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二日酔いの薬のお陰で頭痛が引いたアルベンスはベネガに食事の用意を頼む。

 

「胃に優しいものを用意してくれ」

 

「店は夜だけだと申しましたでしょう。表通りに行けば店がございます。昨晩の片づけもございますから、お出になられてください」

 

「出前を頼め。俺は二日酔いで辛いんだ」

 

「うちは茶店じゃございません。お好きにしておくんなさい」

 

甲斐甲斐しく世話を焼くつもりは毛頭ない。

 

昨晩の様子をセルラインの代わりに第三特務隊に報告しなければいけない。

 

二階の部屋で休んでいる踊り子たちは鍵をかけて入れないようにして思い思いに過ごしていた。

 

店を出てアルベンスが付いて来ていないことを確かめてから駐屯所へ向かった。

 

門ではユーリーンがすでに待っている。

 

「お待たせしました、ドルタ第三尉」

 

「わざわざ報告させて悪いわね」

 

「とんでもありませんわ」

 

「アルベンスに見つかると大変だから手短にいきましょう」

 

「はい」

 

廊下をすれ違う軍人の中にはベネガの胸に視線を向けて咳払いをしてかけていく。

 

そういう反応はセルラインに対して見慣れているからユーリーンは溜め息だけを吐いておく。

 

「隊長、お連れしました」

 

「うん、早速聞こうか」

 

「まず、アルベンス氏は泊まっていた宿を追い出されたようです」

 

「やっぱり」

 

アルベンスらしき男が宿の看板娘を泣かして女将に追い出されたという町の噂は手にしていた。

 

「仕方なく店の一階を宿として解放しましたが何せ注文が多い方で困っていますわ」

 

「具体的には?」

 

「そうですわね。食事は豪勢にしろ。出前を取れ。給仕をつけろ。まぁどこかの貴族の放蕩者なら分かる振る舞いと言ったところですわね」

 

貴族かどうかくらいは簡単に見抜くことができる。

 

「それと所持金は金貨三十枚というところですが町に来たときは、もっと持っていたと思いますわ。袋の大きさと金貨の枚数が合っていませんでしたから」

 

「なら最低でも金貨五十枚くらいは持っていたか」

 

「あとは踊り子の扱いと言いますか店での遊び方を知らないようでしたわね」

 

「何か不義理なことでも?」

 

「ふふふ、ワルナー様相手に飲み比べをして酔い潰れたのですわ」

 

先客から飲み比べ勝負を持ち出されたときは邪魔だから去れという暗黙の了解というのがある。

 

仲が良くて本当に飲み比べをすることもあるが、たいていは前者の意味で使われる。

 

「あとはカナリアという女性への手紙を預かりましたわ。さすがに開けることはできませんでしたけど」

 

「いや十分だ」

 

「一週間ほどは私たちにお任せください」

 

「悪いが頼む」

 

ベネガはそのまま部屋を出て、案内の軍人について駐屯所を出た。

 

報告を受けてアルベンスが何をしたいのか明確になってきた。

 

「つまりは女を助けると言う名目でハーレムを作るのが目的だというところ?」

 

「不幸な女を助けるなら責められないと思ったのでしょうね」

 

「ハーレムにいる女性たち自身に目を覚ましてもらわないといけないみたいね」

 

「ユーリーン、引き続き巡回をお願いするね」

 

カナリアというアルベンスと親しい間柄であると推測できる女が出てきたから調査はそちらからおこなう。

 

あとはセルラインがいない今、面識のあるユーリーンがアルベンスを町に引き留める役を持つ。

 

「ヴィヴィ!僕かっこうよかった?隊長らしくできた?」

 

「はい、とても凛々しくお話しされていました」

 

「僕だってやればできるんだよ」

 

椅子の上でふんぞり返っているが隊長として当然のことをしただけだ。

 

ベネガとも付き合いが浅いわけではないから隊長の姿でいちいち驚いたりしない。

 

「では、こちらの書類にサインをお願いしますね」

 

「ヴィヴィ、その前にアイスクリームだ」

 

「アイスクリームはお仕事が終わってからです。良い子にお仕事できますね?」

 

「子ども扱いするな」

 

ヴィヴィと隊長のやり取りは毎日のことでもあるから誰も止めない。

 

根負けをして隊長が書類にサインをするというのがいつものことだ。

 

「巡回に行ってきます」

 

「気を付けてね」

 

 

※※※

 

 

日々問題も起きずに巡回を終えて、アルベンスを見かけるがいつも機嫌が悪そうにしていたから近づかないようにしていた。

 

相変わらず偽りの店に寝泊まりをしているようだが踊り子たちと夜遊ぶことができずにいるらしい。

 

単純に金がなくなって、寝る場所だけはベネガの好意で用意されている。

 

「触らぬ神に祟りなしよね」

 

機嫌が悪くなっているから女は近づかないようになっていることも機嫌の悪さに拍車をかけていた。

 

柄の悪い男に絡まれていることもあるが持ち前の口車で切り抜けていた。

 

「あれから一週間になるけど、どうするつもりかしら?」

 

通常の巡回をするうちにアルベンスが町の定食屋に入って店の店員に声をかけて振られているというのを耳にした。

 

この町に来たころなら確実に夜は一緒にいたはずだった。


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