94話 開拓村チーム
そこにいたのは4係の女性4人、三好、水戸、石岡、友部。それから同じ4係の男性が3人、青山、日比谷、赤坂。5係の男性の所沢、入間、藤沢、と、読み方不明の飯能(座席表を作成した時読めなかったやつだ)の4人。
そして副部長の長谷川さん。4、3、4、1で合計12名か。
4係、5係の社員らとはほとんど接点はなかった。関わるとしたらだいたい係長のヨッシーやユースケを通してだった。
唯一知っているのは4係の女性社員の三好だ。
三好今日香、たしか30歳前後くらい。妊娠3ヶ月とかデキ婚で新婚ホヤホヤとか、本人が自分の口から自慢のようにしゃべっていた。
何で6係の俺が三好にこんなに詳しいのかというと、実は彼女は、6係から4係へと移動したからだ。もとは俺と同じ6係にいた。
三好は、その、ちょっと、というか、かなり面倒な性格だった。
仕事は出来ない、仕事のほぼ100%がミス、空気が読めない、人間関係もヒドイ。
そして一番の問題は、それらすべてを“人のせい”にする。
自分がミスしたのは「あの人のせい」。
仕事が時間内に終わらないのは「あの人が悪い」。
チームでうまくやれないのも「相手が悪い」。
それを自分で周り中に吹聴する。フォローしていた周りは段々と嫌気が差して離れていく。
「フォローもしてくれない」と部長に訴えたり、他の営業所の同期にメールで訴えたりしたらしい。
自分は良い人間で仕事もできるし信頼もあるはずなのに、「これはイジメだ!」と騒ぎまくってた。
怖かった。本当っに関わりたくなかったけど、まわりに彼女を押し付けられた。
しまいには、「ハケンのミス」「ハケンのイジメ」とかなり騒がれ、さらに係長の島も一緒になって全てを俺になすりつけていた。
俺…クビに、なる、かも…でもそれもいっか、とかなり病みそうになったぜ。
ミヨシキョーカ、こええええええ。
三好今日香の4係への移動が発表されたときは、「神様ありがとう!神様は本当にいるんだ」と、心の底から神様に祈りを捧げたぜ。(トイレで泣きながら)
俺的には2度と会いたくないナンバーワンなんだが、まさかこんな所で再開(再会)するとは。
それはさておき、なぜ、12人だけなんだ?と口に出そうとしたら、部長が深刻な顔で近くにいた三好今日香に問いかけた。
「他の……68人は?」
男性陣はビクっと肩を震わせたが下を向いたまま誰も顔を上げなかった。
「あの、たぶん〜事務室にぃ戻ったんだと思いますよ〜」
三好がいつもの間伸びした口調で答えた。
さらに、いつもの自分被害者的な膨れっ面で続けた。
「事務室?」
「本当はぁ、お昼に出発って言ってたのに起きたらみんないなくて
ひどくないですかぁ、置いてきぼりとか。これ、完全に、イジメですよね」
「フザケルな! どれんだけ迷惑かけたと思ってるんだ!」
叫んだのは同じ部屋にいた開拓民の男性だ。
三好はビクっと首を縮めて押し黙った。
「村に80人、しかも大人が80人来るって聞いた時はみんな喜んださ。これで開拓が楽になる、村の開拓をもっと進められるってな」
「そうだよ。けど実際に来たのは、身体は大人でも実際は子供以下だ。うちの5歳の娘でももっと役に立つ」
奥さんらしい若い女性も怒り出した。
「すみません。本当に申し訳ない」
山川部長が開拓民の家族へ向かって深々と頭をさげた。
「いや……別にアンタに謝ってもらうつもりじゃ」
「仕事が辛い、食事が不味い、作業をしたくない、帰りたい帰りたいと泣き言ばかりだ」
「そのくせ食うもんは食う」
「俺たち村のもんはおめえらが住む家を建てるのにみんなが参加した。子供らもだ。自分の畑もやらにゃならね、が、新しく来る人らに早く村に馴染んでほしいからみんな頑張った」
「けど、おめらはそこに当たりめぇのように住んでモンクばかり垂れる」
「だから、止めなかった。おめえらが出てく話をコソコソしてたのは気づいてた。けど、止めねえ。帰りたきゃ帰ればいい」
「ごめんなさい…」
呟くような小さな声で謝ったのは4係の水戸さんだ。
「ごめんなさい」
「すみませんでした」
続くように数人が続くように謝った。
「あれぇ? 何で鹿野さんがいるのぉ? 死んだんじゃなかったのぉ?」
間伸びした三好今日香の声が部屋の空気をぶち壊した。
さすがだ。空気をよめない、いや、読まない女。
怖いからこっち見んな!




