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72話 外へ稼ぎに行くしかないか

 同居が8人からいっきに13人になった。


 缶に貯めていた生活費の減りが速い。13人分の食費がハンパないのだ。


 一応、全員が仕事に出ているはずなのに何故か缶に入るお金が少ない。あいつら本当に働いているのか?



 あ、ちなみに俺ら4人(俺、ヨッシー、ユースケ、ダン)はまた4人で街中の仕事を受けている。

 神殿組5人は全然働いていなかったせいでランクはEのまま。


 この家に来たからにはギルドで依頼を受けて街中の仕事をするようにキツく言ってある。


 13人分の家事もかなり厳しく、今まではあっちゃんとアリサにお願いしていた家事が回らなくなり、ユイちゃんにもお願いする事になった。

 という事でユイちゃんの稼ぎもなくなったわけだ。


 ユイちゃんは食堂の手伝いの仕事をずっと延長で続けてくれていた。

食堂のおかみさんや従業員に気に入られて、出来るだけ長く来て欲しいと言われていたのだ。


 ユイちゃん自身も楽しく働いていたのだが、あっちゃんとアリサの大変さを見かねてしばらく家事の手伝いをすると申し出て、結局食堂を辞める事になった。



 それにしてもあの5人はちゃんと働いているのか甚だ疑問だ。

 缶のお金が減る一方なんだけど。このまま街の中の仕事をぼちぼち続けていても家賃が払えなくなるかもしれない。


 そう!来月用に取って置いたはずの銀貨5枚がとうとうくずされて銅貨になったのだ!

 とにかく食費が家賃を切迫してきている。マズイぞ。


 ギルドの依頼ではなく街の外で獣を狩って稼いだ方が良さそうだな。

 あ、もちろん俺じゃなくてイッヌ達に狩ってきてもらうつもりだ。俺は近くで葉っぱを摘む。とりあえずヨッシー達に断って、ひとりで門の外に行く事にした。



 いつものように朝早くにギルドへ来たが、依頼が貼られた掲示板には向かわずカウンターに座っていたゴルダの元に直行した。



「おはようございます、ゴルダさん。今日は街中の依頼じゃなくて外に行こうと思うんだけど、前回と同じ場所にこないだのあの葉、生えてますかね?」



 前回採取した回復薬の葉がどのくらいの頻度で育つのかわからなかったので、街を出る前にゴルダに聞いておこうと思った。


 行ってみて回復薬の葉が丸坊主のままだったら、時間が勿体無い。

 他の葉の場所とかを教えてもらった方がいいかとも考えて、まずゴルダに相談しようと思ったのだ。


 生活が安定して余裕ができたら、薬草や獣やモンスターについて情報を入手するつもりだったのだが、思いがけない人数増加で生活は不安定この上ない。

 あまり危ない橋は渡りたくないけど、当面の生活費を稼ぐにはしかたない。



「今日はひとりなのか?」



 ゴルダは俺の周りにヨッシー達がいないのに気がついたようだ。

 いつもは4人で掲示板の依頼を剥がしてあーでもないこーでもないと騒いでいたからな。



「うん、まぁ、いろいろあって今日はひとりで外に行こうかと」


「低ランクの単騎は薦められんぞ?他のパーティに混ざってはどうだ?」



 そうなんだよなー。

 ゲームのレベルがこの世界ではどの程度なのかわからないし、魔物のレベルもわからない。というか“レベル”という概念さえ、あるのかどうか。


 ゲームでも単騎で狩りに行くことはなかった。

 というのも、俺は弱っぴーのウィザードだったからな。最低でもペットの犬か召喚獣を連れてた。


 それでも狩りは短時間しか出来なかったし、ヘタすると死にかけて街に帰還するか、死んで神殿で復活……。


 ゲームでは死ぬと神殿でリセットできた。多少の経験値ロストはあったが、キャラは復活出来たのだ。


 しかしこの世界は、死んだら終わり、かどうかわからない。死んでないからな。

 でもこの世界が夢でないなら、おそらく死ねばそこでENDだろう。


 だからどんなに弱そうな敵でも油断はしない。

 この世界のことがもう少しわかるようになるまで慎重に慎重にいくつもりだ。


 しかし、PT狩り(パーティで狩りをする)だと分配も減るし、魔法や犬をどこまで見せるべきか悩むところだ。

 そもそも隠し事自体が面倒くさくて嫌いだ。すぐにボロがでるからなぁ、俺。


 むううう、どうしようか。


 単騎イッヌ付きか、知らないPT狩りか。知らないPTかあああ。

 俺、こう見えて結構人見知りなんだよな。けどまぁ、いずれはPT狩りもして行くつもりなのでとりあえずゴルダに聞いてみよう。



「他のパーティに入れてもらうには、どうすればいいんだ?」


「パーティ募集の依頼を貼るか、掲示板に貼ってあるパーティ募集を探すかだな。あとは知り合いのパーティに声をかけるのもありだ」



 ふうむ、知り合いのパーティなんて無い。

 臨時パーティ募集の依頼でも探すか。


 唸りながら依頼掲示板の方に歩いて行った。



「カオさん! お久しぶりです!」



 ランクDを入れてくれるパーティなんてあるかな?てか、パーティ自体もランクDあたりだろ?

 それって平均年齢若そうだな。ダンが10歳で今ランクDだろ?するとランクDパーティは10代前半くらいか?


 アラフォー(実際はアラフィフ)のおっさんとか入れてくれるかな?



「カオさん! 俺ら覚えてないっすか?」



 ん?


 すぐ近くに若い男の子が立っていた。後ろに女子と、もうひとり男子。


 どっかで見たような?どこだっけ?



「今日は犬連れてないんですか?」



 犬?犬連れてる時に会った?

 あ!ああ!この街に向かう途中で会った冒険者!

 えぇと、そうだ、竜の慟哭とか名乗ってた子らか。うちのイッヌが乱入しちゃったやつだ。



「あー久しぶりだな。あの時はホントごめんな、乱入しちゃって。えぇと……」



 あれ?名前聞いたっけ?あの時は慌ててたからなー。



「ヒューゴっす。あれからカオさんに会えないかって街の周辺の狩りで気にしてたんすけど、全然会えなくて」


「あはは、あの頃は登録したばかりでまだランクEだったからな。街の中の仕事ばかりだったんだよ」


「ええ? カオさん、Eなんですか?」


「いや、最近Dに上がったぞ」



 偉そうに踏ん反りかえってみた。


 依頼掲示板の近くで竜の慟哭の3人と話していたらカウンターから出たゴルダが俺達のところにやってきた。



「ちょうどいい。竜の慟哭に臨時でパーティに入れてもらえ」


「カオさん、パーティを探しているんですか?」


「うんまぁ、単騎で外に出るのはちょっとなぁ。で、臨時で入れるとこを探そうと思ってたとこ」


「え、じゃあ、うち!」


「俺らんとこに入ってくださいよ」


「ぜひ僕らのとこに」



 なるほど、竜の慟哭か。

 全く知らないPTに入るよりも知った顔の方が緊張しないし、この世界のパーティ狩りの練習にもなるからお願いしようかな。



「んじゃ、お言葉に甘えてぜひご一緒させてくれ」


「「「こちらこそ」」」



 3人から元気の良い返事が返ってきた。


 いつの間にかカウンターに戻ったゴルダに呼ばれて、パーティの手続きをした。ギルドカードにはパーティメンバーが表示されていた。



名前:カオ

ランク:D

パーティ:ヒューゴ メリー バルトロ


 自分のステータスをそっと表示させてみた。ステータスには別のパーティメンバーが表示されていた。


ナカマツアツコ

オオモリユイ

イシハラヨシノブ

オダユウスケ


 やまとのパーティメンバーだ。ステータスの表示は地球人専用パーティなのか?


 借家で一緒に暮らすようになってからパーティを常時組んだままにしてある。

 マップを開くとPTメンバーは青で表示されるので何かあった時に居場所がわかりやすいのだ。


 残念ながらダンとアリサはPTが組めなかった。

 この世界にはパーティという概念がないのだと思っていたが違った。


 ギルドで組むパーティならあるのか。

 そうそうあの押しかけやまと社員の5人とはPTは組んでない。というか、フレンド登録さえしていない。



 さて、ヒューゴにどんな依頼を受けるのか聞いてみた。



「この街の外、南西あたりに広がる草原を抜けると林があるんすけど

最近そこらでゴブリンを見たっつう話でゴブリン討伐の依頼が出てるので、それにしようかって話してたんす」


「できれば森に少し入って獣とか狩れたら狩ろうよって」


「南から西に向かい、 草原、林、森 かぁ。日帰りは無理じゃないか?」



 ステータスでマップをそっと展開して結構距離がある事に気がついた。



「はい。だから僕ら往復で7日間くらいの泊まりで依頼と狩りをするつもりです」


「7日間の泊まり?」


「はい。ギルドで依頼受けたら、7日分の野営の準備してそれから草原で狩りをしながら林へと進み、森の近くで野営しながら依頼をしようって」


「7日分の野営の準備?」


「はい。野営と狩りの準備です」



 7泊のキャンプの準備!



「金がない」



 思わず口から出た。

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