伝説の金属
それからリイナは鍛冶師グラマールを訪ねた
ホワイトローズの剣を超える剣を探すために
グラマールは伝説の鍛冶師と呼ばれている
年齢はすでに50歳を超えたとのことだ
しかし年齢に似合わず全身の筋肉は分厚い
「あの剣を超える剣なんて存在しない」
ホワイトローズの剣は現在入手できる最高の素材と最高の技術によって作られている
それがグラマールの答えだった
「それでも何かアイデアが欲しい」
リイナは食い下がる
「どんな無茶な仮定でもいい。何か少しでも可能性があるなら、それを教えて欲しい」
「・・・・・・」
グラマールはしばらく考えた後、ぼそぼそと語りだした
「一度、伝説の金属というのを見たことがある。ほんの小さな欠片だったが、師匠が見せてくれたことがあった」
「伝説の金属?」
「ああ、あれは異質な何かを感じたよ。普通の金属のように加工するのは難しいだろうことはわかった。師匠はそれをアダマンタイトと呼んでいた」
「それはどこで手に入るの?」
「ノースラントを探検していた人が見つけたらしい。しかし、そんなあるかどうかもわからないもののためにノースラントに行くことはやめておいたほうがいい」
ノースラントは魔物でも寄り付かない
ドラゴンの巣窟として知られている
魔王と戦うよりも危険だという人もいる
「そんな場所にお嬢さん一人で行くのは死にに行くようなものだ」
グラマールはそう言った
その時、リイナの背後から声が聴こえた
「だったら、僕達が行ってくるよ」
リイナが振り返るとフィオールとその仲間5人がいた
「立ち聞きするつもりはなかったんだが、僕も似たような目的でここを訪れたんだ」
「フィオール・・・」
「前回、僕は魔王にやられちまっただろ。だからどうしても強い武器が必要だと感じていたんだ。まさか伝説の金属なんてのがあるなんて予想はしてなかったけどさ」
それを聞いたリイナがフィオールに告げた
「だったら、私も一緒に行く。フィオールのパーティーに加えて欲しい」
それに対し、フィオールは少し考えた後に答えた
「大歓迎と言いたいところだけど、実は僕の中には一つの目標があるんだ」
「目標?」
「いつかリイナが言っていた僕よりも強い勇者。その勇者に勝って、それからもう一度リイナをパーティーに誘うっていう目標さ」
「・・・・・・」
「くだらないって思うかもしれないけど、あの大会でのリイナの言葉を聞いた時、そうしないといけないような気がしたんだ。リイナには今のところ僕なんかよりも大切な誰かがいるって」
リイナは何も言えなかった
「大丈夫、ちゃんとリイナの分も探してくるから、僕を信じて待っていてくれ」
そう言うと、フィオールはグラマールにアダマンタイトの特徴を聞き、去っていった
それから1ヵ月ほど経ったある日の事、リイナの元に連絡が届いた
フィオール達が帰還したとのことだった
フィオールの元を訪ねたリイナが見たのは、重症を負ったフィオールとそのパーティーの姿だった
「やあ、リイナ」
リイナを見てフィオールが反応した
「フィオール・・・・大丈夫なの・・?」
「今のところ、あまり大丈夫とは言えないかな。リイナを連れていかなくてよかったよ」
「そんな事を言っている場合じゃないでしょ。ごめん、私が変な事を言ったから・・・・。こんなことになるなんて」
「いや、変な事でも無かったよ。ちゃんとあったんだ。アダマンタイトは」
そう言って、フィオールが指差した先には袋があった
中には小石ほどのアダマンタイトの鉱石がぎっしりと詰まっている
フィオールは続ける
「でも、これだけ集めるのが限界だった。これだと作れてもせいぜい剣が1本分だと思う」
「いいの、これはあなたが使って欲しい」
そうリイナは答えた
「いや・・・・」
フィオールは一呼吸を置き、話し始めた
「僕はまた戦えるようになるのかどうかわからない。でも戦えるようになるつもりだ。だから聞いて欲しい」
リイナは黙って聞いた
「もし、本当に最強の剣が出来たのなら、僕はそれを使うにふさわしい人間だと証明したい。ちゃんと復帰できたんだって。いや、以前よりも強くなったんだって。だから、そのために僕は半年後の剣技大会に再び参加する」
そう言うとフィオールはリイナの目を真っ直ぐに見た
「だから、リイナが言っていた、僕より強い勇者も参加して欲しい。剣は優勝賞品として献上する。僕はそこで優勝して、そしてリイナをパーティーに迎えるよ。どうだい?」
リイナはしばらく何も答えることが出来なかった
フィオールが重症を負うことになったのは自分のせいでもある
かつてローアンが感じた痛みはその何倍だったのだろうか・・・
でも、自分のためにもフィオールのためにも、この提案を受け入れようと決めた
「わかった。半年後の剣技大会でまた会いましょう」
そう言うと、リイナは鉱石を受け取り、グラマールの元へと届けた
そしてローアンに事情を説明した
ジルバーストに耐える可能性がある武器が作られていること
それが半年後の剣技大会での優勝賞品であること
「剣技大会で優勝か・・・・」
ローアンはポツリと呟く
「リイナ、頼みがある。俺の剣の修行に付き合ってくれないか?」
「もちろん、そのつもりでいる。あなたにもう一度勇者になって欲しいと言ったのは私なんだから」
リイナは決意を込めて答えた




