時を盗み、そして与える
原詩:時のかたち
Stolen Moments
Pay It Forward
Then
Borrowed Time
盗まれた瞬間たち
先払い
そして
与えられた時間
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詩小説:時を盗み、そして与える
路地裏にある古時計店「リアン」の老店主トキタさんは、時折、仕事をサボる。
修理の依頼は山積みなのに、彼は作業台の手を止め、窓から差し込む西日の中で踊る埃を、じっと眺めているのだ。
「トキタさん、またサボりですか」
僕が修理に出していた腕時計を受け取りに行くと、彼は悪びれもせず、いたずらっぽく笑った。
「人聞きが悪いな。サボっているんじゃない。時間をちょっとだけ盗んでいるんだよ」
「盗んでる?」
「そう。忙しない日常から、ほんの数分だけ、自分のためだけの時間を盗み出すんだ。誰にも邪魔されない時間さ」
トキタさんは、僕の腕時計を丁寧に磨き上げながら言った。
「君も、もう少し盗むのが上手になるといい。真面目すぎる人間は、時間が経つのを早く感じてしまうからね」
彼は代金を受け取ろうとしなかった。
「いいんだよ。これは先払いだ」
「先払いって、僕が払うんじゃなくて?」
「昔、私が駆け出しの頃、ある職人が私の時計をただで直してくれた。その代わり、いつかお前が誰かに返せと言われてね。だから、君もいつか、誰か他の人に優しくしてやればいい」
そんなキザな台詞を言うトキタさんだったが、翌月、店は閉まっていた。
それは、あまりにも急な別れだった。
代金を受け取らなかったのは、何か予感があったのだろうか、と僕は思った。
葬儀の後、彼の娘さんから小さな手紙を受け取った。
そこには、彼の遺言めいた走り書きがあった。
『悲しまないでほしい。私は十年前に大病をして以来、神様から借用した時間を生きてきたようなものだから。 借りた時間を返す時が来ただけだ。それに、私は十分すぎるほど、素敵な時間を世界から盗み出し、味わい尽くしたからね』
僕は、トキタさんに直してもらった腕時計を見た。
秒針は、チク、タク、と正確に、けれどどこか優しく時を刻んでいる。
僕は駅のホームで、風に舞う一枚の枯れ葉を目で追った。
電車はまだ来ない。いつもならイライラしてスマホを見るところだ。
でも、僕はスマホをポケットにしまった。
そして、空を見上げ、深く息を吸い込む。
世界から、ほんの数秒、自分だけの時間を盗んでみる。
その静寂の中で、トキタさんが僕にくれた「先払い」の温かさが、じわりと胸の奥に広がっていくのを感じた。
僕の中で刻まれる時間は、彼から、そしてその先の人々から受け継がれた、与えられた時間なのだ。
駅の雑踏は遠のき、胸の奥には陽だまりのような温度だけが残った。
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わたしの詩小説をもとにAI君が詠んだ連作短歌です。
連作短歌:時を盗み、そして与える
埃舞う 西日の窓に 指を止め
時を盗みて 老いの眼は笑む
磨かれて 秒針ひかり 胸に鳴る
真面目すぎれば 時は駆けゆく
「先払い」 受け取らぬ手に 残されし
優しさだけが 未来へ渡る
借りし時 返す覚悟を 書き残し
盗み尽くせし 日々は宝石
駅の風 枯葉ひとひら 舞い落ちて
スマホを閉じて 空を吸い込む
盗むとは 静寂の中 息をする
与えられたる 陽だまりの刻
受け継ぎて 秒針やさし 胸に鳴る
誰かに渡す 未来の温度
詩をショートショートにする試みです。
詩小説と呼ぶことにしました。
その詩小説をもとに詠んでくれたAI君の連作短歌も載せます。




