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剣聖の弟子  作者: 二階堂風都
第三章 武の町トバル
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ニールの挑戦

 鉱山都市キセを出発してから約半刻。

 私は意外な言葉を掛けられ、困惑していた。


「カティアさん、自分と立ち合っていただけないっすか?」


 ……。

 何故、今このタイミングで?


「理由を伺っても?」


「思うところがありまして、自分の長所がどこまで通用するかを知りたいっす。お願いします!」


「ああ、模擬戦ですか? もちろん良いですよ」


 何だ、びっくりした。

 真面目な顔をしているから命懸けの真剣勝負でも挑んでいるのかと思った。

 ニールさんが肩透かしを受けたような表情になった。

 どうした?


「なんとなく、自分とは戦ってくれないと思っていたっす。力の差があり過ぎて」


 そんなことはない。

 ニールさんは自己評価が低過ぎるのではないだろうか。

 むしろ、こちらからお願いしたいくらいだ。


「訓練なんていつでも付き合いますよ。それ以前に、どうして今まで声を掛けてくれなかったんです?」


「えっ、そうだったんすか!? そ、そうっすか……」


「ニール、顔緩んでるわよ」


 二人で訓練した方が効率もあがるし、ニールさんほどの相手であれば十分に実のある訓練ができる。

 遠慮しなくていいのに。 


「で、ではやりましょうっす!」


「はい。一本で良いですか?」


「うっす!」


「二人とも頑張れー。今後の移動に支障が出ない範囲でやってね」


 向上心があるのはいいことだ。

 私もまだまだ未熟者だから、気合いを入れて相手をしよう。

 お互いに剣を抜き、構える。

 私は対人戦ということもあり二本抜いた。


「では、こちらから行くっす!」


 ニールさんが大きなオーラを纏って迫ってくる。

 オーラの流れ自体は荒いが、オーラ量が高いため大型の魔物が迫ってくるような圧迫感だ。

 得物は手に入れたばかりのダマスカスソード。

 斬撃が来る。

 迷いのない軌道の袈裟斬りだ。

 私はマン・ゴーシュで受け止め――って、重っ!

 重い一撃に腕が痺れたが、なんとか受け流す。

 ニールさんの体が泳いだ。

 今だ!


「うおおっ!」


 ニールさんが叫ぶ。


「!」


 泳いだ体を立て直さずに、ニールさんがそのまま転がって離脱した。

 反応が良いな、少しでも遅ければ今ので終わっていたのに。

 機を逸したか。


「まだ終わるには早すぎるっす、もう一度!」


 来るか。

 あのオーラ量とパワーはやっかいだな。

 今度は……逆風か!

 いわゆる股下からの斬り上げだ。

 パリィ対策か、確かにこれでは体勢を崩し難い。

 私はとっさにマン・ゴーシュを地面に放って黒剣を両手で持って斬撃を受け止めた。

 やはり、重い――!

 何度も受ければこちらの腕がもたない。

 なら、一気に勝負をかけるか。

 私はニールさんの斬撃を受け止めた勢いに逆らわずに宙に浮いた。

 あちらから見れば無様に吹き飛ばされたように見えるだろう。


「! 隙ありっす!」


 当然、これは誘いだ。

 私は宙で体を回転させて体勢を立て直して着地し、完全に油断しているニールさんの喉元に剣を突きつけた。

 ニールさんの剣は、まだ頭上に構えたままだった。


「うわー、カティアちゃん曲芸師みたい……」


「単純過ぎますよ、ニールさん」


 突きつけた剣を下ろす。

 落としたマン・ゴーシュを回収して、鞘に納めた。


「やはり駄目だったっすか……」


 ニールさん、落ち込んでいるな。

 何か心に期するものでもあったのだろうか。

 しかし、思っていたよりも凄いパワーだった。


「いえ、非常に重い斬撃でしたよ。腕が痺れました」


「本当っすか!? カティアさんの極級オーラ相手にそうなら……!」


 一転してニールさんが明るくなった。

 ……ふむ。

 己の戦い方にでも悩んでいるのだろうか。

 なら今の戦い、分析して教えた方が良いのだろうか?


「いくつか気付いたことがあるのですが、言った方が良いですか?」


「是非お願いしたいっす!」


 聞きたいらしい。

 では、意見交換といきますか。

 ニールさん、ヴァンさんと何やら秘密の話をしてから剣に対して行動的になったな。

 一体どんな話をしたのだろうか。


「そうですね、まずは折角高いオーラ量ですが」


「はい」


「コントロールが甘いので、無駄が出ています。もっと制御に気を配った方がいいかと」


「なるほど! 確かにオーラの制御は苦手っす」


 その甘いコントロールであの斬撃だから、完成したらどうなるか想像もつかないが。

 私の腕力では受け止めきれないのではないだろうか。

 まあ、それならそれで対処法はあるが。


「それから、踏み込み速度ですね。もう少し速くないと避けやすいですよ」


「あれ、でもカティアちゃんニールの剣を受け止めてなかった?」


「ニールさんの口ぶりからして、何かの確認をしたいようだったので敢えてそうしていました」


「と、いうことは?」


「躱そうと思えば出来ました」


「……はーっ、そうっすか。先は長そうっす」


 先って、ニールさんは何を目指しているのだろう。

 ともかく、踏み込み速度に関してもオーラ制御の荒さに起因している。

 足先までしっかりコントロールできれば改善するはずだ。


「でも、方向性は見えたっす! 速い踏み込みからの全力の一撃、それが自分の目指す形っす!」


「ニール、それは言っちゃっていいのかな?」


「問題ないっすよフィー姉、分かっていても避けられないくらい速くなればいいんすよ!」


 おお、脳筋思考。

 でも、ある意味合理的なのでは?

 前世でいうと示現流のようなイメージか。

 打ち合っていると隙を作ってしまいやすいニールさんには合っているかも。

 オーラ量に関しては言うまでも無し、完成すれば粉砕できない敵はいないんじゃなかろうか?

 二の太刀いらず、って奴だ。


「カティアさん、ありがとうございました!」


「いえ、偉そうに色々指摘してしまってすみません」


「そんなことないっすよ! よし、後は鍛えるだけっすね、やるぞー!」


 やる気に満ちているな。

 何に悩んで新しい戦闘スタイルを探っていたのかは分からないが良いことなのだろう、恐らく。


「具体的にはどこを鍛えるの?」


 剣に関しては門外漢のフィーナさんが質問した。


「オーラ制御を鍛えれば大体の問題は解決すると思いますよ」


「オーラ制御っすか……カティアさんは効果的な鍛え方とか御存知っすか?」


「んー、余り知らないですね。私の場合は爺さまとの模擬戦と、魔物相手の実戦の繰り返しです」


 オーラの鍛え方は確立されていない。

 正確には方法そのものは数多くあるが、人によって向き不向きがある。

 何でも人によって感覚が違うからだとか。

 一つ共通するのはひたすら経験を積むことらしい。

 ちなみに鍛える順番は剣技が先でオーラが後だ。

 オーラ頼りだと剣技が充分に育たないからとのこと。

 ニールさんのオーラが荒いのもその辺りが原因かもしれない。

 真面目だから、剣技がある程度モノになるまでオーラを鍛えてこなかったのだろう。


「私に言えるのは、ニールさんに合った方法で鍛えないと意味がないということだけです」


「そうっすよね……王都の図書館で調べるまでお預けっすかね……」


「知ってそうな人に色々聞いてみたら?」


 知ってそうな……?

 フィーナさんには心当たりがあるのだろうか。


「アテがあるんですか? フィーナさん」


「いや、具体的にはないんだけどさ。次の行き先の進路をちょいとずらすと……」


 フィーナさんの細く長い指が地図の上をなぞって行く。

 ああ、納得。


「武の町トバルですか。確かに良いかもしれません」


 あそこなら道場とかもあるだろうし、教えたり人の適正を見るのが上手い人も居るだろう。

 武の町というのは通称で、正式名称ではないが浸透しているので皆そう呼んでいる。


「いいんすか? 自分のために予定を変えても」


「ここなら王都に着くまでの日数に大して差は出ないでしょうし、問題ありませんよ。それに、ニールさんが今よりも強くなって下さったらとても心強いです」


「か、カティアさん……! 自分、頑張るっす!」


「喜んじゃってまあ……んじゃ、次はトバルに向かうってことで」


 フィーナさんが行き先を宣言して締めた。

 ニールさんの能力強化、上手くいくといいな。

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