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十歳の最強魔導師  作者: 天乃聖樹


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合流

 団長グスタフが率いる魔術師団は、魔物たちと熾烈な戦いを繰り広げていた。


 響き渡る言霊の詠唱、飛び交う魔術の炎。


 頭のない四本脚の異形――透明だけれど漆黒に満たされた流動体が、猛烈な勢いで魔術師団に押し寄せている。


 魔術師団は必死の抗戦を続けているが、消し飛ばしても消し飛ばしても魔物は湧き出し、じりじりと距離を狭めている。


「あれじゃ埒があきませんわ!」


 魔術師団の方へ走りながら焦るジャネット。


 アリシアは冷静に戦場を見渡す。


「どこかに魔物使いがいるのか、それとも入り口があるのか……原因を見つければなんとかなるはずよ」


「魔物たちの向こうに変なものがあるのですが……あれは違いますか?」


 ロゼッタ姫が指さす先には、節くれ立った柱のような物体が生えていた。その周囲に黒いもやが集まり、凝縮しては魔物に姿を変えていく。魔物はしばらく誕生の苦しみに身悶えした後、グロテスクに体を蠢かして歩き始める。


 アリシアがうなずいた。


「恐らく、あれが大元ですね」


「分かりましたっ! 壊しますっ!」


 フェリスは両手を掲げ、言霊を唱える。


「輝きの雲よ、暗黒より濃密な光よ、かの者を押し潰せ――ファントムブラスト!!」


 巨大な魔法陣がフェリスの上空に出現、光球が生み出される。光球は膨張しながら光輝を増すと、地上の柱に叩きつけ、爆発する。


「きゃあああああああああっ!?」「ふひゃあああああああーーーー」


 少女たちの悲鳴。なぜか魔術を使った当のフェリスまでびっくりして悲鳴を上げている。


 それくらいの壮絶な爆風、桁外れの破壊力。


 一気に魔物たちが消滅し、彼らを造り出していた柱も砕け散る。


「フェリス! アリシア様! ジャネット様! 殿下まで!」


 魔術師団の中から、ミランダ隊長が駆け寄ってきた。全身ズタボロになっているが、命に別状はない様子だ。


「ミランダさん! 無事だったんですね!」


 フェリスが言うと、ミランダ隊長は肩をすくめる。


「一応これでも、王国の守護者たる魔術師団ですから。騎士団とは違います」


「それを聞いたら、うちの護衛が怒りそうね……」


 騎士団の英雄と呼ばれた女性の顔を思い浮かべ、アリシアは苦笑する。


「まったく……あいかわらず無謀な娘たちだ……。自重という言葉を知らんのか……」


 魔術師団長のグスタフが頭を振りながら歩いてきた。


「自重なんてするわけがありませんわ! お父様とお母様のピンチは放っておけませんわ!」


 ジャネットは誇らしげに胸を張る。


「見ろ、お前たち。これがラインツリッヒの跡取りだ。たいしたものだろう」


 なんのかんの言ってグスタフも誇らしげである。魔術師団の団員たちは困ったように笑っている。


 ロゼッタ姫がグスタフ団長に告げる。


「急いでこの異空間から脱出する方法を探しましょう。巻き込まれた方たちをできる限り救出したいところですが、まずは魔術師団が脱出して態勢を整えるのが先です」


 グスタフはため息をついた。


「そう思ってずいぶん探したのですが、見つかりませんでしたな。どうも黒雨の魔女を叩かないと異空間を破壊できないらしく……その本拠地に総攻撃を加えようとしていた矢先、伏兵の猛反撃を受けておったのです」


「なるほど……。良いタイミングでした」


 ロゼッタ姫はつぶやいた。


 グスタフは魔術師団の団員たちを見回す。


「とにもかくにも、黒雨の魔女にこれ以上の力を取り戻させないことが最優先だ。この異空間のどこかに魔女の魔導具が隠されているのか、それとも既に魔女が魔導具を手に入れてしまったのか……後者ならシャレにならん」


「あ、あの、もし魔導具を見つけたら、どうしたらいいんでしょうか?」


 フェリスはおずおずと尋ねた。


「無論、全力で守り抜け。黒雨の魔女に渡したら、すべてが終わりだ。それを人類の手に守り抜くために、太古の魔導大戦は行われたと伝えられている」


「そ、そなんですね……」


 厳しく言い含めるグスタフに、縮こまるフェリス。魔導具の入った荷袋を、ぎゅうっと抱き締める。


「フェリス……、あなたが黒雨の魔女の魔導具を持っていることは、他の方たちには内緒ですよ?」


 ロゼッタ姫から耳打ちされ、フェリスはこくこくとうなずく。


「それでは、我々は本拠地への総攻撃に移ります。殿下たちはなるべく安全な場所に……」


 グスタフは言うが。


「わ、わたしも行きますっ! 黒雨の魔女さんに、聞いてみたいことがありますしっ!」


 フェリスは慌てて手を挙げた。


 グスタフは眉間に皺を寄せる。


「聞いてみたいこと……? あの化け物に、話なぞ通じると思うのか」


「で、でもっ、もしかしたらっ……」


 自分の中の予感、考えをうまく伝えることができず、フェリスはもどかしい思いをする。


 それを見て取ったロゼッタ姫は、軽く息をついた。


「グスタフ。わたくしたちも同行させてください。これは王族としてのお願いです」


「……仕方ありませんな。では、我々が盾となります。決してご無理はなさいませんよう」


 魔術師団長グスタフは、渋い顔で受け入れた。

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