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「どれくらいの罪になるでしょうね」

 

「鉱山懲役で二十年ってとこ?」

 

「この近くだとモルドリア女侯爵のところ?」

 

「“魅力(チャーム)”で刑期を短くするとか?」

 

「あり得ない話じゃないけど、それをされても責任者のモルドリア女侯爵が決めたら誰も覆せないからね」

 

犯罪者には刑期分の重労働を科すことが一般的だ。

 

モルドリア女侯爵のところは上質な鉱山が手つかずのまま広がっているから主に長期刑期者が送られてくる。

 

働き方が良ければモルドリア女侯爵の采配で刑期が短くなることはあるが、労働者を手放したくない思惑で短くなって解放された者は少ない。

 

「あと決めるのは量刑省だものね」

 

「報告書作って終わりだね」

 

「ものすごい大それたことしてくれる人だったからね」

 

「これで町も静かになるでしょ」

 

アルベンスに話を持ち掛けられた者たちは前科もなかったことと“スペル”による思考力低下が認められて減刑された。

 

注意と罰金を支払うことで無罪放免となり、多少は白い目で見られるが主犯のアルベンスに責任があるとして元通りになることを選んだ。

 

誰もがよそ者で問題や騒ぎばかりを起こしているアルベンスのせいとする方が解決としては簡単だからだ。

 

「精神系“スペル”持ちが犯罪を起こせば周りがどんなことをしても“スペル”持ちに責任が出てくるから仕方ないと言えば仕方ないか」

 

「だから“スペル”持ちには貴族が多い」

 

「管理できるからね」

 

アルベンスのように“スペル”を持ちながら平民というのが一番厄介だった。

 

貴族ならば国からの命令ということができるが、平民に命令をすれば反感を買う。

 

そこまでアルベンスは考えてはいないだろうが、自分が引き起こすことの重大性を何も理解していなかった。

 

「そう言えば隊長とヴィヴィは?」

 

「総裁に呼ばれた」

 

「総裁と隊長は同期だったっけ?」

 

「うん、それと幼馴染」

 

「総裁も謎な人だよね。実力社会だけど伯爵家の身分で総裁まで登り詰めるんだもん」

 

軍が貴族社会とのつながりを排除して権力の影響を受けないと言っても上下関係はある。

 

上に立つ者は相応の身分を求めてしまうのが人だ。

 

そんななかで伯爵家でありながら総裁になるには並大抵の努力では叶えられないが叶えたのが総裁だ。

 

「それを言うなら隊長もヴィヴィも謎だよね」

 

「隊長は仕方ないと思うけどね」

 

「油売っていないで仕事してくださいね」

 

ヴィヴィの代わりに任務内容の書類を取りに行っていたマグドラが帰って来た。

 

「はいはい」

 

「それで、更迭前のアルベンスには会えた?」

 

「えぇもちろん」

 

“スペル”の詳細も手に入ったということだろう。

 

「“破壊(リージョン)”は予想していた通り精神系の“スペル”でした。効果は人間関係を壊すこと。即効性があるのではなく時間をかけて気づかれないように壊していく。言うなれば自然消滅のようにも見えるでしょう」

 

「ハーレム作るより別れさせ屋に転職した方が儲かるかも?」

 

「意識して使っているのではなくて感情の起伏によって発動する“スペル”でしたから自身のハーレム解散も“破壊(リージョン)”が少なからず影響していたと思われます」

 

「自分で制御できないのに“スペル”を知っているって不思議だけどフィアットみたいな“スペル”で見てもらったとか?」

 

「さすがにそこまでは分からないですが」

 

アルベンスの持つ“スペル”は離れてさえいれば効果が切れていくもののようだから一安心だった。

 

時間が経てば廃人になるという事態は避けることができそうだった。

 

「それにしても大変な人だったわね」

 

「これで町も落ち着くと良いのですけどね」

 

“スペル”持ちによる山狩り事件は終結を迎えた。

 

そしてハーレムは解散したことで貢ぐ女もいなくなった。

 

だけど平穏は長くは続かなかった。

 

 

※※※

 

 

「ヴィヴィ、ごめん。もう一回お願い」

 

「何度読んでも同じですわ。モルドリア女侯爵のところで刑期三十五年だったアルベンスが釈放されたということです」

 

「何で釈放?てか三十五年って長くない?」

 

「それについては多くの女性をその気にさせて貢がせていたことが詐欺罪に問われたからです」

 

確かに女たちに支払わせて自分は稼いでもいなかった。

 

正気に返った女たちが軍に申告したことと数が多かったことで詐欺罪に発展した。

 

「その延びた刑期がどうして一瞬で無くなったのよ」

 

「モルドリア女侯爵の恩赦」

 

「“魅力(チャーム)”を遺憾なく発揮したということね」

 

「周りは凶悪な犯罪者ばかりのところに聞き分けのいい、しかも“魅力(チャーム)”を使われて落ちない女はいないというところね。モルドリア女侯爵も女だったということね」

 

山狩りをしたアルベンスをそのまま無罪放免とばかりに外に出すのは外聞が悪いと思ったのか、館勤めに変更になっていた。

 

それも給与が発生しているから、ほとぼりが冷めたら表に出てくるだろう。

 

「転んでもタダでは起きないわね」

 

「こっちを出るときは放心状態だったのに」

 

「もとから楽天家だったのでしょう」

 

移動の最中にきっと火は消えたから問題ないと考えて簡潔させたのだろう。

 

そしてモルドリア女侯爵から恩赦をもらったことで、ますます問題ないと思ったのは想像に難くない。

 

一歩間違えば永久犯にもなりかねないことをしているのに楽天的に考えられる神経に三人は溜め息を吐いた。


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