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兎の使者  作者: あお
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旅立ちの朝

「ゆうきー、起きなさーい」


ゆうきは母の声で目を覚ました。

眠い目をこすり、頭上の時計で時刻を確認する。

7時15分。天使は何時頃現れるのだろうか。

ゆうきは体を起こし、窓辺に歩み寄った

窓辺まで来ると、カーテンを開き、窓を開放する。

天気は晴れだった。空は高く、青い。

ゆうきは一度深呼吸した後、階下へ下った。



トイレを済まし、顔を洗う。それでようやく、眠気が体から抜けた。

台所へ踏み入ると、室内は朝ごはんの香りで満たされていた。そのままテーブルへと向かい、自分の席に着く。


「一度で起きるなんてめずらしいじゃない」


そんなことを言いながら、母親が朝ごはんを運んできた。


「最後くらいはね」


ゆうきはそう呟き、朝ごはんを食べ始めた。




「行ってきます」


ゆうきは母親にそう告げると、玄関から外へ出た。

左方に目をやると、朝食を食べ終えたモカが尾を振りこちらを見ていた。


「行ってくるよ、モカ」


首を撫でてやると、モカは気持ちよさそうな顔を浮かべた。

しばらく戯れた後、ゆうきはある場所へ向って歩き出した。





――その頃、かおりはゆうき宅を目指し、歩いていた。


(ゆうき君の家って、こっちでいいんだっけ)


歩きなれない場所に、かおりは迷ってしまったようだ。

そんな時、こちらへ向って歩いてくる同級生のたかしを発見した。


「あ、かおりさん、おはよう。こんなところで、めずらしいね」


「おはようたかしくん。ねえ、ゆうき君の家の場所わかる?」


「ゆうきくんの家ならこれから通るよ。一緒に行くかい?」


「ほんと? それなら一緒にいこうかな」


二人はゆうき宅へ向けて歩き出した。





――一方ゆうきは、通学路の途中にある公園を訪れていた。


「天使、現れないな」


ゆうきは人知れず、天使が現れるのを待っていた。

その時、目の前の空間に切れ目が生じたと思うと、中から天使が現れた。


「やあ、おはようゆうきくん。昨日は良く眠れたかい?」


「おはよう天使さん。僕、あの条件のせいで昨日は大変でした。危うく友達をを失くすところだったんです」


「それは申し訳なかった。それで、命の提供者は用意できたのかい?」


「その前に、質問したいことがあります」


「いいよ。言ってみて」


「命を提供した人物は、その後どうなってしまうんですか?」


「存在自体が抹消される。その人に関係する記憶も、全部なかった事に書き換えられる」


「そうですか。それじゃあ、よみがえった後の兄さんはどうなるんですか?」


「記憶が書き換えられて、交通事故がなかった事になる。そして事故後の空白期間も、あるべき記憶が上書きされる」


「うーん、なんとなくわかりました」


「うん。他に質問は?」


「ありません」


「そう。それで、命の提供者は見つかったのかい?」


「はい。みつかりました」


「それは誰だい?」


「僕です」


「なるほど」


「驚かないんですか?」


「別に。僕の反応を見て、君が心変わりしちゃいけないからね」


「そうですか。それで、僕は何をすればいいんですか?」


「君にはこの兎のマスクを被ってもらう。というのも、実はいま話している僕の体は、君のお兄さんのものなんだ。君がマスクを被ることで、命の受け渡しが完了する」


「それを被った瞬間、僕は消えてしまうんですか?」


「そうだね。皆の君に関する記憶もろとも」


「……わかりました」


ゆうきは少しの間、目を閉じて沈黙した。

拒む心が少しでもあると、受け渡しはできないのだ。

心の中で、全ての出来事にけじめをつけていく。

やがてゆうきは目を開けると、天使に向けて両手を差し出した。


「お願いします」

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