希望の光
予鈴が2時限目の終りを告げた。それと同時に校内は中休みへと突入する。
ゆうきは2時限目の間中、命を提供してくれそうな人物を頭の中で模索していた。
そうした中、何名かの人物が候補に挙がった。
ゆうきの話を理解し、尚且つ命を提供してくれる人がいるなど、殆ど見込みのない無い事なのだが、とりあえずは、その何人かの人物に、順に話を持ちかけてみることにした。
早速中休みを利用し、一人の人物にあたることにする。
ゆうきは教室前方で黒板の文字を消している生徒へと近づいていった。
彼女はクラスの学級委員長で、名を田中かおりといった。
かおりは学級委員長を務めているくらいなので、とてもしっかりした考えを持っている。そんな彼女なら、もしやこんなとんでも話を信じてくれるのではないかとゆうきは考えたのだ。
ゆうきはかおりが黒板の文字を消し終わるのを待ってから、おずおずと口を開いた。
「田中さん、ちょっと話があるんだけどいいかな?」
「話? 別に大丈夫だけど、一体どうしたの?」
ここからだ肝心だ。話に信憑性を持たせなくてはならない。
「信じられないだろうけど、実はさっき、僕の前に天使が現れたんだ」
「え?」
「えっ」
ゆうきは後悔した。少々ストーレートに言い過ぎた。
「天使って、あの天使? 羽が生えてる」
「いや、羽は生えてないんだ」
「えっ」
「うん」
とにかく本題に入らなければ。
「話を進めるけど、実はその天使は、命を提供してくれる人を捜しいるんだ。この世界のどこかで、誰かの命を必要としている人がいる。つまり、田中さんが命を提供することで、助かる命があるんだ」
「命……提供……」
ゆうきは意を決して願い出た。
「そこでお願いがあるんだ。率直に言います。田中さんの命を僕にくれませんか?」
かおりはゆうきの発言を頭の中で必死に整理しようとした。しかし何をどう間違ったか、かおりはそれを、非常に遠まわしな愛の告白だと解釈してしまったのだった。
「ゆうき君、あの……今すぐに答えを出すことはできない」
ゆうきは思わぬ返答に喜んだ。返事を保留したいということは、ゆうきの話をきちんと顧慮してくれている証拠なのだから。
「うん。明日朝までに返事を聞かせてくれればいいんだ。それまでじっくり考えてよ」
「うん、わかったわ。……それじゃあまた」
「言い返事を期待してるよ」
思いがけない好感触に、ゆうきは顔をほころばせた。
これは案外一人目で決定してしまうということもありえるかもしれない。
しかしゆうきは直ぐに顔を引き締めた。
これで安心していてはならない。もしもの為に、候補に挙がった人物には話を持ちかけておいたほうが良いだろう。
中休み終了の予鈴鳴り、教室内が喧騒からしじまへと移り変わる。
ゆうきは僅かなに生まれた希望を抱き、3時限目の授業へと臨んでいった。




