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十歳の最強魔導師  作者: 天乃聖樹


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大祭

 アリシアがささやく。


「ジャネット。私たちが止めるわ」


「ちょ、ちょっと!? 本気ですの!?」


「仕方ないでしょう。黒雨の魔女が戦っても、フェリスが戦っても、大惨事になる。私たちなら被害は少ないし、最悪、グーデンベルト家とラインツリッヒ家の子息が乱心を起こしたぐらいで済むわ」


「それもかなり不名誉ですけれど……えーいっ、他に方法がありませんわー!」


 ジャネットとアリシアが杖を構え、言霊を唱えようとしていると。


「き、貴様ら、なんだ!?」「こっちに来るな! うわああああ!?」


 フェリスたちを包囲している騎士団のところへ、魔法学校の生徒たちが押し寄せてきた。

 校庭から、いや、学校中から雪崩を打って詰め寄せ、騎士団のあいだに入り込み、フェリスや黒雨の魔女の前に立ちはだかる。


「その魔女さんは、いい魔女さんだよ!」「そうよそうよ! 私たちのこと、助けてくれたんだから!」「レインちゃんがいなけりゃ、みんな探求者たちに吸い尽くされてたんだ!」「騎士団なんかに渡すもんかー!」


「そ、そなたら……」


 自分を守ろうとしてくれている生徒たちに、黒雨の魔女が動揺する。


 生徒たちのあいだから、校長――ミルディン・ウィルト卿が悠然と現れる。


「そういうことじゃ。お引き取り願おうか、騎士団の方々。ここは王家より自治を任された、ウィルトの領分じゃ」


「ウィルト卿! あなたまで魔女に洗脳されたのか!!」


「ふむ……このミルディンが幻惑魔術ごときに惑わされているなど……本気でそうお考えかな?」


 校長が問いかけた。たたずまいは静かなはずなのに、そこに漂う威圧のオーラは凄まじい。悪魔殺しのミルディンの面目躍如である。


「くそっ……!!」


 誰一人として他に味方はおらず、騎士団は舌打ちしながら引き揚げていく。


 魔法学校の生徒たち、フェリスたちは大きな安堵の息をつく。


「これは……どういう、ことじゃ……」


 呆然とする黒雨の魔女。


 天使ライラが魔女に寄り添って微笑む。


「いつまでも人間が変わらないわけじゃない、ってことよ。……ううん、それはきっと、ここには女王様がいるから……」


「二千年前とはすべてが違う、のか……」


 黒雨の魔女は辺りを見回してつぶやく。


 騎士団から逃れたロゼッタ姫がフェリスに飛びつき、ジャネットは力が抜けてへなへなと座り込み、他の生徒たちが笑いながらそれを眺めている。


 魔法学校は、光に満ちていた。もう少しで黒雨の魔女がまた、その光を壊そうとしてしまっていたのに。


「……フェリス」


 黒雨の魔女レインは、歩み寄って呼びかける。


「なんですか?」


「せっかくの大祭じゃ。我々も生徒たちを楽しませるため、出し物をやろうではないか」


「ううう……うちのクラスのモンスターハウス、めちゃくちゃになっちゃいましたけど……」


「だからこそ、じゃ。教室がやられても、空は永遠に変わらぬ。ゆくぞ、皆に最高のイリュージョンを見せてやろう」


 黒雨の魔女はフェリスの手を引いて大空に舞い上がる。


 瘴気によって喚び出された化け物たちが、踊りながら天空を彩る。


 天使ライラが急旋回して飛翔し、見事な舞いを披露する。


 フェリスは幻惑魔術を唱え、夜空に華々しい花火が弾け飛ぶ。


 いつしか教師たちもホウキで浮上し、ホウキのダンスが始まる。


 それは、フェリスにとって初めての、そして黒雨の魔女とライラにとって二千年ぶりの、ヴァルプルギスの夜。


 誰も眠ることを知らない夜が、賑やかな音色と共に更けていった。

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[気になる点] 本物の閃光の魔女は探求者たちに殺されて、なりかわられてたってたことでいいのかな?
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