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兎の使者  作者: あお
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ゆうきの答え

帰宅後、ゆうきはすぐさま自室に閉じこもった。

ベットの枕に顔をうずめ、自分がどうすべきなのか考える。

しかし考えれば考えるほど、答えから遠ざかっていくような気がした。

頭に浮かぶのは、かおりやたかしへ対する、悔悟の情だけだった。

ゆうきは顔を上げ溜め息をつく。

そんな時、階下からゆうきを呼ぶ声が聞こえた。


「ゆうきー、晩ごはん。早く降りてきなさい」


母の声だった。どうやら夕飯が出来上がったらしい。

ゆうきは思考をあきらめ、階下へと下った。


「ゆうき、これ、モカのご飯。もってってあげて」


モカとはゆうき家で飼っている犬の名だった。

ゆうきはモカの夕飯を受け取ると、玄関外へと向った。


玄関脇に置かれた犬小屋の前に、夕飯の皿を置く。


「モカ、ご飯だよ」


犬小屋から、柴犬のモカがやおら抜け出てきた。

夕飯を食べ始めたモカを、ゆうきはしばらくの間眺めていた。

やがてモカは夕飯を食べつくし、小屋の中へと戻っていった。

ゆうきはモカに語りかける。


「モカ、こうきお兄さん覚えてる?」


「ヘッヘッヘッ」


「もう一度会いたい?」


「ヘッヘッヘッヘッ、クワァー」


モカはあくびをし、顔を伏せてしまった。

ゆうきは立ち上がり、家の中へと引き返した。



台所のテーブルには、既に夕食が並べられていた。。

ゆうきは手を洗うと、自分の席に着いた。間も無くして母も席に着く。


「いただきます」


夕飯は母とゆうきの二人きりだった。父は仕事中らしい。

食事中、ゆうきは母に尋ねてみた。


「ねえお母さん。もし会えるなら、兄さんにまた会いたい」


母は驚いた表情を浮かべ、ゆうきのの顔を覗き込んだ。

しかしすぐにそれは笑顔へと変わった。


「そりゃあ会えるなら会いたいよ」


少し間をおいて、母は続けた。


「けれど、それはもう無理なこと。こうきが天国いっちゃったのは寂しいけど、私にはゆうきがいるから幸せだよ」


「……ありがとう、お母さん」


ゆうきはこれ以上質問するのをやめた。



夕飯を食べ終えたゆうきは、そのままお風呂へ入った。

湯船につかり、またもや思惟に耽る。

気のせいか、先程よりも頭の中が明瞭になった気がした。


「よし」


ゆうきは何事かを決意すると、お風呂から上がった。



お風呂から上がったゆうきは、しばらく居間で時間を潰した後、自室へと向った。

机に向い、鞄からノートを取り出す。そして、まっさらなページを一枚破いた。

鉛筆をペン立てから抜き取り、おもむろに何かを書き始める。



『拝啓、こうき兄さん。この手紙を兄さんが読んでいる時、僕はもうこの世にいないでしょう。くわしいことは、説明するのがむずかしいので、天使に聞いてください。僕がこの手紙を書く理由は、二つあります。一つは、僕が存在したしょうこを残すため、これは手紙を書き残すことに意味があります。そしてもう一つは、兄さんにあるお願いをたくすためです。そのお願いとは、僕の友達である、武田たかし君と、田中かおりさんに、僕に代わって謝ってほしいというものです。僕は二人に人としていけない事をしてしまいました。本当は明日、学校に行ってから自分であやまろうとおもったのですが、時間的にむりなようなので、兄さんにたくします。めんどうだとは思いますが、どうかよろしくおねがいします。それと、お父さんとお母さんにもよろしく言っておいて下さい。最後に、こうき兄さん、どうかずっと、僕のことを忘れないでいてください。さようなら。敬具』



色々考えた末、辿りついた結論だった。

ゆうきは手紙を書き終えると、部屋の電気を消して布団へもぐりこんだ。

暗くなった室内で目を閉じると、色々な思いがこみ上げてくる。

ゆうきは過去の思い出に包まれるようにして、眠りに落ちていった。

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