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「若い踊り子の中には身分のある方に身請けされることを夢見たり、旅先で出会った男に入れ込むことも少なくないです」


「借金の形に売られることもあるものね」


「旅の一座に迷惑をかけなければ何をしても許されます。でも最近の話では一人の平民に入れ込んでいるという話を聞きます。同じ男性を好きなるということはありますが一座を抜けるというところまではいきません」


踊り子をしていたというだけで就ける職業は決まってくる。


だから男に経済力を求めることが多く、平民の男を選ぶときは生活に困らない商人が多い。


そして商人は踊り子を身請けすると信用にかかわるということで引き取らない。


「それが多くの踊り子が男に熱を挙げているようです。一過性のものとして問題にはあまりなっていませんが」


「名のある踊り子もですか?」


「そうですね。名のある踊り子は相手にもしていませんね」


踊り子として有名な者は権力者に可愛がられているから平民の男を相手にすることもない。


むしろ平民では顔見知りになるために呼ぶための金すら用意できない。


「自分の分というものを弁えているようですね」


「おそらく女性同士で取り合いというものもないので騒ぎにならなかったのでしょう」


後宮破壊ハーレム・クラッシャーという名前の由来も分からないですね」


男女の関係で揉めれば軍に記録は残るし、人の噂にもなるから分からないということはない。


それでも分からないということは、よくある話というところで終わっている可能性が高いということだった。


「男の口が軽くなるのは決まっていますよ。このセルラインにお任せを」


「セルライン、一日一回の報告とフィアットの“鑑定(ディサーム)”を受けること」


「御意のままに、この任務が終わったら隊長?今度こそ一緒に寝てくださいね?」


「そういうことは恋人同士でするものだよ」


「あぁん、そういう硬派なところも素敵」


セルラインは隊長に会った時から一夜を共にすることを望んでいるが叶ったことはない。


幼いころに一座に拾われたことから貞操観念というものは低い。


「成功した暁には隊長からご褒美くださいね」


「いいよ」


蠱惑的な笑みは並みの男なら確実に落ちていただろうが、そこは隊長だった。


顔を赤くすることなく、書類に判子を押していく。


セルラインは“スペル”を持っていないが持ち前の美貌と踊りの上手さで多くの男を手玉に取ってきた。


アルベンスに近づき、内情を探るにはうってつけの人材だった。


近づく方法というものがどんなものか知らないが準備が必要なのだろう。


手を振って部屋を出て行った。


「セルラインが失敗する可能性は低いと思いますが万が一のことを考えておきましょう」


「“魅力(チャーム)”の威力は分かりましたが、“破壊(リージョン)”の方が分からないままですね」


「そのことですが、目に見える“スペル”ではない可能性があります」


「何か気になることがありましたか?」


「男が人質を取っていたときのことですが、緊張感が辺りを支配していたのに一瞬で消えたのに違和感を覚えました。そのあとにアルベンスを引っ叩いてふっ飛ばしたので絶対とは言えませんが」


僅かな隙を見つけて制圧できるようにしようと構えていたユーリーンの集中すらも壊した。


アルベンスの持つ“破壊(リージョン)”が物理的な“スペル”ではない可能性があった。


「可能性は高いですね。“魅力(チャーム)”が精神作用である以上はもう一つの“スペル”も同系統と考えてしかるべきでしょう」


「それも意識して使用する必要のないレベルでの習熟度だと言えると思います」


「浅いとは言え“魅力(チャーム)”をユーリーンに気づかれることなくかけられるほどの使い手ですからね。心してかかる必要があるでしょう」


「セルラインが大丈夫か心配ですね」


セルラインは“スペル”持ちではない分、“スペル”への耐性が弱いことでかかる可能性があった。


今回は相手が“スペル”持ちということを知っていて尚且つセルラインと同じ土俵で勝負することになる。


どちらが上なのか判断しにくいところでもあった。


「まずはセルラインに任せましょう。それとマグドラから連絡がありましたか?」


「電報が届いていた。船でこちらに向かっていると」


「それなら問題ありませんね」


「あと、ヒナゲシからも電報が届いた」


「何と言っていましたか?」


「ショウコ アリ カエル スグ、と書いている」


「そういう報告は口語に直しなさい」


意味は通じるが原文ままで報告することはない。


そういった細かいところができない者が第三特務部隊に集められていると軍では噂されていた。


隊長が細かいところに頓着しないことも大きなことだった。


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