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十歳の最強魔導師  作者: 天乃聖樹


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ナヴィラの里

 ナヴィラの村は、大きな木々にツル草の吊り橋を渡し、各所に木製の家を組み上げて作られていた。レンガ造りの建物などどこにもない。


 見上げるだけで目がくらみそうになる高所を、村人たちは平気で行き交っている。中には吊り橋さえ使わず木の枝から木の枝へと飛び移って移動している者までいる。


 そして、特徴的なのは村人の外見だ。健康的な浅黒い肌に、不思議な紋様が描かれている。単なる装飾というわけでもなく、木から木へと飛び移るときには紋様が魔法陣のように輝いていた。


「長老がいるのは、ナジナ・パレスの最上層だ。ついて来い」


 ナヴィラの女兵士は地面を蹴って吊り橋へと跳び上がった。


 吊り橋の高さ……トレイユの街で言うところの三階建て。



「ついて行けませんわ!!」


「なに……? 案内しろと望んだのはお前たちではないか。今さら帰るというのか。変な連中だな」


 きょとんとする女兵士に、ミランダ隊長が告げる。


「すみません。バステナの民はそこまで跳べないので……ハシゴかなにかあると助かるんですが……」


「ハシゴ……? うーん、よく分からんが、倉庫番に借りてくる」


 女兵士は首を傾げながら走り去り、縄ばしごを持ってくると吊り橋から下ろした。


 フェリスたちは縄ばしごを伝って吊り橋を登り、木々のあいだを行ったり来たりして村の上層を目指す。


 やがて、他の建物よりは立派な建物が見えてきた。といってもバステナ王国の宮殿に比べたら質素簡潔ではあるが、屋根にヘルドバードの七色の羽根が大量に飾り付けられていたり、玄関口に怖い頭蓋骨が飾られていたりと物々しい。


「なんか……食べられちゃいそうな気がするんですけど……」


 びくびくと怯えるフェリス。


 アリシアは真剣に言い聞かせる。


「私から離れたらダメよ。あと、美味しそうな歩き方をしないこと。いいわね」


「は、はいっ! 美味しくなさそうに見えるよう頑張りますっ!」


「ナヴィラ族に人間を食べる習慣はなかったはずですわ……。人をからかうのもいい加減になさいまし」


 ジャネットが呆れる。


 女兵士の後から建物に入ると、奥にいかめしい顔の男性が座しているのが見えた。白髪白髭の貫禄たっぷりな容貌なのだが、妙に肌や体つきが若々しい。


 というより、ナヴィラの村に来てからというもの、老人らしい老人を見かけていないと思い出すアリシアである。ナヴィラ族の身体能力には不可解なところが多いという情報は、バステナ王国の資料でもちらほら見受けられる。


「こちらにいらっしゃるのが、ナヴィラの長だ。長老、バステナの呪術師の長が行方をくらました件で、その娘が捜索の協力を願いたいと申しています」


 女兵士がフェリスたちを長老に引き合わせる。


 長老は眉間に皺を寄せる。


「ふむ……。平時なら進んで協力してやりたいところだが、今は戦時。敵の間者という可能性もある。我らの村に害をなす者かどうかを確かめるため、客人には、まず『虚実の儀式』を済ませてもらおう」


「儀式……? なにするんですか?」


 フェリスは小首を傾げた。


 部屋の奥から、召使いが重そうな石の箱を持ってくる。


「この『虚実の箱』に手を入れるのじゃ。中には、人間の偽りを好んで捕食してくる『コウレイチュウ』が大量に入っている。手を出して咬み痕が十以下なら並の正直者だが、間者のように虚偽で生きている者は、無事では済まぬ」


「む、虫が入ってるんですか?」


 フェリスはたじろいだ。


「臆したか。ならば、儀式を済ませず村を去るもよし。我らは追撃は考えぬ」


「い、いえっ! がんばりますっ!」


 なんとしてもロバートを見つけて、アリシアを安心させなければならない。


 その思いに駆られ、フェリスは意を決して箱に手を入れる。


「………………? 虫さん、入ってないですけど……」


 手を取り出すが、そこには咬み痕が一つもなかった。


 長老が目を見張る。


「そ、そんな……バカな……。コウレイチュウがまったく反応しない……? それどころか、コウレイチュウから避けられている……? それはつまり一度も嘘をついたことがないということだが……そんなことがあり得るのか!?」


「フェリスならあり得そうね……」


「ふえ……?」


 フェリスはわけが分からず目を丸くするばかりである。


 特に恐ろしいことも起きないようなので、ジャネットは胸を撫で下ろす。


「これなら安心ですわね。次はわたくしがやりますわきゃあああああああ!」


 箱に手を入れた途端、コウレイチュウの一斉攻撃を受け、ジャネットは即座に手を引っ張り出した。


「……間者か!!!!」


 長老が目をかっと見開く。


 ジャネットの手の平は咬み痕だらけである。


「これほどまでに攻撃されるとは……確実に間者! この娘、幼いながら嘘にまみれて生きているというのか!! 牢に入れよ!!」


「ちょ、ちょっと待ってくださいましいいいっ!」


「うわーん! ジャネットさんが牢屋だなんて嫌ですよーっ!!」


「えっと……ジャネットは嘘つきというわけではないと思うわ。ただ、照れ屋すぎて本音を言うのが苦手なだけで」


「わわわわたくしはいつだって本音ですわ、もう一度試してさしあげきゃあああああっ」


 ジャネットは箱に手を入れるが、すぐさま引っ込める。


「やはり間者だ! 今すぐ尋問を……!!」


「ジャネットさんを連れてかないでくださーいっ!!」


「このままではグスタフ団長に怒られます……! どうしたら!?」


 兵士たちに引っ捕らえられるジャネット、ジャネットにすがりつくフェリス、おろおろするミランダ隊長。混沌である。


 そのとき、外から叫び声が響き渡った。


「ガデル族が! ガデル族が襲ってきたぞおおおおおおお!」

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