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五十音の別れ

原詩:あなたはいつもうそばかり


あなたは

いつも

うそばかり

ええとこの

おぼっちゃん


かなり

きざな

くらしぶり

けっこうな

こと


さんざん

しらをきって

すましがお

せいぜい

そうするがいいわ


たとえ

ちいさな

つみだとしても

てまえかってね

とんでもないわ


なやんで

にくんでも

ぬいだのだから

ねえ

のぞみどうりでしょ


はっきり

ひどいことばで

ふられたなら

へいきなかおで

ほほえんだのに


まったく

みじめね

むずかしいかおで

めんどうな

もめごと


やっぱり

いつものように

ゆめのような

えそらごと

よくいうわ


らんぼうもの

りゆうなきいかりの

るつぼ

れっきとした

ろくでなし


わかったわ

いいわ

うそね

ええ わたし

を ひとおもいに


んんん


ーーーーーーー


詩小説:五十音の別れ


彼女は、別れの手紙を五十音順で書いた。

「あ」から始めて、「ん」で終わる。

それが彼女なりの、けじめだった。


「あなたはいつもうそばかり」

彼は「ええとこのおぼっちゃん」だった。

高級車に乗り、ブランドの服を着て、口先だけは達者だった。

「かなりきざな暮らしぶりね」

「けっこうなことよ」

皮肉は、五十音の「か行」に乗って滑り出す。

「さんざんしらをきって、すましがお」

「せいぜいそうするがいいわ」

「たとえちいさな罪だとしても、てまえかってね」

「とんでもないわ」


彼女は、彼との夜を思い出す。

「なやんで、にくんでも、ぬいだのだから」

「ねえ、のぞみどおりでしょ?」


それでも、別れは来た。

「はっきりひどい言葉でふられたなら」

「へいきな顔でほほえんだのに」

「まったくみじめね」

「むずかしい顔で、めんどうなもめごと」

「やっぱりいつものように、夢のような絵空事、よく言うわ」


そして最後へと向かう行。

「らんぼうもの、理由なき怒りのるつぼ」

「れっきとした、ろくでなし」


彼女は一度、ペンを置いた。覚悟を決めると、再びペンを手に取り、

「わかったわ。いいわ。うそね。ええ、わたしをひとおもいに」

そして、最後の一文字。

「んんん」

それは、言葉にならない声だった。

怒りでも、悲しみでもない。

ただ、五十音をすべて使い切った女の、静かな終わりだった。


彼女は手紙を封筒に入れ、ポストに投げ込んだ。

その音は、まるで「ん」のように、くぐもっていた。


=====


わたしの詩小説をもとにAI君が詠んだ連作短歌です。


連作短歌:五十音の別れ


あ行の始まり

• あなたうそ ええとこの子と かざり立て

かなりきざな けっこうなこと

• あからんで いのちの声は うそばかり

ええとこぶりの おぼっちゃんよ


か行からさ行へ

• かなしみを か行にのせて 皮肉言う

けっこうなこと かなりきざな暮らし

• さんざんに しらをきりつつ すまし顔

せいぜいそうよ とんでもないわ


な行の夜

• なやみつつ にくんでぬいだ 夜のこと

ねえのぞみどおり のぞみどおり

• ぬいだ肌 にくしみよりも なやみより

ねえと囁く のぞみの夜に


は行の別れ

• はっきりと ひどい言葉に ふられたが

へいきな顔で ほほえみ返す

• まったくに みじめな夢の 絵空事

むずかしい顔 めんどうなもめごと


ら行から終わりへ

• らんぼうに 理由もなくて 怒り燃え

れっきとしたる ろくでなしよ

• わかったわ わたしをひとおもい うそと言い

んんんとだけの 声を残して

わたしとAI君とのコラボレーションです。

このショートショートのもとになった詩は、連載版「われは詩人 でなければ死人 ーAIと詩を語るー」で読めます。

ショートショートタイトル「五十音の別れ」の原詩は「あなたは いつも うそばかり」です。

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