任務
ロッテ先生は唖然とする。
「任せるって……まさかとは思いますけど、フェリスちゃんたちに姫殿下の護衛を任せるって話じゃないですよね……?」
「お任せじゃ!」
校長はえっへんと胸を張った。
「いや、お任せじゃじゃなく! フェリスちゃん、十歳なんですよ!?」
「年齢は関係ないじゃろ」
「関係ありますよ、さすがに! 小さな子たちだけで敵地に送り込むなんて、そんなひどいこと、教育者として見過ごせません!」
ロッテ先生は躍起になって訴える。
「ひどいことではない。お主は知っておるじゃろう、王都を救ったのも、ナヴィラ族を救ったのも、魔法学校を救ったのも、災禍の魔女を救ったのも、このフェリスだということを」
「それは……そうですが」
「ヴァルプルギスの夜に来た大魔女たちは言っておった。フェリスの庇護下にある場所は、世界の何処よりも安全じゃと。ワシもそう考える」
「校長先生は、大魔女の皆さんから何を聞いたんですか……?」
アリシアは尋ねるが、校長は顎髭をしごくばかりで答えない。庇護下という言葉が、アリシアには気になってしまう。それは十歳の女の子に関して使う表現ではないはずだ。
「どうじゃ? フェリス、お主はロゼッタ姫の護衛をやってみる気はないか?」
「え、えとっ、護衛とかできるか分かんないですけど、ついていきたいです! ロゼッタさんのこと、心配です!」
「フェ、フェリスが行くならわたくしも付き添いますわ!」
「私も……参謀は必要ですから」
フェリス、ジャネット、アリシアが告げる。
「皆さん……」
ロゼッタ姫は目を瞬かせた。
うんうんとうなずく校長。
「それでこそお主らじゃ。子供たちばかりで潜入した方が、プロクスも油断する。まさかバステナが子供を送り込んでくるとは予想せんからのう」
「それは予想しないでしょうね!」
呆れるロッテ先生。
「というわけじゃが……ロゼッタ姫、異存は?」
「もちろん、異存などあるわけがありません。フェリスたちと旅行だなんて、わくわくしてしまいます」
ロゼッタ姫は目を輝かせた。
「姫殿下って……ものすごくポジティブですわよね」
「物事を悪く考えても解決しませんから。楽しめる部分はしっかり楽しむのが一番です」
王都が消失しても魔法学校が占拠されても元気いっぱいだった姫様である。やはり王族は常人とは精神の強度が違うのかもしれないとアリシアは思う。
「では、出発は明日の朝ということで。魔法薬や旅費、装備などはワシの方で用意しておく。お主らは明日に備えてしっかり休んでおくのじゃぞ」
校長先生の言葉に、フェリスたちは大きくうなずいた。




