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図らずも山を焼こうとしたことで町には戻って来られないようでモルドリア女侯爵の屋敷でおとなしくしていた。

 

そのおかげで町には平穏が戻ってユーリーンは巡回をして、隊長はアイスクリームを食べて、ヴィヴィは口を乱暴に拭くということが戻った。

 

そんなときに第三特務部隊は慰安と山狩りを未然に防いだことで王家主催のパーティへの招待があった。

 

「パーティ?」

 

「はい、隊長。わたくしたちの功績を称えて招待してくださったのです」

 

問題を起こしそうな人物に対して内偵を進め、重大な犯罪を未然に防いだということを高く評価された。

 

第三特務部隊が不在の間は別の隊から応援が来るようになっている。

 

「僕は留守番してるよ。みんな楽しんで来て」

 

「隊長こそ絶対出席ですよ。留守番はできませんので我慢しましょうね」

 

「ヴィヴィ、子ども扱いするな」

 

「隊長、お菓子の買い出しに行きませんか?」

 

「ユーリーンとデートだね、もちろん行くよ」

 

隊長がいると旅の準備が捗らないから誰かが連れ出すことにしていた。

 

だいたいがユーリーンだが、これが思いのほか重要なことだ。

 

前に拗ねる隊長をそのままに旅の準備を進めたときに食料すべてがお菓子に差し替えられていたことがあった。

 

だからご機嫌取りは何よりも重要任務になった。

 

「溶けちゃうのでアイスクリームは旅先で食べましょうね」

 

「うん、ユーリーンの言う通りにするよ」

 

「なら日持ちのする固焼きをまず買いに行きましょうか」

 

隊長が満足するまで買っては駐屯所に戻るというのを繰り返して、旅の日までご機嫌を良くしておく。

 

恙なく準備が終わり、不在の間の代わりの隊との引継ぎも終わり、本当にあとは出発するだけとなったときに問題は起きた。

 

「・・・三十八度二分ですね」

 

「うぅ喉が痛い」

 

「完全に風邪ですね」

 

「冷凍庫に入れておけばアイスクリームは溶けないんですから全部食べなくても良かったんですよ」

 

「それを全部食べるから体を冷やして風邪を引くんです」

 

機嫌が良いから大丈夫だろうと目を離した隙に冷凍庫のアイスクリームを全部食べていた。

 

それを見つけたときのヴィヴィは背中に般若を背負っており、背筋が凍る思いをした。

 

「玉子酒作った」

 

「これを飲んで明日には治してくださいね」

 

「ヴィヴィが添い寝してくれたら治るよ」

 

「お断りします」

 

起きているのも辛いのか玉子酒を飲み干すと眠った。

 

ヴィヴィは添い寝を断ったが、きっと一晩中起きて看病するのは目に見えていた。

 

それを指摘しても否定するだけと知っているからユーリーンとフィアットは見て見ぬふりをする。

 

最初の移動のときの馬車でヴィヴィは仮眠を取るだろうし、代わりに指揮する者が必要になる。

 

隊長も移動に耐えられるだけの体力を回復させるだけで指揮となると負担になる。

 

「私たちは先に部屋で休むわ。隊長の風邪をもらいたくないし」

 

「そうですね。タオルを変えたら眠ります」

 

隊長も明日と言われたなら意地でも復活してくるだろう。

 

何も言わなくても分かるくらいには一緒に仕事をしてきた。

 

そして朝になると隊長はいつも通りに復活していた。

 

ヴィヴィも目の下に隈を作っているが問題はなさそうだった。

 

「隊長、おはようございます」

 

「おはよう、ユーリーン」

 

「よく眠れましたか?」

 

「うん、何かね、温かい柔らかいものに包まれる夢を見てね。起きたら爽快だったんだよ」

 

「それは良かったですね」

 

馬車に荷物を積み込むのを確認して出発する。

 

お目付け役にフィアットと隊長を同じ馬車にして、ヴィヴィとユーリーンが同じ馬車に乗り込んだ。

 

フィアットは公爵家であるから一通りの貴族についての知識はある。

 

今回、パーティに呼ばれている貴族関係の知識をずっと語るのだろう。

 

「ヴィヴィ、お疲れさま」

 

「隊長の熱がなかなか下がらないので不安でしたが何とかなりましたね」

 

「まずは一安心というところだね」

 

「ユーリーン」

 

「いいよ。行程は頭に入っているから」

 

「ではお願いします」

 

言うが早いかでヴィヴィは眠りに落ちた。

 

代わりに隊長は、この行程で眠らせてもらえないだろう。

 

フィアットは教えるということになると、おそろしくスパルタになる。

 

王都に到着したころには主要貴族の財政状況まで暗唱できるようになっているだろう。

 

「・・・王都から戻るたびに忘れるのよね」

 

王都から遠ざかるにつれて一つずつ忘れていく。

 

町に帰ったころには宰相の名前すら忘れていて驚いた。

 

ただ、王都にいる間だけは絶対に忘れないから、それも驚きだった。

 

「あっ、フィアットにおやつを預けるの忘れた」

 

次の休憩地まで隊長はおやつなしでフィアットの講義に耐えなければならない。

 

それは拷問に近いものがあるだろう。

 

片時も甘いものを手放したことがない隊長のことだから禁断症状が出るはずだった。


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