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ヴィヴィとフィアットがカナリアとの面談が終わったことに安堵しているころに、隊長とユーリーンは食べ歩きを楽しんでいた。

 

隊長の左手とユーリーンの右手は繋がれており、ユーリーンの左手には買い求めるだけ求めたお菓子の袋が握られている。

 

隊長の右手にはリンゴに飴を塗ったお菓子が握られていた。

 

「隊長」

 

「なぁに?」

 

「リンゴあめは、リンゴと飴を一緒に食べるものだと思いますよ」

 

「飴がなくなったリンゴが美味しいんだよ」

 

そういうものだろうかと深く追及することをやめて巡回を続ける。

 

「あっ!隊長さん、こっちこっち」

 

「うん?あっ!」

 

「走らない!ちゃんと行きますから。りんご落としますよ」

 

「りんごじゃないよ。りんごあめだよ」

 

りんごの周りの飴がきれいに舐めとられて、もとは、りんごあめだったとは誰も信じないだろう。

 

隊長を呼んだのは馴染みのアイスクリーム屋の店員だった。

 

「新作があるんですよ。今度の配達にどうです?」

 

「新作!?」

 

「はいな。アプリコットとマンゴーの果汁たっぷりのアイスクリームですよ」

 

「それも配達してね!」

 

冷凍庫がいっぱいになることにヴィヴィが怒るだろうが、隊長を止められる自信がなかった。

 

それに目が輝いている隊長に指摘する勇気もなかった。

 

「今日は良い日だね」

 

「そうですね」

 

「そうだ!ヴィヴィとフィアットにお土産を買って行こうよ」

 

「ヴィヴィは和風堂の餅菓子ですね。フィアットは米菓子ですね」

 

この町には何故か遥か東の島国でしか食べられないお菓子が売っている。

 

それ欲しさに多くの旅行者が足を止めて買っていく。

 

作っているのは、その国出身の女で噂を聞きつけた王族が側室にするから菓子を作れと命令して殴られたとか殴られていないとかだ。

 

「それにしても、どうして駐屯所に来たんだろうね」

 

「隊長、早く食べないと溶けますよ」

 

「ん」

 

パイにアイスクリームを挟んでもらいご機嫌にもう一つの新作、メロンクリームアイスクリームを食べていた。

 

飴だけなくなったりんごはユーリーンが代わりに持っている。

 

完全に保護者の状態だった。

 

「食べたよ」

 

「今日はアイスクリームは終わりですよ」

 

「えっ?」

 

「その代わりに杏仁プリンを買ったので食べましょう」

 

「ユーリーン!大好きだよ」

 

手間がかかるため数が少ないのと、日替わりで売っている店が変わるから常に買うのは難しいお菓子だった。

 

偶然に立ち寄ったところで売っていたから、こっそりと買っておいた。

 

「そろそろ戻りましょうか」

 

「もう?」

 

「帰って食べないと夜ご飯が食べられなくなりますよ」

 

「そうなったらヴィヴィに怒られるから帰ろう。早く帰ろう」

 

この小さな体のどこに入るのか不思議だが隊長はいつも何かを食べている。

 

成長期だから良いんだと訳のわからない言い訳を常々している。

 

「ヴィヴィとフィアットがきっと話を聞いているよね」

 

「だと良いですが」

 

アルベンスについての動きを知られているとは思わないがカナリアが駐屯所に来たことについては嫌な予感がしていた。

 

平民の常識と貴族の常識は相反するときがある。

 

門を守る軍人が心なしか疲れている表情をしているのを横目にユーリーンはまた町に繰り出そうとする隊長を引き摺った。

 

「隊長、しっかり歩いてください」

 

「やだ。釣鐘パンを買い忘れた」

 

「パンはもう売り切れていますよ。また今度の巡回のときに行きましょうね」

 

大人しく引き摺られている隊長と買い漁った甘味をユーリーンは運ぶ。

 

部屋の中には疲れてソファで休んでいるヴィヴィとフィアットの姿があった。

 

フィアットは珍しくないが規律を重んじるヴィヴィまでとなると珍しかった。

 

「何があったの?」

 

「ユーリーン、すごい人だった。貴族って怖い」

 

「杏仁プリン買って来たから休憩する?」

 

緩慢な動作でスプーンを握ると落とさないように掬い、控えめな甘さが特徴のプリンを食べる。

 

主張しすぎない甘さに癒されながらヴィヴィとフィアットは事の顛末を話し出した。

 

「・・・とにかくアルベンスがどれだけ素晴らしい男なのかを力説して一刻も早く見つけ出して欲しいということだった」

 

「貴族令嬢というのは本当に何もしないのだと再認識することができました」

 

「いや、フィアットがそこで頷くのはおかしいって」

 

「分かるのは軍の動きを知られているわけではないということ。人探しにしろ何にしろ、人がするのが当たり前ということ。この二つを嫌というほど知った一日だった」

 

二人の疲れ具合を不憫に思ったのか隊長が楽しみにしていたクッキーをそっと二人の前に差し出した。

 

背伸びをしてヴィヴィとフィアットの頭を撫でて労わる隊長の姿に和んだ。


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