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「これで俺と彼女の分を処理してくれない?残りはいらないからさ」


「・・・今度は騒ぐなよ」


多少身分が怪しくても金を積めば通してくれるし面倒な手続きも省略できる。


これが国家近くの町となると通用しないが辺境の地ならば多少の融通は利いた。


「悪かったな」


アルベンスは片手を上げて門番に挨拶をすると町へと入った。


唖然としている女はいきなり支払っていったアルベンスを黙って見送り姿が見えなくなってから正気に戻った。


文句を言おうにも門番に言うのはお角違いだから急いで消えたアルベンスを探した。


女が見つけたときには何軒もの店を回ったあとだった。


「やっと見つけたわ」


「へっ?あぁ門番と喧嘩していた女の子」


「女の子って年じゃないわよ。ユーリーン=ドルタ第三尉よ」


「本当に軍人だったんだな。すごいな」


壊れて無いと叫んでいた身分証も新しい物を発行してもらったのだろう。


金メッキが輝いて眩しい軍章がユーリーンの手にはあった。


「なっ!」


「悪いなとは思ったんだけどさ。後ろに列が出来てたから割り込ませてもらったよ」


「そっそれは感情的になってた私が悪いっていうか、貴方にお金を支払わせちゃったのが悪いというか、お礼というか」


「お礼とか良いって。困っている女を見かけたら助けるのが信条だからな」


その困っているのを助けるのが下心ありきだから始末に負えない。


道端で老婆が困っていても無視をするが美女が困っていれば率先して助ける。


アルベンスという男はとことんそういう男だ。


「軍人でもないのにすごいのね」


「すごくないって、俺は“ダブルスペル”だからそれくらいしないといけないだろ?」


「うっそ!ちょっと待ってよ。見た感じ貴族でもないのに“ダブルスペル”!?あり得ない、あり得ない」


「でも持ってるものは仕方ないしな」


アルベンスは簡単に答えたが、“スペル”という特殊能力は生まれつきのもので人口の二パーセントしか持っていない。


ほとんどが一つだけで、二つ以上持っているものはさらに少ない。


「それともどこかの貴族のお坊ちゃんとか?」


「いや、平民だよ」


「うっそ!ますますあり得ないわ」


もし本当に“ダブルスペル”なら国に申請すれば一代限りの爵位と領地を与えられる。


その“スペル”を国のために役立てるという条件は付くが遊んで暮らすことも出来る。


もし女なら高位貴族へ嫁ぐことも可能だ。


「で、なんの“スペル”なの?」


「“破壊(リージョン)”と“魅力(チャーム)”だけど、攻撃性が無いから国には役に立たないよ」


「十分でしょ?あっ!もしかして私にも“魅力(チャーム)”を使ってたり?」


「勝手に人に使わないよ。俺のことをちゃんと見て欲しいからさ」


「“ダブルスペル”なのに傲慢でもないし、謙虚ねぇ。あの人にも見習わせたいわ」


ユーリーンはしっかりアルベンスの前の席に座り料理を注文していた。


いかにも旅人風情のアルベンスと駐屯軍のユーリーンの仲が気になって店中が聞き耳を立てていた。


それにユーリーンは気づいていて聞こえるようにわざと大きな声で話している。


対してアルベンスは何も気にしていなかった。


「あの人?」


「私の上司よ。別に傲慢でもないんだけどね。何か“スペル”持ちって感じなのよね」


「へぇ」


「まぁ虐げられてるわけじゃないから良いけどさ」


「ユーリーン、良かったらもっと話を聞くよ?俺はこの町のことをもっと知りたいしさ」


アルベンスはユーリーンの言う上司が男であると直感で判断をして誘うことにした。


壊すのは何も恋人関係だけではない。


上司と部下という関係もアルベンスにとっては十分な理由になった。


「聞いて欲しいのは山々なんだけど、夜勤前なのよ。しばらく滞在するならまた会いましょう。これは助けてくれたお礼よ。ありがとう」


「当然のことをしただけだよ」


「皆が貴方みたいな人なら良いのにね」


ユーリーンは金貨を一枚、机に置いて店を後にした。


お礼という言葉で店の中の男たちは色めきだった。


駐屯軍の軍人のユーリーンを助けるなどという状況はどう想像しても出てこないからだ。


「おい、兄ちゃん」


「何かな?」


「ドルタ第三尉と何があったんだ?」


「詳しく聞かせてもらおうか」


「何って、関所で困っているのを助けただけで、それ以上のことはないよ」


その時の状況を知っている者はいるだろうが、今夜解放されるためには詳しく話す以外に方法はないようだった。


アルベンスは溜め息をついて門番との出来事を細かく話すことになった。


それで納得していないのは分かるが事実なのだから仕方ない。


「だけどドルタ第三尉は簡単に男と一緒に飯食ったりしないぜ」


「あぁいつもは軍部の食堂で食べるからな」


「お前、本当に“スペル”を使ってないんだろうな?」


「使ってないよ。使っていたら今も一緒にいるはずだろ?」


アルベンスの“魅力(チャーム)”が効いていたらユーリーンはそのまま一緒に酒でも飲みに行っていたことだろう。


だが、好印象を持っていたから完全に効いていないという感じでもなかった。



「“ダブルスペル”持ちって感じ」

↓変更しました ユーリーンセリフ

「“スペル”持ちって感じ」

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