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アルベンスの所在をカナリアに伝えるかどうかの判断に迷っているうちに一週間が過ぎていった。

 

何をするというわけでもなく町を歩き可愛い子がいれば声をかけて一夜を楽しむ。

 

噂は広まっているが容姿まで正確に伝わっているわけではないから“魅力(チャーム)”にかかってアルベンスに尽くすという女も少なくない。

 

まだカナリアから手紙の返事や送金もないことから日々の生活は女たちにかかっていた。

 

「さて、どうしましょうか」

 

「毎日のようにカナリアの執事だというセルバドスが進捗を確認しに来てるしね」

 

「セルラインもそろそろ到着したころだろうけど、時間はかかるから待っている方が危険だね」

 

「人探しならちょうど良い時間だね。一週間って」

 

今アルベンスは甘味処の看板娘のニルナの居候をしている。

 

と言っても昼間は寝て、夜はニルナと遊ぶという生活だ。

 

ここにカナリアが登場すれば浮気現場を押さえられた亭主というような図ができあがる。

 

「でもさ、修羅場にならない?」

 

「そこが問題よね。正直に貴女の探し人は別の女のところにいます。なんて言えないわ」

 

「アルベンスに直接言ってもダメかな?」

 

「どうだろ?」

 

どう報告するか悩んでいるうちに一日一回のセルバドスの進捗確認がやってきた。

 

こうなれば同じ町の中で偶然出会うよりセルバドスに任せようと考えがまとまった。

 

仕えている主人の扱い方くらいは心得ているだろうという丸投げだ。

 

いつものように応接室に入ると、背筋を伸ばし静止画のように座っているセルバドスと相対した。

 

「カナリア様のお探しの方は今はニルナという女性の家に住んでいます」

 

「見つけていただきありがとうございます。これで奥様の心も休まることでございましょう」

 

「いえ、事件に巻き込まれる前に見つけることができ安堵しております」

 

「奥様に至急報告をいたしますので失礼いたします」

 

貸別荘の方にセルバドスは馬車を走らせた。

 

いくら貴族でも使用人が馬車を使うのは主人からの頼まれ事で荷物があるときくらいだ。

 

移動だけで使うことはまずない。

 

その点でもフィアットの持つ貴族の常識からは外れていた。

 

「これで無事に終わると思う?」

 

「まだまだ終わらないと思うけど」

 

その予想は当たっており、その日の晩に結果が出た。

 

セルバドスから話を聞いたカナリアが一人でニルナの家に訪問した。

 

完全な浮気現場だったが、そこは“魅力(チャーム)”がかかった者同士でアルベンスの口車に乗せられて事なきを得てしまった。

 

ちょっとした騒動はあったがアルベンスは貸別荘へと根城を変えて追いかけて来た女たちと会えなかった時間を埋め合わせするかのように出て来なかった。

 

巡回ついでに監視をするユーリーンは拍子抜けをしていた。

 

「まったく別荘から出て来ないけど」

 

「このままセルラインが帰って来るまで籠っていてくれたら楽だね」

 

「それはちょっと不健全じゃない?だってもう一か月以上出てきてないよ」

 

「ある国の王は日替わりで後宮を渡り歩いて・・・」

 

「分かったから」

 

このままカナリアが町に連れて帰ってくれることを期待したが、そうはならずにカナリアは町に居座った。

 

もう一つの問題は町の仕立て屋が伯爵家を相手にしたことがなかったから、店で取り扱う最高級の布がカナリアの逆鱗に触れたということだった。

 

駐屯所に最初に現れたあとに行った仕立て屋は町の中では最高の店だが伯爵家を相手にするには役者不足だった。

 

災難としか言えないが流石に十着以上の服を完成後に要らないというのは店には大赤字だ。

 

平民が買えるような代物ではないから売ることもできない。

 

完全な手詰まりだった。

 

アルベンス抜きでハーレムの女たちに接触をして説得をしようと考えていたが外に出るのはセルバドスだけで他は姿すら見ることがなかった。

 

「話は変わるけど、ヒナゲシはどうなったの?」

 

「帰るって連絡をしてから遅くない?」

 

「どこかでアルベンスにあってハーレムに加わってたりして」

 

「ないない。ヒナゲシだよ。男嫌いなヒナゲシだよ」

 

「でも“魅力(チャーム)”にかかってたら?」

 

冗談で言ったことが本当かも知れないと誰もが思ったときにヒナゲシが部屋に入って来た。

 

姿を見て安堵したのも束の間でヒナゲシの様子がおかしかった。

 

「ヒナゲシ?おかえりなさい」

 

「ただいま戻ったでございまする。隊長には申し訳ないが運命の男に出会った故、これにて暇を頂戴仕りたく候」


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