二章 疑似神姫、襲来
ベルカンゼウ北部は炎を上げる対空車両と粉々になった航空機の残骸が転がる地獄と化していた。
「撃てッ!」
アウス陸軍の兵士が操作する七十五ミリ対空砲が火を噴き白煙を上げる。
重い背嚢を背負った観測手たちが大型双眼鏡を覗き込んで叫ぶ中、炎に包まれたレムフィト軍の爆撃機が次々と墜落していく。
「移動だ、急げ!」
兵士たちは軽快に位置を変え、手際よく機関銃を組み立てる。
汗で湿った土にまみれた手でベルト弾倉を叩き込み、コッキングレバーを引くとバリバリと音を立てながら十三ミリ弾を地上の東和連合軍へ向けて放った。
一方、上空。
レムフィト軍の戦姫ティーチルは、耳を劈く対空榴弾の炸裂音に泣きながら耳を押さえた。
「気を保て! 速度を落とせば墜ちるぞ!」
先輩のノルージェがティーチルを叱咤する。
「投下位置まで接近! 準備しろ!」
隊長のツァノが目標を見据えたその時、聴き慣れぬ不気味なモーター音が空に響いた。
ツァノが振り返った先にいたのは、月浜が製造した十番目の"疑似神姫"フライ・カルデッドディア。
生気のない肌をしたその少女は、青い毛先の白髪を靡かせながら強力なエネルギー砲を放つ。
「クソッ、もう来やがったか!」
ノルージェの罵倒が響く間に青緑色の曳光弾が空を駆けて爆撃機を爆発四散させていく。
「私たちだけでも投下するぞ!」
ツァノたちは強引に十キロ爆弾を切り離した。
「爆弾だ! 伏せろッ!!」
地上の兵士たちが絶叫する。
バラバラと降り注ぐ銀色の爆弾は着弾と共に爆音と土煙を広げて街を飲み込んだ。
爆炎から逃れた車両はすぐさま砲身を空へ向けて再び反撃の火を噴き始めた。
次回予告は活動報告にあります
質問も受け付けています




