表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

放課後

 チャイムがなる。先生の合図で立って、号令して帰る支度をする。

 日も傾いてきており、教室に若干の陰りがある。

 帰宅部。友達は少ないし、みんな何かしらの部活をしている。

 ひとり帰り支度をしていると、無性に虚しくなることがある。

 こんなことなら去年部活に入ってれば良かっただとか、益体もないことばかりが頭を過ぎる。

 そんな事を思う時は、少しだけ教室でぼーっと過ごす。


 もうすっかりクラスメイトは居なくなり、茜色がさし始めた教室で、やけに響く時計の秒針だけが聞こえる。

 そんな静寂を自分が破るのはなんだか嫌で、うっすらと授業の名残を感じる黒板を見つめる。

 ふと、今日習ったばかりの公式を思い出そうとする。それに連なる他の公式も。

 ……何も思い出せない。喉のもう少し、あと少しの部分までは出かかっているのだ。それが思い出せない。

 ただ、教科書を見るのはなんだか負けたような気がする。


 ギィーっと耳障りな音を立てて、椅子を引く。上靴で足音を誇張するように教室を歩き回る。

 たんたんたかたん、たんたかたかたん。

 足音がたくさんあるのはどうにも苦手なのだが、自分ひとりの時だと聞き心地がいいのは何故だろうか。

 複数の人に迫られてる感覚があるから? 分からない。

 立ち止まり、色々と原因を考えるが答えは出ない。


 すると、外から走る男子の声が聞こえてくる。楽しそうなものだ。

 窓を開けて、暖かな春の伊吹を感じる。

 ユニフォーム的に、サッカー部だろうか。あっちの子は初々しさも残るし新入生かな。これで先輩だったら失礼にも程があるけれど。

 渡り廊下の方を見ると、いつの間にやら吹奏楽部が楽器と楽譜を広げている。

 金管楽器の音があちらこちらからちらほらと聞こえてくる。

 一番好きなフルートの音はいつも聞こえないが、外では練習していないのだろうか。していないのだろうな。

 生憎と、吹奏楽部の友達はいないし、誰かに聞くほど疑問に思っている訳でもない。

 気も紛れたし帰宅部の本領を果たすとしよう。


 窓を閉めて、もち慣れたスクールバックを取って教室を出る。

 廊下にある机で、自習をする同級生や、慌てた様子で理科塔へ全力ダッシュしているクラスメイト。

 ぶつかりかけてる。

 なぜか二階にある体育館の横を通り、中でシューズの音を響かせているバスケ部とバレー部の練習を横目で見て階段を降りる。

 本当になんでうちの学校の体育館は二階にあるのだろう。入学してからずっと謎だ。

 体育館の下にある学食の横を通り抜けると、いよいよ靴箱だ。

 教室の中から聞いた金管楽器の音は、どこか遠くから聞こえてたから雰囲気を程よく味わえて良かったが、靴箱のすぐ外で吹かれると流石にうるさく感じてしまう。

 このうるささも、ホールで聞くと迫力満点の音になるのだから状況と言うのは凄いものだ。

 靴を履き変えて、とんとん地面を叩いて馴染ませる。

 靴を履き変えた直後の一歩目はどうしてこう違和感が凄いのだろうか。きちんと靴べらでも使えばまた気持ちは違うのだろうか。


 靴箱を出ると、すぐに夕日が目を刺して来る。手で目元を日光から遮り、ゆっくりと慣らしつつ歩く。

 今年から、家の方面の出口に近い靴箱で少し嬉しい。

 校門を潜ると、水平線と住んでいる街が見える。

 夕日を受けて赤色にキラキラ光る海がやたら眩しく見える。

 坂をゆっくりと歩く。時折すれ違う陸上部に、軽く挨拶をしながら、海を視界の隅にいれながら歩く。

 この坂を自転車は、帰りは良いが一番億劫な行きに味わいたくなかった。

 帰りの楽、行きの苦を取るか、あんまりしがらみがないが時間がかかる徒歩を取るかと言われたら、徒歩を取るだろう。

 帰宅部に元から入るつもりだったのだ。多少歩くくらいは構わないし、時間も対して変わりはない、はず。


 踏切を超えたら商店街が見えてくる。

 この時間帯のお腹がすいた時にここを通るものじゃない。買い食いしやすい店があるのも問題だ。

 週3くらいでなにかを買って食べながら帰ってしまうのだ。いや、美味しいし幸せなのだからいいのか?

 すっかりと顔なじみになったおばちゃんにお礼を言いつつコロッケを食べる。

 揚げたてだ。ここのコロッケは、ホクホクのじゃがいもに牛肉、それにコーンが入っており、大変素晴らしい食感と、コーンの僅かな甘み、そしてとどめの牛肉のガツンと殴ってくる旨みが売りだ。

 ついつい二つも買ってしまった。

 育ち盛りと言うのは良い。どれだけ食べても育ち盛りだから! と言っておけば割となんとかなる。


 商店街を抜けて、住宅地の合間を通り、川沿いに出る。

 川辺で石を拾って、水切りだ。もはや日課みたいになっている。その日の体調を測るのにはそこそこいい日課だ。

 大体1回チャレンジで終わる。今日は6回。結構調子は良さそうだ。

 いや、今日も終わろうかと言うのに今日の調子を知るのは如何なものかと自分でも思ってしまうが。

 川の流れに逆らって、橋を渡る。

 この橋は、水平線と夕日が綺麗に見えるのだ。生憎と、この季節はスモッグで水平線に沈む夕日は見れないのだが。

 それでも水面に反射する夕焼けと、夕日だけでも十分に綺麗だ。

 たまにごついカメラを三脚でたてた人が写真を撮るほどなのだ。通学路ではここから見る景色か、学校を出てすぐの景色がかなり好きで、密かな自慢でもある。何に対しての自慢なのかは分からないが。

 そうやって、橋を渡って夜の帳も降りきろうかと言うくらいに着くのが家だ。

 今日も1日頑張った。コロッケ2つ行ったからちょっと夕飯は待って欲しい。後で食べるから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ