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森で怪我をして動けなくなっている人を見ても横を素通りするというのは割と有名な話で、ドワーフには多種族を助けるという概念が初めからない。

 

そんなドワーフが人の側にいたというところが不思議だった。

 

「ドワーフってことは住んでるところも分からないから手の出しようがないと思うけどね」

 

「どうやって見つけるつもりなんだろうね」

 

「山狩りしたりして」

 

「それはないでしょう」

 

そんな冗談が現実になるとは誰も思っていなかった。

 

だが正しいと思い込んだら突き進んでしまうのがアルベンスだった。

 

ユーリーンに殴られて、頼みを断られたことでどうにかしようとしたことで間違ってしまった。

 

 

※※※

 

 

「・・・まさか町中の人に聞いて回るとは思わなかったわ」

 

「中には境遇に共感して一緒に探す人まで出てるし」

 

「“魅力(チャーム)”の威力おそるべし」

 

「そのせいで、ロロルがドワーフだって気付いちゃったしね」

 

十年前に町にいたのなら誰かが覚えている可能性もあった。

 

町から出ていく人は少ないから簡単に見つかる。

 

「十年前のロロルを知っている人まで巻き込んで、まさか、山狩りをするとは思わないよね」

 

「おかげで疲れたし」

 

未然に防げたが、町の男たちを引き連れてアルベンスは森に火を放とうとした。

 

ロロルがいるかも分からない森に、ロロルを助けるために松明を持って入った。

 

それだけなら森の動物を脅かすくらいで終わるが、奥に進むほど暗くなり夜目が聞かなくなった。

 

森の木に火を点けた。

 

「あれは本当に驚いたわ」

 

「近くに川があって助かったよね」

 

急いで水を汲んで火を消した。

 

もちろん第三特務部隊に所属するものは総出で消火活動に従事した。

 

森が焼け落ちれば町の人の生活も立ち行かなくなる。

 

これは見過ごせない状況にまでなった。

 

「あれに関わった人は全員取り調べを受けてるけど、どうしてこんなことをしようと思ったのか分からないって言うばかりは困るね」

 

「“魅力(チャーム)”のせいで思考がアルベンスに引き摺られていたというのは分かるけどね」

 

「あれも疲れたね」

 

フィアットはとにかく逮捕した町の人に片っ端から“鑑定(ディサーム)”と“解除(ディサーム)”を使った。

 

頭痛や吐き気に悩まされる人が続出して、ようやく取り調べを開始できた。

 

アルベンスももちろん取り調べを受けているが、放心状態で話ができる状況ではなかった。

 

「あそこで本人登場っていうのも驚きだけどね」

 

「まさかドワーフをこの目で見ることができるとは思わなかったね」

 

「それに、あのつるぺた具合は何とも」

 

アルベンスの好みは分かりやすく胸が大きければ視線がそこに向く。

 

誘惑の仕方も簡単で良かった。

 

なのにロロルは年齢は百歳と、人の誰よりも年上だが、体形は幼児で性欲の対象にするには罪悪感が生じるものだった。

 

「それでもあれはすごかった」

 

 

※※※

 

 

森の延焼を食い止めて、山狩りをしようとしていた者を逮捕していたときだった。

 

相変わらずアルベンスはロロルを助けるためだと叫んでいたが、森を焼くという行為はドワーフを怒らせる結果になった。

 

「助けるために森を焼いたんですかぁ?」

 

「ロロル!」

 

「それはぁ、ちょっと許せないですぅ」

 

「何を言うんだ!無理矢理結婚させられたくないから逃げて来たんだろ?」

 

ちょっと考え込む姿をしてロロルはアルベンスに近づいた。

 

どれだけ小さい体をしていてもドワーフは人ではないということを忘れてはいけなかった。

 

「えいっ」

 

「ぐはっ」

 

指先ひとつでアルベンスの体をついた。

 

軽く触れただけなのに後ろに飛び、木に激突した。

 

「ロロルは結婚前に外の世界を見たいから群れを出ただけですぅ」

 

「それは結婚したくないってことだろ?」

 

「結婚したくないって言ってないですぅ。ロロルはダーリンの可愛いお嫁さんになるんですからぁ」

 

「無理矢理って」

 

「そうですよぉ。外に出る前に結婚させられそうになったから飛び出したんですぅ」

 

ロロルはドワーフだから“スペル”はほとんど効かない。

 

つまりは望んで側にいて満足したから離れた。

 

結末はそんなところだった。

 

「ロロル?嘘だろ?いつも側にいたじゃないか」

 

「群れでは人はいないから見てただけぇ。ロロルはこの間、百歳になって大人になったからダーリンに嫁ぐのですぅ」

 

「ロロル?」

 

「あと森を焼いたことで、森は怒っていますぅ。アルベンスは、やっちゃいけないことをやったのですぅ。そんな人とは一緒にいられないのでぇさよならですぅ」

 

「ロロル!ロロル!君のためなんだ!分かってくれ!」

 

どれだけ叫んでもロロルは振り返ることなく森の奥に消えた。

 

ロロルのためと思ってした山狩りがどれほどの重罪になるかは分からないわけではなかった。

 

焼けた木を見てアルベンスは叫んで気を失った。

 

それからずっと放心状態になっていた。


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