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49話 今後どうするか

 その後また俺の部屋に三人で戻った。さっきと同じ位置に座りもう少し話をする。



「明日さぁ、家を見に行かないか?」


「家ですか?何の家です?」


「観光ぉ?」


「いや、このまま宿屋でもいいんだけど、出来れば家を借りられればと思ったんだ。人目を気にして狭い部屋でしか話せないのは不便だし、宿代もバカにならないだろう? どうかな?」


「アパートですか? この世界でも賃貸アパートとかあるんですか?」


「てか、不動産屋さんあるんかな?」


「あ、その辺は今朝ギルドで確認した。借家とかの斡旋もやってるらしいぞ。出来れば、ゆくゆくは買いたいんだけど、お金がなぁ」


「そう! お金で思い出した! ずっと聞きたかったんですけど、鹿野さん、何でお金持っているんですか? 宿代とか食事代とか!」


「ゲームの時のお金ですか?」


「あー、ちゃうちゃう。死霊の森からね、この街に来る間の草原でウサギとかいくつか狩ったんだよ。で、ギルドで買い取ってもらったんだ」


「狩!うさぎ狩り! 鹿野さんすごすぎますよ!」


「うさちゃん…」



 大森さんが悲しそうな顔になった。さては大森さんはモフモフ好き女子だな。



「あ、いや、こっちのケモノって攻撃してくるからな。カワイイからって近寄ったらダメだぞ?」



 一応釘を刺しておいた。



「でもいきなり兎を狩るなんて、さすが 魔法使いだね!」


「いや、まぁ、狩ったのは犬というか……もにょ」


「?」


「?」



 サモンとか魔法とかゲームの事とか、話したい事は山ほどある。

 どこから話そうか。

 聞きたいことも山ほどあるけど、誰に聞けば明確な答えを貰えるのだろう。


 何で異世界に転移したんだ?

 何で会社ごと転移したんだ?

 何で会社のビルの22階のフロアだけ転移したんだ?

 他のフロアはどこに行ったんだ?

 そして、何でゲームのステータスが出るんだ?



 神さまが関係しているのは神殿関係者の話からわかった。でもこの異世界転移は公平じゃない。


 おそらくゲーム経験者はそのゲームの恩恵を受けている。しかも最近やっていたスマホのゲームではない。

 過去パソコンでやっていたオンラインゲームだ。


 同じフロアで働いていたやまとの社員は百人くらいいたが、あの中にPCゲームの経験者がいるとは思えない。


 ちょっと齧っただけとはいえ、中松さんがいただけでもラッキーだ。

 もしも自分だけだったら『俺TUEEEEEEE!異世界転移』と思い込むところだ。

 アブナイアブナイw


 まぁ、とにかく謎だらけなのは確かだ。戻れるのかこのままなのかわからないが、まずは日々の生活をどうにかしないといけない。

 考えなくちゃいけない事、決めなくちゃいけない事がたくさんある。

 とりあえず、目の前の事から片付けるしかない。


 目の前の事を?

 あれ?これ、職場でのいつもの俺だ。いつも山盛りの仕事に振り回されて、とりあえず目の前から片付けてたな。

 なんだ、こっちでもいつも通りか。



 中松さんと大森さんが俺をじっと見て俺の言葉を待っていた。ごめんごめん、自分の世界に入ってた。



「でだな、とりあえず借家を借りて街の中で働いたり、街の外で狩りをしたり、稼ぎながら家賃を払って、ちょっとずつでもお金を貯めようと思う。お金貯まったら、家を買って店でもやろうかって思ってるんだよ」


「店って何のお店ですか?」


「んー…………、まだ何も考えてない。この世界って日本みたいに会社とか事務とかなさそうじゃん? サラリーマンとかは無理だよね? だから生きていくために何かやらないとって思うんだ」


「そうですねー。待っていても誰も助けてくれないし、お腹は空くしー、自分で動かないとだねー。ここって中世時代のヨーロッパみたいな感じだけど、この世界で自分が出来る事ってなにかなー」


「この世界ってマモノいるんですよね……マモノってどんなんだろう…

怖いのかな…」



 ゲーム未経験の大森さんにとって、魔物やモンスターを現実的に思い浮かべるのは難しいようだ。

 いや、ゲームやってた俺だって実物大のモンスターなんか想像できん。こえーわ。


 そうだよ、ゲームの序盤で出てきた自分より巨大な蜘蛛とかアリとか、そんなんが実際に目の前に出てきたら足がすくんで逃げられるかどうかも怪しい。


 ゲーム未経験って事はラノベとかファンタジー物のネット小説なんて読んだ事もないんだろうなぁ。

 あ、でも、パリーホッターとかの映画くらいは見た事あるかな?



「街の外に出たらマモノもだけど獣にも襲われるのかな」


「あ、女騎士さんと馬車で移動してた時にイノシシ襲ってきたよ! しかもかなりデカイやつ! 騎士の人たちがあっという間に倒していたけど、あれ結構ある事なのかなー」


「まあ、イノシシくらいなら日本の地方の田舎でも普通に出たけどな」


「え? 自分にイノシシ倒せると思えない。普通に怖い」


「いや、日本でも普通の人はイノシシ倒せないからね」



あ……、ふたりが暗くなってしまった。



「だからさ、一緒に暮らさないか? とりあえず借家だけど、お金貯めながら店の計画もたてよう。中松さんは出産あるし家で家事とかやってもらって。俺と大森さんはギルドで仕事もらって危なくなさそうな依頼を受けてお金稼ぐとか、どおだ?」


「はい! いいですね!」



 大森さんはすぐにのってきた。

 中松さんは妊婦の自分が足手まといになると思ったようで返事を迷っているようだった。



「まあ、先のことはどうなるかわからないし、まだこの世界の事もよくわからない。他に飛ばされた人がこの国や他の国にもいそうだろ?まずは自分の生活を安定させて、それから家族を捜すのもありだよ」



 中松さんも大森さんも家族という言葉に反応した。ふたりともまだ20代だし不安だよな。

 中松さんはお腹の赤ちゃんのパパさんがどうなったのか、どこにいるのかわからない状態だし、すごく不安だろうな。


 俺は実家を出て20年たつし、もとから実家でも家族と縁は薄かった。


 うちは長男大事という田舎だったし、両親も両祖父母も兄大事、兄大好きで、俺は物心ついた頃からひとりでいる事が多かった。


 家族に甘えた経験もないし、甘えさせてもらえなかったし。子供の頃は兄の予備としてだけの存在、学校に上がってからはこき使われる存在。家を出てから20年、一度も帰っていない。


 だから、異世界に転移しちゃってもこっちで生活できるなら、あっちに戻らなくてもいいかなぁなんて思ってるのだ。


 でも、ふたりは戻りたいよね、あっちの世界に。日本に。日本の家族の元に。



「とにかく助けあってがんばろう?」



 あっちの家族を思い出したのか、ふたりがぐすぐすと泣きだした。

 ふたりを部屋に送り、ふたりの部屋のライトをホテルライトにチェンジして、俺も部屋に戻って寝た。(いや、だからゲームにはホテルライトなんて魔法は無かったからね)

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