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リイナの執念

魔王エルグリスの襲撃以降、リイナは何度もローアンの元を訪ねた


リイナの両親は魔王ザブロアによって殺された

その仇を取るため、魔王と戦える仲間を探している


しかしローアンは


「悪いが他を当たってくれ」


そう答えるだけだった


そんな日が何日か続いたある時のこと、リイナは切り口を変えて尋ねた


「ジルバーストってどういう仕組みの技なの?」


「あれは雷属性の魔法を剣に宿すんだ。それも生半可な量じゃない。通常レベルのライトニングの魔法を何十発分も一気に込めて放つ。だからこそ溜めるのに時間がかかるし、剣に対する負担も大きい」


「雷属性って、あまり聞かない属性だけど」


「ああ、そうだ。たまたま俺にはその才能があった。それだけだ」


「そう・・・・」


その日は、再び勇者になって欲しいという一言は無くリイナは去っていった

これ以降、リイナはローアンの元を訪ねて来なくなった



それからリイナは王城に赴き、ファルカシュに会った

会うなり


「魔法を教えて欲しい」


そうファルカシュに告げた


「魔法と言ってもいろいろあるけど、何を覚えたいんだ?」


「雷属性の魔法を」


そうリイナは答えた


「雷属性は俺にも使えないんだ。うまく教えることができるかどうか」


「構わない。足りない分は自分で努力するから」


「・・・・そうか、わかった」


それからリイナは王城に泊まり込むことになった

魔法を教わるための授業料だけでなく、宿舎を利用させてもらうための費用などを払うため、仕事として城の雑用なんかもすることになった

そんな生活は何か月にも及んだ



そんな中、ファルカシュがローアンの元を訪ねた


「珍しいな。お前が訪ねてくるなんて」


ローアンがお茶を出しながら応じた

ファルカシュはローアンの鍛冶屋のボロさに戸惑いつつ、お茶を飲みながら切り出した


「ちょっと魔法の事で聞きたいことがあってな」


「お前が俺に魔法について教わることなんてないだろ」


「雷属性の魔法についてなんだ」


「雷属性?なんで突然」


ファルカシュはリイナの事を話した


「なるほどな。最近来なくなったと思ったらそんな事を・・・・」


「で、どうなんだ?彼女は雷属性の魔法を使えるようになると思うか?」


「まあ、無理だろうな。威力が最小のレベル1のライトニングですら使えない可能性が高いな」


残酷だが、それが現実だった


しかし、ローアンのその予想は少し外れていった

魔法の修行を始めて数か月後、リイナはわずかに指先から電流を発した


それを見たファルカシュは驚嘆の表情を浮かべた


「すごいな。本当に使えるようになるなんて。あとは少しずつ威力を高める訓練をすればある程度は実用できるくらいにはなるかもしれない」


「いえ、違うの」


リイナは否定した


「教えて欲しいのは威力を高めることじゃなくて、素早く出せること」


「え?どういうことなんだ?」


「だから・・・・、意識を集中したり、念じたり、そういう過程をすっ飛ばして、思った時に瞬時に出せるようになりたい」


「それは・・・・・かなり大変だぞ。俺だって魔法を使うにはある程度の溜めは必要なんだから」


「でも、溜めを短縮する方法は無くはないんでしょ?」


「まあ、それはそうだけど、少なくとも簡単にはいかないぞ。おそらくこれまでよりもさらに難しい訓練が必要になる」


「構わない」


リイナのこの執念はどこから来ているんだとファルカシュは不思議に感じていた



ある時、リイナはファルカシュに尋ねた


「ねえ、どうしてローアンはまた勇者にならないんだろう」


「あいつは、自分のせいで仲間が死んだと思っているんだ。でもさ、仲間をかばい合うのなんて普通のことだと俺は思っている。魔王との闘いで二人が死んだのは別にあいつのせいなんかじゃない」


「私の故郷が魔物に襲われた時、ローアンは本当に凄かった。今でもはっきりと覚えている。もちろん、あなたのことも覚えている」


「故郷って?」


「ハントの村」


「ああ、そうだったのか。あの村での食事は美味しかったな」


「あれ、私も少し手伝ったんだよ」


「へえ」


「またあの頃のようなローアンが見たい」


「どうだろうな。あいつは長年戦いから遠ざかった。その間に技も身体能力も衰えてしまった。年齢的な問題もある。リイナもそれはわかっているだろう?」


「それは、確かにそうなのかもしれない。でも・・・・」


リイナはそこで言葉を止めた



それからまた月日が流れたある日のこと


「ローアン、私と勝負してほしい」


リイナがローアンの元を訪れ、突然そう宣言した


「久しぶりに訪ねてきたと思ったらなんだ?」


ローアンは戸惑いながら続けた


「勝負って、やるまでもなくお前の勝ちだよ。俺がお前に勝てるわけがない」


「いえ、雷属性の魔法で勝負がしたいのよ」


「はあ?だったらお前が俺に勝てるわけがない。ファルカシュのところでいろいろ修行していたみたいだけど、そもそも雷属性の魔法が使えるようになったのか?」


「やってみればわかるよ。使うのはレベル1のライトニングのみ」


ローアンが溜息混じりに答える


「その勝負に何の意味があるんだ?」


「さっき、私が勝てるわけがないって言ったよね。だったらもし私が勝ったら、もう一度勇者になってほしい」


「・・・・・・」


「どう?約束できる?」


「それで気が済むってのなら付き合ってやるよ。その代わり俺が勝ったらもう俺に構わないでくれ」


ローアンはやれやれと言った感じで腰を上げた

それから二人は街から少し離れた平原に移動した


「言っておくが、レベル1のライトニングでも、当たれば結構痛いぞ。覚悟は出来ているのか?」


ローアンが釘を刺してくる


「いいよ。本気でかかってきて」


互いの距離は5mほど

開始の合図はリイナが投げたコイントス


リイナの指で弾かれたコインは宙に舞い、やがて地面へと落ちた


「ライトニング!」


その直撃を受けたローアンは膝を付いた

信じられないという表情のローアン

自分が魔法を出すより遥かに早かった


「どう?私の勝ちでいいよね?」


ローアンは返答できない


「私はわずかな期間の修行で、あなたよりも素早く魔法を出せるようになった。つまり、ジルバーストの溜めは努力次第で短くすることができるのよ」


「お前はそれだけのために魔法の修行をしてたっていうのか?」


「私にとってはものすごく大きな事なの。だからお願い、また勇者として立ち上がって欲しい」


「・・・・・・・」


ローアンはしばらく沈黙したが観念したようだ

そして、ジルバーストには進化する余地があることにも気づかされた


「わかったよ。約束だしな。しかし俺に何をしろっていうんだ」


「あなたはまずファルカシュのところへ行って、私がしたような訓練を受けてほしい」


「お前はどうするんだ?」


「私は、ジルバーストのもう一つの弱点、ジルバーストに耐えられる武器を探し出してみせる」

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