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「“辞典(グロサリー)”のなかに“魅力(チャーム)”の効果はありましたのでお伝えできると思います。他者と比較して優れていると錯覚させる“スペル”となります。本当に秀でたわけではありませんので、気づかれることはあります」


「他者と比較ってことは、より優れている人に出会えば“魅力(チャーム)”は切れるってこと?」


魅力(チャーム)”の難しいところは即効性の低いところだ。


最初にかかれば、あとは時間をかけて“魅力(チャーム)”をかけなければ簡単に切れてしまう。


逆に長期間“魅力(チャーム)”にかかれば、簡単には切れない。


一か月顔を合わせていなくてもアルベンスから離れていかなかったのが、その証拠だ。


「そうね。それに相対評価だから優れているのだろうか、と疑問を持った時点で切れるわ」


「ユーリーンがかかったのも良い人という先入観があったから」


「そう言うことになるわね。アルベンスはそう思わせる行動を意図的にしているというのが正しいかもしれないけれど」


見ず知らずの人のために入町税を支払ったというところで、ユーリーンにはアルベンスを他の人より優れていると思い込むきっかけがあった。


「気になるのは、もう一つの“スペル”の“破壊(リージョン)”ですね。これが精神系となると危険かもしれません」


「危険?」


「もし、緩やかに精神を破壊していくようなものですと気づかないうちに廃人になる可能性があるからです」


“スペル”を持つ者は人口の二パーセントだが、使い方を学んだことがある者は限られている。


“スペル”持ちでも同じ“スペル”を持つ者に会う可能性は極端に低く、使い方を教えるとなると可能性はゼロに等しかった。


「フィアットの“解除(ディサーム)”が間に合わなければ最悪の事態になります」


「マグドラ、接触して“スペル”の詳細を手に入れられる?」


「接触すれば可能でしょう。ただし別のことに意識を向けさせておくのが無難かと思います」


「ヴィヴィ」


「はい、至急ロロルという女性について身分問わずに調査します。分かり次第そちらに誘導しマグドラが接触を図るというのが今のところ安全でしょう。顔を知られているユーリーンは待機。セルラインとヒナゲシも同様というところですね」


アルベンスに顔を知られていないのは、隊長とヴィヴィとフィアットとマグドラだけだ。


それもこれからのことを考えると最低限の接触に留めたかった。


「“スペル”の効果を探ることが最重要。危険だと判断した場合は即刻中止」


「「「「御意のままに」」」」


アルベンスにロロルを探し出す方法はないから無駄に時間だけが過ぎていく。


このまま放置すれば町の女への被害が大きくなりすぎる。


名前だけで探す方法はいくつかあるが、今回は人海戦術を使った。


セルラインに傾倒している部下がいたように、彼女たちにもいる。


駐屯所には仮眠室として個室を与えられている。


好きなように家具を配置することができるから書庫のようにしている場合もある。


「ここにある全貴族系譜から結婚適齢期のロロルという女性を探し出すこと」


「かしこまりました。フィアット様の命を必ず遂行してみせます」


「よろしく」


良くも悪くもフィアットは公爵家令嬢で人を使うことに慣れていた。


そして人に仕えさせることにも長けていた。


「ヴィヴィ副隊長、過去十年間の入町記録が準備できました」


「ロロルという女性を探しているの。名前以外の手がかりが見つかったら報告をもらえるかしら?」


「かしこまりました」


副隊長という立場から命令することも重要管理書類も簡単に閲覧することができる。


そしてヴィヴィが望めば、どんな書類も見ることが叶った。


あとは時間が解決するのをひたすらに待つだけだ。


「・・・ロロルという女性は、やはり貴族にはいませんでした」


「過去十年の入町記録からは、おかしなことがありました」


「おかしなこと?」


「はい、カナリアが入町したときにロロルという女性はいました。そして十年前にも入町記録がありました。それも同じ筆跡で同じ年齢で書かれた記録が」


年齢を誤魔化す女もいるし、十年前に入町したからといって、またしてはいけないという決まりもない。


それでもヴィヴィはおかしいと判断をした。


「今回は種族の欄が空欄でしたが、十年前にはドワーフと書かれています」


「ドワーフ!?」


「あの森にいる人里には出てこないドワーフが何でまた町に」


「ドワーフは人と同じ文字を使いますが名前だけは古語で書きます。おそらく十年前と同じドワーフで間違いないでしょう」


これで貴族系譜に載っていないことに説明がつき、結婚をするというのも納得がいった。


さすがに多種族のことに関わることはできない。


黙っていれば、アルベンスはロロルに辿り着くことはできない。


もし、種族を知っているのならユーリーンに、人に説得させようとするはずがなかった。


ドワーフの人への無関心さは有名な話だった。


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