倉見と入谷の〈能力〉……、正確に表現すれば、倉見は儂を死直界へ戻す能力を持っているが、その力が弱い。それを〈増幅〉させる能力を入谷が持っていたのだが、二人が協力してくれれば、死直界へ戻る目処が付いた為、それを依頼した。これに応じてくれた事には感謝している。その『お礼』と言っては何だが、儂が関与する『死直界』を案内しても構わないと考えた。儂も正確に把握している訳ではないが、二人共、『死語の世界』には興味がありそうだと判断したからだ。その認識で構わないな?」

 チクノクサの問いに倉見は間髪を入れず、「はい」と声を出して応じた。

 一方、俺は頭の中で、「『死語の世界』というよりも、人間の『死』に関心があります」と応じる。

 彼……、実体を持たないチクノクサに対して、「彼」という言葉を使う事に若干の抵抗感はあるが、彼は、「『死』と『死直界』とは切っても切れない関係がある。入谷の関心にも儂は応えられるだろう」と告げた。

 同時に俺の考えをチクノクサは倉見にも伝えたらしい。

「やはり、そう答えたのね」と、彼女は俺の顔を見ながら、そう言った。倉見は俺の関心が「祖父の死」にある事を充分に理解しているからだ。

 チクノクサが倉見を介して、その言葉を俺の脳内に流入させる。

「死直界の説明は、現場で行った方が理解し易いだろう。『魂』についても同様だ。よって、今は死直界に入る際の注意点だけを述べておく」

 そう言って、彼は続きを話した。


「本来なら、二人には死直界の入口から少し入った場所まで儂と共に来て貰い、そこで別れるのだが、今回は特別に死直界の中心部へ招待する。

 死直界は死んだ人間の魂が来る場所だ。当然、君達も『魂』という形で死直界に入って貰う。

 肉体は、その入口に『置いてくる』という形になるが、この件に関して心配する必要はない。必ず、元の肉体に魂を戻し、この世界へと帰還させる。

 さて、ここで問題になるのが、『死んだ人間ではない魂』が死直界に入る点だ。

 死直界では人間の魂を『人間の姿』として捉える事が出来る。例外もあるが、多くの場合、『生前の容姿』と、ほぼ同じものだ。よって、君達も『肉体』から離れた『魂』という存在であっても、その姿は今と同じ様に見える。まず、これは覚えておいて貰いたい。

 次に死直界で『座る』という行為は『死んだ人間の魂がする事』と見なされる。つまり、君達には『立ったまま』でいて欲しいのだ。そうしないと、『死んだ人間の魂』として扱われる。もちろん、立ち続けても疲れはしないが、『座るという行為は死直界に於いて、特別な意味を持つ』と強く認識する様に……」


(うわ、これは問題だぞ!)と、俺は心の中で頭をかかえた。疲れていなくても、座れる場所があれば、何の気なしに座ってしまう可能性が捨て切れないからだ。

 同じ事を倉見も考えていたのだろう。その顔には恐怖を伴った困惑の表情が浮かんでいた。


 チクノクサは俺達の心配を余所よそに話を続けている。


「君達は『生きたまま』死直界に行く関係もあり、死直界の管理人達とは会話が可能だ。

 一方、死直界に於いて、死者の魂は『睡眠状態』となっている……、正確に言えば、〈ある時点〉で覚醒するのだが、その説明は後でしよう。

 可能性として、『ゼロ』ではない為、一応、話しておくが、君達が死直界にいる際、知り合い等が亡くなり、ここへ現れる可能性もある。先程も言った通り、死直界では、その魂が『人間の姿』として認識出来る為、その見分けが付くのだ。

 だが、眠った状態となっている死者の魂に君達の姿は見えない。よって、知り合い等が死直界に現れても、君達は『何も出来ない』のも理解しておいて欲しい。

 取り敢えず、注意点としては、こんな処だ」


 この説明を受け、今日の集まりは実質的に終了した。

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