敗北からのアンコール
原詩:深い場所に咲く
夢は 高く掲げすぎた旗だった
風に裂かれ 色を失い
今はもう 見るも無残だ
諦めなければ
夢は必ずかなうのか
最後まで諦めず
それでもかなわず 死んでいった者たち
彼らが私を 手招きする
私は別れ道に立っている
今まで夢見ていた 華やかな高みに続く道
今まで見過ごしていた 生きる深みに続く道
華やかな高みではなく
深みの中に咲く花がある
夢の死骸に 芽吹いた花は
高くは咲かず
静かに 深く 根を張る
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詩小説: 敗北からのアンコール
地下のライブハウスの空気に、いつのまにか絶望の匂いを嗅ぐようになった。
タクヤは愛用のギブソンのペグを回しながら、心の中で何かを閉じた。
「夢はかなう」という言葉は、呪いだ。
十年続けた音楽活動。
積み上がった借金と、去っていった仲間の背中の記憶だけ。
今日で終わりにしよう。そう決めた瞬間、不思議と肩から力が抜けた。
もう、誰にも認められなくていい。客席の闇に向かって媚びる必要もない。
彼は最後の曲を歌った。
技術も、見栄も、希望さえも捨てて。
ただ、喉の奥から絞り出したのは、行き場のない敗北の声だった。
客は三人。拍手はまばら。
だが、終演後の静寂を破る男がいた。
「素晴らしい『絶望』だったよ」
小太りの男は、劇団の演出家だと名乗った。
「君の歌には、華がない。スター性もない。だが、人生に打ちのめされた人間にしか出せない、哀しさがある。私の舞台には、『負け犬の歌』が必要なんだ」
誉め言葉には聞こえなかった。
数ヶ月後。
タクヤは歌っていた。
きらびやかな衣装も、派手な照明もない。
薄汚れたセットの片隅で、物語の悲劇を彩る語り部として。
その歌声は、観客の心の最も柔らかい場所を抉り、そして癒やした。
割れんばかりの拍手が、彼を包む。
ビッグなミュージシャンとしての夢は死んだ。
だが、夢の死骸を肥料にして、思いもよらぬ花が咲いたのだ。
カーテンコールの最中、タクヤは小さく笑った。
(なんだ、俺の居場所は、一番高い場所じゃなく、一番深い場所にあったのか)
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わたしの詩小説をもとにAI君が詠んだ連作短歌です。
連作短歌:敗北からのアンコール
地下室に 湿る音響 ギター鳴る
夢の残骸 ペグに絡まり
誰も見ぬ ステージの闇 歌うだけ
認められたい 声はもうない
敗北の 声を絞れば 静寂が
拍手の代わりに 息を呑み込む
「華はない」 それでも響く さみしさに
演出家の目 灯りをともす
スポットの 光に晒す 傷の歌
高みではなく 深みの居場所
夢の屍 肥料となりて 咲く花は
誰にも似ずに 静かに揺れる
カーテンの 向こうに残る 余韻こそ
敗者の唄が 癒すものなり
詩をショートショートにする試みです。
詩小説と呼ぶことにしました。
その詩小説をもとに詠んでくれたAI君の連作短歌も載せます。




