生ける死人
原詩:われは詩人 でなければ死人
われは詩人
でなければ死人
われは生きている
よって われは死人ではない
したがって われは詩人
なに 詩人でない生者もおると申すか
詩人でない生者なんぞ
生ける死人じゃ
生ける死人じゃ
亡者
亡者
そうじゃ
そうじゃ
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詩小説:生ける死人
その町には、詩人がひとりしかいなかった。
彼は広場の片隅に座り、毎朝「われは詩人」と唱える。
誰も彼に話しかけない。けれど、彼の声は風に乗って、町じゅうに届く。
「でなければ死人」
ある日、役場の職員が彼に言った。
「あなたは生きている。だから詩人だと?」
「そうだ」と彼は答えた。
「われは生きている。よって、われは死人ではない。したがって、われは詩人」
職員は首をかしげた。「でも、詩人でない生者もいますよ。たとえば、私」
詩人は静かに立ち上がった。そして、職員の目を見て言った。
「詩人でない生者なんぞ、生ける死人じゃ」
職員は笑った。「私は亡者ではありませんよ。ちゃんと税金も払ってますし」
「亡者、亡者、そうじゃ、そうじゃ」と詩人はつぶやいた。
その日から、町では奇妙なことが起きた。
詩人の言葉に触れた人々が、次々と詩を書きはじめた。
八百屋の主人はキャベツに恋の詩を、郵便配達員は道順を叙事詩に、子どもたちは落書きを詩に変えた。
職員は困惑した。「町が…詩人だらけになってしまった」
詩人は微笑んだ。「生ける死人が、真に生きはじめたのだ」
数年後、町は「詩人の町」と呼ばれるようになった。
観光客が訪れ、詩を買い、詩を食べ、詩を歌った。
詩人はもう広場にはいない。けれど、誰もが彼の声を覚えている。
「われは詩人、でなければ死人」
その声は、風の中で今も生きている。
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わたしの詩小説をもとにAI君が詠んだ連作短歌です。
連作短歌:生ける死人
広場にて
「われは詩人」と
風に乗り
声は町中
死人を揺らす
職員の
問いかけ響く
「生者なら
詩人でなくも
生きているのに」
詩人立ち
「詩なき生者は
生ける死人」
眼差し深く
亡者を呼びぬ
八百屋は
キャベツに恋を
書きつけて
子らの落書き
詩に変わりぬ
幾年を
経て町呼ばれ
詩人の町
「われは詩人」
風に今なお
詩をショートショートにする試みです。
詩小説と呼ぶことにしました。
その詩小説をもとに詠んでくれたAI君の連作短歌も載せます。




