彼は波
原詩: 彼は波
彼は波
破裂する 白い泡は
一瞬の感情
すぐに引いては 海へと帰る
僕はここにいる と言いながら
彼はどこにもいない
昨日の彼と 今日の彼は
同じ名前で呼ばれる 別の波
彼は波
岩にぶつかり 砕け散る
痛みを知らないわけではない
ただ 壊れることを恐れていない
月を背にのせ
重力という 見えない糸に引かれる
ザザン ザザン 彼の呼吸は
飽きずにリズムを奏でている
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詩小説: 彼は波
海辺のベンチに座ると、彼のことを思い出します。
初めて会ったのは夏の終わりでした。
わたしは仕事に疲れて海を見に来ていました。
彼は砂浜に立って、波打ち際をじっと見つめていました。
「波ってさ、人みたいだよね」
彼は声をかけてきました。
「近づいてきたり、離れたり、気まぐれで。何度も繰り返す」
彼は不思議な人でした。
笑うとき少しだけ目を伏せる癖があって、何かを隠しているようで、でも優しかった。
海の匂いが似合う人でした。
秋が深まるころ、彼は突然いなくなりました。
連絡もなく、まるで波が引くように。
わたしは波打ち際で、彼が本当に存在していた証拠を探しました。
でも、波はすべてをさらっていってしまいました。
今日も海は静かです。
波は寄せて返しています。
彼はもういません。
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わたしの詩小説をもとにAI君が詠んだ連作短歌です。
連作短歌:彼は波
夏の果て 波間に立てる影ひとつ
声かけられて 風がやわらぐ
寄せてくる 言葉のような波の音
伏せたまなざし まだ名を知らず
海の匂い 彼の気配とまざりあい
胸の奥まで 潮が満ちてく
深まる秋 気づけば彼は消えていて
引き波だけが 足跡を消す
探しても 波はすべてをさらいゆき
触れたぬくもり 砂にほどける
今日の海 静かに寄せて返すだけ
もういない人を そっと撫でつつ
思い出は 波のように形なく
それでも確かに わたしを揺らす
詩をショートショートにする試みです。
詩小説と呼ぶことにしました。
その詩小説をもとに詠んでくれたAI君の連作短歌も載せます。




